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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2030/2601

二千三十 役童編 「大希くんに対して何か」

一月十七日。月曜日。晴れ。




七人もの人を死なせた元死刑囚が自分の祖父だということを知った大希ひろきくんがこれからどうなっていくのかについては、僕たちは見守るしかない。


『そんなことわざわざ教える必要なかっただろ!』


って言う人もいるだろうけど、確かに他に知ってる人がいないような話なら隠し通すことだってできたかもしれないけど、ある意味じゃ、この世のほとんどの人が『敵』になるほど世間に知れ渡ってる事実をずっと隠し通すことができるかどうか、それは分からない。だって、探偵でも使って身上調査すれば分かってしまうようなことだろうからね。なにしろ、星谷ひかりたにさんはそうやって裏付けを取ったそうだし。


山仁やまひとさんのお母さんが籍を抜いたことで『役童』姓から『山仁』姓に変わって、長く世間から身を隠すようにして、それどころか、実際に一時期、母子揃って失踪するようにして暮らした時期を経ても、『七人殺しの役童』の妻と息子だった事実は消えてなくならなくて、山仁さんのお母さんは精神を病んだ挙句、病気で亡くなったそうだ。


それがもし、突然に誰かから突き付けられる形で明かされたりしたら、それこそショックはどれほどのことになるか……。何より、遺族の人たちからすれば、『憎い仇の血を引いた人間』だからね。それがのうのうと平穏に暮らしてることが許せないと感じてしまうのだって、ないとは言えない。


だからこそ、山仁さんの口から、山仁さんの庇護の下にいる今の時点で明かしてもらった方がまだショックは少ない気もするんだ。


そして今日も、大希くんは、山仁さんと一緒に学校に通ったそうだ。千早ちゃんに任せるわけにはいかないからって。


それは決して、千早ちゃんが信用できないというわけじゃない。千早ちゃんに責任を負わせるわけにはいかないっていうだけなんだと、僕にも分かる。


もちろんまだ、千早ちゃんや沙奈子や結人ゆうとくんにはまだそのことは話してない。いずれはとは思うけど、さすがに今の時期はね。あと、星谷ひかりたにさんにも、大希くんが家出未遂を図ったこともお祖父さんについて打ち明けたことも話してない。彼女は今、大きなプロジェクトに関わってて、帰ってこれていないんだ。星谷さんに大希くんの今の状況を話せば、何もかも放り出して帰ってくる可能性もある。彼女にとっては大希くんはそういう存在だから。


その意味じゃ、星谷さんもやっぱり『人間』なんだと思う。完璧じゃないんだ。


ましてや千早ちゃんに今の大希くんを受け止めてもらおうとするのは、違うと僕も感じた。だって、千早ちゃん自身がまだ子供なんだよ?。山仁さんどころか僕よりも人生経験が少なくて、しかも、何か心理学的な専門知識を持ってるわけでもない。加えて、大希くんに対して何か責任を負ってるわけでもない。そんな千早ちゃんに大希くんのケアを任せるのは、ただの無責任としか思えないんだよ。



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