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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千四十七 役童編 「親としての責任の取り方」

二月三日。木曜日。晴れ。




『甘えさせる』ことと『甘やかす』ことの違いを、今の僕じゃ上手く言葉にできないと思う。でも敢えて、挑戦してみる。


『甘えさせる』のは、相手の気持ちを受け止めること。相手の気持ちをそのまま受け止めて、発散させること。


『甘やかす』のは、一見しただけなら似てるように見えても、ただ都合のいいように利益供与することで相手の気持ちや考えを誘導しようとすること。


そう。『甘やかす』のは、実は相手の気持ち受け止めてるんじゃなくて、逆に自分の気持ちや都合を押し付けようとしてるだけなんだと思ってる。


大希くんにとっての利益。ゲームとか何か、それこそ、彼がもし望むなら、星谷ひかりたにさんは自分の体さえ惜しまず提供するだろうな。だけど、今はそれじゃ駄目なんだと思う。そうやって大希くんのことを気遣ってる気になって星谷さん自身が駄目になっていく気しかしないんだ。


玲那が言う。


「今のピカは、『ダメ男製造機』なんだろうな。本人がだいたいなんでもできるから、何でも自分が代わりにやって、ヒロ坊の望むものは何でも提供して、ただ自分の支配下に置いてしまうんだと思う。典型的な『共依存』を作ってしまうだけなのかも。その点、山仁やまひとさんは、とにかくヒロ坊の正直な気持ちと向き合おうとしてくれてるんだろうな。だからヒロ坊も、力比べを挑んだりってしてるんだと思うんだ。自分の中のもやもやを、そうやって、自分を勝手にこの世に送り出して今回のことの原因を作った山仁さんにぶつけてるんじゃないかなって気がする」


「そうかもね……」


玲那の言ってることがどこまで正しいかなんて、僕たちには分からない。大希くんの本心は大希くんにしか分からないし、山仁さんの思ってることは山仁さんにしか分からない。僕たちにできるのは、ただ想像するってのだけだ。


だけどもし、僕が沙奈子や玲緒奈れおなが今回の大希くんと同じような状況になってしまった時には、『甘やかす』んじゃなくて『甘えさせる』ことで、自分自身と向き合う心の余裕を作ってあげたいと思うんだ。それを山仁さんは実践してるんだって感じる。


自分のやりたいこととか目的とか目標が、中学生の今の時点で見付けられていないのは、別に悪いことでも何でもないはずなんだ。そんなのは些細なことだと、自分で自分を責めなきゃいけないようなことじゃないんだと、大希くん自身が思えるようになるまで、彼の葛藤に付き合ってくれてるんだろうな。


それが、山仁さんなりの、『親としての責任の取り方』なんだと思う。



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