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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百二十三 SANA編 「お菓子を買えない」

四月二十日。水曜日。晴れ。




「こんにちは……」


沙奈子が学校から帰ってきて、そして三階に上がって、ビデオ通話の画面越しにそう頭を下げたのは、千早ちゃんより背の高そうな、なんだか一学年くらい上なんじゃないのかな?って印象のある男の子だった。その男の子は、


釈埴しゃくじき一真かずまです」


改めて丁寧に頭を下げながら名乗ってくれた。その彼の様子を見て、確かに沙奈子や結人ゆうとくんに通じるものがあるのを感じた。しかも、その一真くんだけじゃなくて、


「……」


声には出さなかったけど彼の隣で頭を下げてくれたのは、小学二年生の女の子で、


琴美ことみ……です」


一真くんが代わりに紹介してくれる。その琴美ちゃんという女の子の目が、僕の部屋に来たばかりの頃の沙奈子そっくりで、胸が痛くなる気がした。余計な説明は要らないと感じたな。それに、いきなり大人が突っ込んだことを聞くのは『尋問』みたいになりそうな気がしたから、敢えて今日のところは何も聞かない。一応、


「家に一人にしとくわけにはいかないですから……」


そう説明されたし、それで十分だった。


「寛いでくれたらいいからね」


僕はそう言ったけど、さすがにいきなり寛ぐのは無理だろうな。すると、


「ま、今日のところは一緒に課題やろうぜ!」


千早ちはやちゃんがもうすっかり親しそうに話し掛けてた。しかも琴美ちゃんに対しても、


「琴美ちゃんも、一緒に宿題やろ?」


同学年の一真くんに対してのとはうって変わってすごく柔らかい感じで声をかけて。


「うん……」


「……」


一真くんも琴美ちゃんも、戸惑った様子ながらも頷いて、みんなで課題を始めることに。そこに絵里奈がミネラルウォーターとコップと、それとスナック菓子を持って三階に上がって差し入れてくれた。


そうしたら、琴美ちゃんがすごくスナック菓子をチラチラ見てて。


「好きに食べていいよ」


先にアレルギーとかないかどうか聞いたし、だからもう遠慮なく食べてもらったらいいと思った。さらに、沙奈子や千早ちゃんも、


「どうぞ……」


「食べて大丈夫だよ。そのためのお菓子だからさ」


と促してくれて、スナック菓子の袋を開けてくれて、それでようやく琴美ちゃんも、手を伸ばして口へと運んでくれた。そして食べ始めると、次から次へと手を伸ばして。


「美味しい……?」


沙奈子が尋ねると、


「うん……」


ようやく声を出してくれて。そんな琴美ちゃんに、一真くんが、


「すいません……、妹が……」


申し訳なさそうに体を小さくしながら頭を下げて。それに対して千早ちゃんが、


「お菓子、あんまり食べられないのかな?」


聞いたら、


「うん……」


一真くんが頷いて。


そういうのはそれぞれの家庭のやり方もあるだろうけど、一真くんの様子を見る限りだと、『家庭の方針』というよりは、単純に、


『お菓子を買えない』


という方のような気がしてしまった。


ああ……、本当に……。



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