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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五十九 役童編 「蓄えが十分にあるから」

二月十五日。火曜日。曇り。




明日はいよいよ、入試本番。昨日も模試を行って、全員A判定。星谷ひかりたにさんが、


「みなさん、気楽にいきましょう。もし駄目でもそれぞれできることはあります。就職してもいい、三年間、自宅学習をして『高卒認定』を取り、大学に行くという方法もあります。入試が駄目ならそこで人生が終わるわけじゃありません。入試は単なる人生の中のイベントの一つでしかありません。どうとでも取り返しはつくんです。皆さんにはもう十分な力があります」


ビデオ通話でそう訓示してくれた。


「うん!。分かってる!」


千早ちはやちゃん。


「はい……!」


と沙奈子。


「ああ…、そうだな……」


結人ゆうとくん。そして、


「うん……!」


と、大希ひろきくん。そんな大希くんに対しては、星谷さんの表情が崩れてしまう。けれど彼女はそこでぐっとこらえて、


「では、明日は一日、ゆっくりと休んで、体調を整えてください」


そう告げて、仕事に戻った。本当はいろいろ言いたいこともあるんだろうけど、それは試験が終わってからということだね。今の彼女だと、余計なことを言おうとしたらきっと感情が抑えられなくなるだろうから。


それに大希くんの様子も、ビデオ通話で見てる限りでは問題なさそうな気がする。


というわけで今日は、ただ寛ぐだけ…。のはずだったんだけど、もう完全に習慣になってるから、いつもの自宅学習だけはやってそれから、沙奈子はドレス作り、千早ちゃんはゲーム、結人くんは人形用の家具作り、って感じでやっぱりいつも通りに過ごす。


『いつも通り』というのが大事なんだろうな。大希くんも、自宅学習の後はゲームをしてるらしい。


ただ、みんなと一緒じゃないからあまり気乗りしないらしいけど。そのせいで実はここのところ、自宅学習はサボりがちみたいだともイチコさんが言ってた。


そうか。さすがの大希くんも、一人だけじゃ気分が乗らないんだろうな。みんなと一緒だからこそ、モチベーションも保てるんだ。


とは言っても、模試ではA判定を毎回出すくらいだから、入試に備えての勉強そのものは十分に間に合ってる。あくまでずっと先まで予習してるってだけだから、そのペースが落ちたところで何も問題ないと思う。


だよね。今までの『蓄え』が十分にあるから、躓いたくらいならなんにも焦る必要はないんだ。


正直、僕が高校を受けた時や大学を受けた時とは違い過ぎて、不思議な感じさえする。『環境』が違うことでここまで違ってしまうんだって実感が強くて。誰も応援もしてくれなかった僕のあの時期は、一体、何だったんだろうな。



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