二千百九 SANA編 「山下家のやり方」
四月六日。水曜日。晴れ。
僕は、『育児』にまつわることについては、今まさに自分が当事者だから自分自身の経験からいろいろ語ることもするけど、『新型コロナウイルス感染症』や『政治』や『世界情勢』については、それを語れるほどの情報を得ることも情報の裏付けを取ることもできないから、迂闊なことはなるべく語らないようにしてる。
それよりも、『自分自身が人間としてどう生きるか?』ってことを考えてたら十分だって思える。そうすれば、誰かを蔑むことも貶めることもしないで済むからね。
僕は、『行為』については批判もしても、『どこかの誰か個人』を批判したいわけじゃないんだ。『男性育休』の件についても、実際にそれを取得できるかどうかはそれぞれ事情もあるだろうし、『育児休業を取るから子供のことを考えてる』とも、『育児休業を取らないから子供のことを考えてない』とも別に言うつもりはないんだよ。あくまで、
『育児は母親の役目だから父親は育休なんて取る必要はない』
とか、
『君は僕の仕事を手伝ってくれないだろ?。なのに僕だけ手伝うなんて不公平だ』
とか、さもそれが常識だったり一般論だったりということにして、
『だから自分には責任はない』
みたいな考え方をしてるのが情けないなと感じるだけでね。
『自分が育児休業を取らないのは、他の誰かがどう考えてるかどう判断したかは関係なく自分が置かれてる状況を自分で判断したから』
と、『自分自身の責任に基づいて』って毅然としてればいいのに、言い訳がましく他の誰かが言ってたようなことを理由にしてるというのは、自分自身の判断に責任を負ってないとしか思えないんだ。
僕が育児休業を取ったのも、
『育児休業を取るように言われてるから』
じゃなくて、
『育児休業を取って玲緒奈の成長に直に触れるべきだ』
『僕が玲緒奈に来てもらったのにそれを絵里奈だけに丸投げするなんておかしい』
と思ったからなんだよ。他の誰かは関係ない。
そして僕は自分の判断を後悔してない。結果として、ミルクやりもおむつ替えもお風呂に入れるのも夜泣きの対処も離乳食を食べさせるのも僕の役目にはなったけど、僕はそれを『不公平だ』なんて思わない。僕が勝手にこの世に送り出した玲緒奈に認めてもらえたんだって思っただけだしね。
僕が玲緒奈の相手をしてる間に、絵里奈は家のことができてたし。
これが『山下家のやり方』なんだよ。他所は関係ない。




