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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百二十四 SANA編 「だからこそ動けない」

四月二十一日。木曜日。晴れのち雨。




昨日、一真かずまくんと琴美ことみちゃんは、結局、五時過ぎまでうちにいた。だけど、


「晩ゴハン、作らないといけないから……」


一真くんがそう言って、琴美ちゃんを連れて帰っていった。


「なんだよ。私の料理食べてけよ」


千早ちはやちゃんは言ったけど、


「あいつらの分も作らなきゃだから……」


目を逸らしながらも険しい表情で応えたそうだ。


『あいつら』


両親のことをそう呼ばずにいられないことに胸が痛む。


そして今日も一真くんと琴美ちゃんはうちに来て、


「昨日、ケーキ作ったんだ。食べる?」


千早ちゃんに聞かれて、


「うん……!」


少し興奮気味に応えてた。そして二人とも、すごく美味しそうに食べて……


「ケーキ…。初めて食べた……。美味しい……」


琴美ちゃんがそんなことを口にして……。小学校二年生の子が『ケーキを初めて食べた』って……。


これが、アレルギーがあるからとかなら当然だと思う。『家庭の方針』だったらまだ分からないでもない。でも、この子たちの場合はそうじゃないんだ。両親がまともに仕事もしないで、しかも、自分たちの遊びにはお金を使って、なのに二人に対してはほとんど使わないで。


ということらしい。


だから僕は、児童相談所に電話してみた。塚崎つかざきさんにちょっと相談してみようと思って。そうしたら、


「今から伺います!」


塚崎さんはそう言って、三十分ほどで本当に来た。


「一真くん!。琴美ちゃん!」


二人を見るなり塚崎さんが声を上げて。


「ああ……、よかった。山下さんのところでお世話になれてたんですね……!」


その様子に、児童相談所がもうすでに動いてることが確認できた。なのに、


「ご両親とは一切、面会できていないんです。一真くんや琴美ちゃんにも会わせていただけなくて。けれどまさか沙奈子さんとお友達になれていたとは、本当に良かったと思います。私どもとしましても三年前から対応はさせていただいていたんですが、今も申し上げました通りご両親が面会を拒んでいらっしゃって……」


辛そうに語る塚崎さんの様子に、難しい案件なんだなって実感させられてしまった。


ただ、表向きは『経済的に困窮してる』というだけで、明確な虐待の証拠がないから強い対応ができなくて。『経済的に困窮してる』というのも、本当に最低限にしか仕事をしてなくて、それでお金がないというだけじゃ、そのこと自体は何か法に触れてるわけじゃない。食事だって最低限はとれてる。


だからこそ動けない。


どうしたらいいんだろうな……。



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