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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2110/2601

二千百十 SANA編 「不愛想な接客でも」

四月七日。木曜日。晴れ。




今日は、いよいよ高校が始まる前の最後の『人生部』の活動。大希ひろきくんも合流して、一階の厨房は大混雑だ。


なので、結人ゆうとくんもホールスタッフに回ることになった。


「ご注文は……?」


普通の飲食店だったらクレームが入りそうな不愛想な接客でも、以前の彼を知ってる僕たちからすれば、すごく頑張ってるのは分かる。


でも、現実問題として今の彼はまだ、接客の仕事は任せられそうにないかな。本人が頑張ってるかどうかはお客には関係ないから。でも、だからこそ『人生部』の中で経験しておくってことだね。ちゃんとみんな分かってくれてる中で、上手くできてるかどうかを確かめられるし。


「結人お!。もっと笑顔で!。そんなんじゃお客さん逃げちゃうよ!」


千早ちはやちゃんの叱責が飛んで、


「うっせ!。だったら俺にやらせんな!」


なんて言い返せるのもこれが人生部の活動だからだし。実際のアルバイトとかでそんな態度じゃ、いろいろマズいよね。お客だけじゃなく、他の従業員からも白い目で見られるかも。


だけど結人くん自身もそれじゃよくないというのは分かってると思う。言い返した後、バツが悪そうにしてるし。そうやって自分でも『これはよくない』と自覚してくれてるのならすごくいいことだと思えるよ。


だけど、人間には向き不向きがあるのは事実だから、結人くんにホールスタッフが務まらなくてもそれはいいんだ。これはホントの仕事じゃない。『疑似的に仕事を体験してる』だけで。


それに、『向いてない』という話だったら沙奈子だって同じだしね。沙奈子も接客仕事には向いていないけど、ここでなら本当に向いてないのかどうかを試すことができる。だからこそ、


「イチコさんやフミさんだからちゃんと話ができるんだ……。他の人が相手だと、こうはいかない……」


沙奈子は改めてそう言ったりもする。しかもイチコさんと田上たのうえさんも、


「沙奈子ちゃんだから気にならないけど、普通のお店のホールスタッフがこの感じだったら、正直、印象はよくないかな」


「右に同じ。あまり行きたいなとは思えない」


と、はっきり言ってくれる。


「ごめんなさい……」


沙奈子が謝ると、


「いいのいいの!」


「そうだよ。できることとかできないこととかを確かめるのも『人生部』の活動なんだしね」


とも言ってくれるんだ。


沙奈子は確かに接客仕事は苦手だけど、ドールのドレスを作る才能は飛び抜けてると思う。それを改めて確認するのと同時に、苦手なことについてもちょっとずつでも慣れることができれば、何かの時に役に立つかもしれないし。



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