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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千六十八 役童編 「地力は確かなものに」

二月二十四日。木曜日。晴れ。




今日、沙奈子たちの入試の合格発表があった。


結果は……。


「全員合格です!」


「うおっしゃあ!!」


絵里奈がWEBで合格発表を確認。ビデオ通話越しに告げると、千早ちはやちゃんがガッツポーズを決めた。沙奈子も結人ゆうとくんも嬉しそうだ。大希ひろきくんは自宅で確認したって。


千早ちゃんはガッツポーズを決めたりしたけど、正直、よっぽど何か大きなミスでもしない限りは合格できるのは分かってたから、そんなに特別な感慨はないかな。


だけど、沙奈子が高校生になることについては、じんわりと込み上げてくるものはある。


そうなんだ。沙奈子は高校生になるんだ。彼女が僕のところにきたばかりの時には、それこそ想像さえできなかった。毎日毎日が必死で先のことなんか考えることもできなかったのに、そんな沙奈子が高校生になろうとしてる。


彼女が中学に上がった時のことも、まるで昨日のことのように思い出してしまう。まだぜんぜん体に馴染んでない制服を着た沙奈子が初々しくて。今度は制服が変わるだけだからそういう意味での感慨はやっぱりあまりないとしても、義務教育を終えられたというのは大きいのかな。ここから先はそれこそ自分の意思を持って自分で考えて自分を高めていくことを意識していかないといけなくなる。だけどもうそれについては何も心配してない。沙奈子はすでに自分の足で歩き始めてるから。


目立たなくても、他の人には理解できなくても、彼女にはしっかりとした『芯』ができてるのを感じる。誰かに強いられなくても家で勉強を続けられて、それがちゃんと身に付いてる。地道な努力を続けられる素地はできてる。ドレスだって淡々と作り続けることができてる。そして『売上』というこれ以上ない結果を出して見せてる。


沙奈子だけじゃない。千早ちゃんも結人くんも、知り合ったばかりの頃を思えば信じられないくらいに成長してるよね。特に結人くんなんて沙奈子や千早ちゃんよりも大きく出遅れてたはずなのに、ここまで追いついてみせたんだ。みんな本当にすごいよ。


だから大希くんについても、きっと心配は要らないんだと思う。時間はかかっても、ううん、むしろじっくりと時間をかけて立ち止まって堂々巡りして、自分がどうしてこの世に生まれてきて、なぜ生きられているのかをゆっくり考えるのも必要なんじゃないかな。こんな風に躓いてたってしっかり高校に受かってみせるんだから、地力は確かなものになってるんだと思う。


みんなには本当に幸せになってほしい。



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