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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千八十四 役童編 「そこまで気にする余裕が」

三月十二日。土曜日。晴れ。




僕はこれまで、『阪神淡路大震災』のことも『東日本大震災』のこともあまり触れてこなかったけど、それはそこまで気にする余裕がなかったからというのもある気がする。正直、目先のことだけで手一杯で。


ただ、沙奈子が大きくなって、沙奈子自身の世界が広がって、それで僕自身もこれまで以上にいろんなことを考える必要が出てきてる気がするんだ。


特に、沙奈子がこれから社会に出て行くにあたっての心構えとかね。


僕は、『自分を信じてほしい!』とか大きな声で言う人のことは信じちゃいけないと思ってる。と言うか、赤の他人を簡単に信じちゃいけないって言った方がいいかな。大事なのは自分が他の人から信用される信頼されるような人間でいるのを心掛けることであって、誰かをまったく無批判に信じることじゃないと思うんだ。もちろん、千早ちはやちゃんや結人ゆうとくんや大希ひろきくんのことも、信じられる子たちだとは思うけど、『自分にとっていつまでも都合のいい人でいてくれる』と考えるのは違うと思うんだよ。


何かの事情で、それまでとは違ってしまうことなんて、普通にあることなんじゃないかな。それは沙奈子自身もそう。僕自身だって例外じゃない。実際、玲那の事件の時に、彼女に対して『死ね』『死刑にしろ』とか言ってる人たちがたくさんいる事実に精神的な余裕がなくなっていたのも間違いなかったから。あの頃に何かさらに大きなことが起こってたら、それこそ正気を保っていられた自身がない。


僕だけじゃないな。波多野さんだって、沙奈子が通ってた小学校の生徒が乱暴されそうになったり、田上たのうえさんが痴漢に遭遇したりした時には、キレて危うく『傷害事件』になりかけたことがあったりもしたよね。波多野さん自身はすごくいい子だと思うけど、お兄さんのこともあって、特に性犯罪に関係することを目の当たりすると自制が効かなくなる一面もある。そういう形で事件に至ることだって、有り得るんじゃないかな。


そういう意味でも、『自分にとって都合のいいままではいてくれない』というのは確かにあると思うんだ。


もちろんその一方で、僕も波多野さんも、みんなから信用される信頼される自分でいようと努力はしなくちゃと思ってる。思ってるけど、やっぱり完璧ではいられないのも事実なんだ。そう思えば、それこそ赤の他人のことを頭から信用したり信頼したりっていうのは、危険だと思う。そんな点についても、僕は親として沙奈子や玲緒奈に分かっていってもらわないといけないと考えてるんだよ。


『いい人』なだけじゃ、幸せは維持できないんだって実感がある。



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