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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2112/2601

二千百十二 SANA編 「えあい!!」

四月九日。土曜日。晴れ。




入学式を終えて、晴れて高校生になった沙奈子たちは、さっそくまた、水族館に行った。だけど、高校では、第一、第三、第五土曜日には、半日だけとはいえ授業があるから、今までどおりには行けないかもしれない。ああでも、半日だけってことなら、午後から行くことだってできるのか。


その辺りは、沙奈子たち自身で判断してくれたらいい。もう自分で判断できるだろうから。


だけど今日はとにかく玲那と一緒に出掛けていた。


そして僕は、膝に座った玲緒奈れおなを見つめながら、昨日のことを思い出す。


入学式から僕と絵里奈が帰ってくると、玲緒奈れおなはやっぱり走って抱き付いてきてくれた。


「ぶるるるるるる!」


って唇を震わせながら。その辺りは彼女の不満の表れだとしても、そうやって気持ちを素直に表してくれたらいい。


『不満とかぶつけられるとムカつくから』


とは言わない。僕の方がまず、


『自分にとって都合の悪い時にどう対処すればいいのかっていう手本を示す』


必要があるから。僕のそんな姿を見てもらって、いずれ玲緒奈には、『ムカつくことがあった時の振る舞い方』として真似してもらう必要があるから。


何度も言うけど、生きてる限りは自分の思い通りにならないことなんて毎日のようにある。その度にいちいち苛ついて誰かに八つ当たりするなんてことをしたいとは僕は思わないし、玲緒奈にもそんなことをしてほしいとは思わない。できればスルーしてもらえたらいい。だけどどうしても収まらない時には、他所様じゃなくて僕に八つ当たりしてほしい。玲緒奈を勝手にこの世に送り出した僕に。


僕が玲緒奈を勝手にこの世に送り出したことで、玲緒奈に八つ当たりされる人を出したくないんだよ。そんなの、おかしいと思う。


「玲緒奈。愛してる」


玲緒奈を抱き締めて、そう口にする。


それから玲緒奈の相手をする。彼女は僕の腕を掴んだ状態で、ぶんぶんと手を振り始めた。何の意味がある行動なのかは分からなくても、僕はされるがままになる。『僕で遊びたい』ならそれに付き合うよ。


そうして一通り僕で遊んだら落ち着いたのか、玲緒奈はホワイトボードの前に座ってホワイトボードをバンバンと叩いて、


「パパ!。トラ!。しょーびゃーしゃ!。クジラ!」


口にする。僕にマグネットシートの絵を完成させろと言ってるんだろうな。だからもちろん、トラと消防車とクジラの絵を完成させる。すると彼女は、ふんぞり返って手を挙げて、


「パパ!。えあい!!」


って。


……あれ?。もしかして今、『偉い』って言った……?。


僕がそう思うと、スーツを脱いでいた絵里奈が、


「今、『パパ偉い!』って言いましたよね?」


と聞いてきたんだ。



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