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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千八十八 役童編 「活動が本格的に」

三月十六日。水曜日。晴れ。




卒業式も無事に終えられて、今日から沙奈子たちは春休み?。だからこそ、『人生部』の活動が本格的に始まった。


その一環として、みんなで制服をクリーニングに出しに行く。初めて。そして自分で。


「ほら、自分で生活するようになったら、当然、そういうのもできなくちゃいけないからね」


千早ちはやちゃんがそう言って決まったんだ。沙奈子も結人ゆうとくんも、


「そうだね」


「それもそうか」


と反対しなかった。こうやってちょっとずつ、自分で自分の人生を生きるために必要なことを学んでいく。ここから成人するまではまさに本格的に、『自分の人生を生きていくための準備期間』に突入するってことなんだろうな。


ちゃんとそれを自覚できてるんだよ。


沙奈子も千早ちゃんも結人くんも、子供だったからこそ虐げられてきたという意識があるみたいで、


『とにかく早く大人になりたい』


っていう気持ちを持ってるようなんだ。


世間はそれを『立派だ』と言うかもしれないけど、僕の実感としてはまったく違うかな。むしろ、


『どうしてそこまで……』


と感じてしまうんだ。


だって、山仁やまひとさんにとても愛されて育ったイチコさんは、ちゃんと自分で自分の人生を考えてる。高校に進学する時点で何もかも自分で考えて決断して手続きして、山仁さんは保護者がしなくちゃいけない手続きをしただけだったって。正直、沙奈子よりもよっぽど自分の人生について積極的に考えてたみたいだね。


そうなんだ。沙奈子も千早ちゃんも結人くんも、


『子供でいたくない』


から大人になろうとしてる節がある。子供でいることから、大人に守られなきゃいけない状態から『逃げ出したい』から大人にならなきゃって感じなんだ。そして僕がそれを察せられるのは、他でもない僕自身がそうだったから。決して前向きな意味じゃないんだよ。


千早ちゃんが言う。


「四月から十八歳で成人になれるらしいけど、それでも私達がそうなれるまではまだ三年もある。それが嫌なんですよ。だって、私が家のことを全部してるのに、私が何をするにしてもあの人の、母親の承諾が必要なんです。授業参観にも来ない、個人懇談にも来ない、入学式にも卒業式にも来ないあの人の許しがなきゃ何もできないなんて、おかしくないですか?。確かに生活費はあの人が出してましたけど、そんなの、保護者なんだから当たり前のことですよね?。てか、片親世帯だから児童扶養手当もでてたはずだから、正直、生活費なんてそこから出てるはずです。なのに、私に払われた給付金はネコババする。でも小父さんは何の義務もないのに私にお小遣いまで出してくれて、自転車まで買ってくれました。そんな他人の善意におんぶにだっこな上に感謝の言葉もない保護者って、何なんですか?」



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