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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2103/2601

二千百三 SANA編 「僕にもいたんだな」

三月三十一日。木曜日。雨。




月曜日以降、大希ひろきくんが以前と変わらずにうちにきて、『人生部』の活動に参加してる。しばらく離れてたことでいろいろと気まずかったりするかもしれないとも思ったけど、沙奈子はもちろん、千早ちはやちゃんも結人ゆうとくんも、月曜日の時点から以前と変わらずに接してくれてた。


たぶん、本当の友達ってこういうものなんだろうな。しばらく顔を合わせなくても、久しぶりに顔を合わせたらそれこそ昨日も会ってたみたいに普通にできるんだと思う。


……あれ?。そう思えば、鷲崎わしざきさんと偶然再会した時、僕はまったく意識してなかった。ごく普通に話せてた。もしかして鷲崎さんは僕にとっての『友達』だったのかも……?。


大学時代には少し困ってたりもしたけど、それは彼女の距離感に戸惑ってただけで、本当に嫌だったわけじゃないのが今なら分かる。本当に嫌だったら、たぶん、口もきいてなかっただろうし。


ああそうか……。僕にもいたんだな。友達……。


人間関係って本当に不思議だな。その時は何とも思ってなかったのが後から振り返ってみるととても重要なものだったり。


それは親子関係でもそうなのかもしれない。鷲崎さんとのことは僕にとってはとても大切な転換点になった一方、両親との関係は、当時はただただ苦痛だった。それなのに、今ではある意味では僕の生き方の指標になってるんだし。


『こんな風になっちゃいけない』


っていう、悪い意味での指標だけど。だからと言ってそれに『感謝する』とか『恩を感じる』というのはない。まったくない。あくまで、


『よくない経験でも考え方一つで役に立つこともある』


というだけの話だから。確かに『親の所為』にしてるだけじゃ何も解決しないのは事実だと僕も思う。あの人たちがああだったのなら僕はそれとは違う生き方をしなきゃって強く思わされる。だけどそれも、鷲崎さんをはじめとした出逢いがあればこそなんだ。それがなきゃ僕はただ反発するだけでどう活かせばいいのかまでは思い付かなかった気がして仕方ない。


沙奈子や玲緒奈れおなの様子を見ていればすごく分かる。沙奈子も玲緒奈も、あの家にいた頃の僕とはまったく違ってる。もちろん赤ん坊の頃の自分を覚えてるわけじゃないけど、赤ん坊の頃の僕の写真を見てるだけでも玲緒奈と全く違うんだ。表情が。とても感情豊かで自分の気持ちを素直に表に出していろんな表情を見せる玲緒奈と違って、兄の写真のついでで写ってる僕は、人形のように無表情なんだ。そして僕が一人で写ってる写真は一枚としてなかった。あくまで兄の写真に僕も写り込んでるだけなんだよ。


そんな写真ももう、ほとんど手元にないけどね。両親が亡くなった時にすべて処分したつもりだったんだ。僕には必要のないものだから。それがたまたま他の書類とかに紛れ込んでて残ってたのと、小学校中学校高校それぞれのアルバムを残してるだけで。



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