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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千六十 役童編 「やりたいことを探す時間に」

二月十六日。水曜日。晴れ。




今日は、沙奈子たちの受験当日。山仁やまひとさんが、大希ひろきくんも合わせてみんなを引率して、歩いて高校に向かうことになってる。『SANA』の事務所を早々に開けて、そこで待ち合わせをする。


「よろしくお願いいたします。本当にありがとうございます」


沙奈子の父親として、山仁さんにご挨拶をと思ってマスクを着けて事務所に下り、大希くんを連れた山仁さんに深々と頭を下げる。


「いえ、こちらこそ、いつも大希がお世話になっています。おかげで今日という日を迎えることができました。感謝いたします」


逆にすごく丁寧に挨拶されて、恐縮してしまう。こういうことをしっかりと『手本』として見せて、その真似をすればいいだけにしなくちゃって改めて思う。


だけどここで僕と山仁さんがお互いにただの上辺だけのやり取りをしてるだけだったら聡い千早ちはやちゃんや結人ゆうとくんには敏感に見抜かれてしまうだろうな。沙奈子も含めてだけど、大人のそういう狡い部分には散々な目に遭わされてきた子たちだから。


一方、大希くんは、マスク越しでも分かるくらいに少しバツが悪そうに、


「おはようございます」


と挨拶してくれた。沙奈子とも、


「おはよう」


「おはよう」


って、ちょっとぎこちない感じの挨拶を。


だけどそれでいい。まったく平然としてるというのもちょっと変だと思うしね。そこに、


「おはようございます!」


「おはよう……」


マスクを着けた千早ちゃんと結人ゆうとくんがやってきた。以前なら大希くんの家に寄ってからって形だったけど、今はまず結人くんの家に行ってからうちにくる形になってて。


「ヒロ!。どっちがいい点とれるか勝負だ!」


千早ちゃんが、やっぱりマスク越しでも分かるくらいに「ニシシ♡」と笑いながら言う。それに対して大希くんも、


「うん……!」


戸惑った様子ながらも応えてくれる。だから本格的に関係が拗れてるわけじゃないという印象があった。本格的に拗れる前に距離を置いたことが功を奏してるのかもしれない。本格的に拗れてからじゃ、お互いに引くに引けなかったりするだろうからね。


完全に元に戻るには、ううん、完全には元に戻らないとしても、それなりに折り合いを付けられるようになるにはまだ時間がかかりそうな印象もありつつ、それはそれで焦らず対処していくしかないと思う。


それに、高校に合格すれば、目標とか目的とかやりたいこととかを見付けるまでの猶予もまたできるしね。早くケーキ屋を始めたい千早ちゃんにとっては逆にじれったい三年間だとしても、大希くんにとっては目標とか目的とかやりたいことを探す時間になるだろうから。


こうして、僕が二階に戻って玲緒奈れおなの相手をして、代わりに絵里奈が事務所に下りてきて、改めて挨拶をして、みんなを見送ってくれたんだ。



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