二千九十一 役童編 「いざ過失責任を」
三月十九日。土曜日。雨。
今日も雨だったから、沙奈子たちは水族館へ行くのはやめて、うちで人生部としての活動を行ってた。昼食を作って、夕食を作って。
そのための材料の買い出しも、自分たちでやってる。『食材の仕入れ』としてね。
この雨の中、水族館まで行くのは危ないから中止しても、スーパーに買い物に行く程度なら、自転車用のレインポンチョを着込んで、三人で向かう。決して『傘さし運転』はしない。それは、『法律でそう決まっているから』という以上に、万が一それで事故を起こせば、たとえ相手が自動車やバイクであっても、『傘さし運転をしていたことで危険回避ができなかった』と見做されれば、その分、過失を問われることになるからね。
これは、自転車の傘さし運転だけじゃない。例えば、自動車に赤ん坊を乗せて運転してて事故を起こしても、チャイルドシートを使ってなかったことで赤ん坊が亡くなって、
『赤ん坊が死亡したのはチャイルドシートを使っていなかったから』
と判断されれば、その分の過失は自分が問われることになるはずだよね?。道交法を守るのは、結局は自分自身を守るためなんだよ。『法律でそう決まってる』からじゃない。って考えたら、その分、納得もできると思うんだけどな。
なのにそれを怠っておいて、いざ過失責任を問われたら泣き言を並べるなんて、まともな大人のすること?。
だからこそ沙奈子たちにもちゃんと道交法を守って自転車に乗ってもらうことにしてる。自転車で水族館に行く時に、玲那がしっかりと実地で教えてくれてる。もちろん、僕も言うようにはしてるけど、やっぱり実際の現場で教える方が分かりやすいし。その時、道交法を守ってない人がいたらそれを『よくない例』として説明するのには利用しつつ、
「あの手の人は注意されても逆切れするだけなのがほとんどだから、注意なんかしなくていいよ。だって、みんなには何の責任もないことだから」
と言ってくれてる。そうだ。その人に大切なことを教える責任を持ってるのは、その人の親であって、赤の他人じゃない。赤の他人にそういうことを教えさせようとするのはただの怠慢だよ。
そうして雨の中、スーパーで『食材の仕入れ』を行った千早ちゃんは、早速、調理の準備を始める。
ちなみに食材の仕入れ費は星谷さんが負担してくれてる。これは、『厨房の使用料』という名目でもあるんだ。うちの厨房を借りてシミュレーションを行ってるから、その代金としてね。
実はそれも、千早ちゃんのケーキ屋経営の『経費』としてシミュレーション内で計上してたりする。




