二千百十七 SANA編 「ちゃんと相談する」
四月十四日。木曜日。曇り。
沙奈子のクラスは、一年四組。大希くんと一緒。だけど千早ちゃんは一年七組、結人くんは一年六組と、残念ながら別々になってしまった。それでも、大希くんが一緒なだけでもまだ安心かな。
しかも、今のところ、無駄に絡んでくるような感じの子はいないそうだし。ただ、大希くんに対しては、また、
「可愛い~♡」
とか言ってる女子生徒がいるんだって。彼としては正直なところ『可愛い』と言われることに対して辟易してる部分もありつつ、ただの挨拶みたいに思うようにしてるらしい。
これもそうだね。『自分の思い通りにならない』ということの一例だと思う。だから、いちいち気にしないようにと心掛けてるって。そうしてスルーできる部分はスルーしてもらって、どうしてもスルー出来ない部分については正直に相談してもらって、その上で具体的な解決策を図らなくちゃと思う。
そうなんだ。子供は決して『人間関係の問題に対処する専門家』なんかじゃない。大人でさえ難しいそれを子供に丸投げして上手くいくと考える方がどうかしてる。
『子供は子供同士、失敗しながら学んでいくんだ!』
とか言う人もいるかもだけど、その『失敗』が取り返しのつかないものだったから『イジメ』とかいう事態に至ってしまったんだよね?。『イジメ』なんていう段階にまで来てしまったらもう子供だけで解決できるはずがないじゃないか。解決できなかったからそこまで拗れたんじゃないの?。解決できなくて『イジメ』という事態に至るまで拗れたのにそこからどうやって解決できるって言うの?。
『子供は子供同士、失敗しながら学んでいくんだ!』なんて詭弁、面倒臭いからって関わりたくないと考えてる大人の甘えを正当化するために便利に使うのはやめた方がいいと思う。
僕はそんな詭弁で自分の責任から逃げようとは思わない。
『沙奈子を受け入れることを決めたのは僕自身だ』っていう責任からね。僕には沙奈子の気持ちを受け止める責任と義務があるんだ。
ただ、『今のところは大丈夫そうだな』というだけで。
「なにかつらいことがあったら無理せずに相談してほしい。大事なのは、報告、連絡、相談だよ。これは仕事だけじゃない。学校とかでもそうだから」
僕が言うと、沙奈子も、
「うん。分かってる。ちゃんと相談する」
と言ってくれてる。そう言ってもらえるのが嬉しい。少なくとも信頼されてなかったら言えないことだと思うし。
『お父さんやお母さんに迷惑が掛かるから』
そんなことは考えなくていい。本来、子供は親に迷惑を掛けるもののはずなんだ。親に迷惑を掛けつついろんなことを学んでいくはずなんだ。




