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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2040/2601

二千四十 役童編 「盲点だった」

一月二十七日。木曜日。曇り。




そして今日も、大希ひろきくんは山仁やまひとさんに付き添われて学校に向かい、沙奈子は僕たちに『いってらっしゃいのキス』をせがんだ。


一方、千早ちはやちゃんと結人ゆうとくんは、大希くんのことを気にかけながらも、特に千早ちゃんは不貞腐れた様子を見せながらも、沙奈子ほどは深刻に受け取っている様子は見られない。これは別に、二人が冷たいとか薄情だとか言うんじゃなく。単純に『受け止め方の違い』なんだと思う。そしてそれは、違ってて当然なんだ。


もちろん、慎重に様子を見なきゃいけないとも思う。特に二人は、元々攻撃的な面も持ってる子だ。強いストレスがかかると、それを他の人への攻撃性に変えてしまうことがある程度には。


確かに今じゃそういうのをほとんど見せなくなったとはいえ、それが消えてなくなったという証拠は何処にもない。何が切っ掛けになってまた表に出てくるか分からない。そういう意味でも軽く考えちゃいけないんだよ。さらにはそんな二人に対して周囲の大人が、


『こういう時にはどうやって自分のストレスと向き合えばいいか?』


ってことを実際の態度で『手本』を示さなきゃいけないと思うんだ。手本も示さずに『自分で考えろ』なんてのは、ただの『怠慢』だし『逃げ』だし『甘え』だ。最終的には本人が自分で考えなきゃいけないのは事実でも、手本さえ示さないというのは無責任だよね。


僕達はそれを忘れないように心掛ける。大希くんが今回こんなことになったのも、よくよく考えてみれば、


『恵まれた環境に育ったのに具体的な目標や目的が見付けられない場合』


についてどうすればいいのか、誰も手本を示せてなかったのが分かってしまった。


そうなんだ。大希くんのお姉さんのイチコさんは、大希くんと同じ環境で育ってきたけど早々に人生の目標と言うか『やりたいこと』が見付けられて、それに向かって具体的な努力をしてきただけだった。で、他はと言うと、


「みんな、『早く家を出たい』とか、『こんな家にはいたくない』とか、具体的な目標とは言えないかもしれないけど『こうしたい!』って強く思えるものがあったりしたね……」


「確かに……」


「言われてみればそうだ。盲点だった」


僕も絵里奈も玲那も口にしてしまうほど、誰も、


『別に強い不満もないけど将来どうしたいというのもなくて漠然とした不安を抱いている状態』


というものを経験したことがあるのがいなかったんだ。


「強い不満や渇望がある状態でどう生きるか?ってのは考えられても、そういうのがない状態で躓いたらどうすればいいのか、考えもしなかった……」



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