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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2028/2601

二千二十八 役童編 「自分だけが頑張ってない気が」

一月十五日。土曜日。晴れ。




今日、大希ひろきくんはうちに来てない。どうしても気が向かなかったそうで、家に残ったそうだ。


「自宅では普通にしてるんですが、『沙奈子さんたちにあわせる顔がない』感じかもしれません」


大希くんが真面目だから、真面目過ぎるからこそのものだと僕は感じた。だけど同時に、家では普通にしてられるということは、まだ救いなのかもしれない。


それに、今はまだ、初期段階のような気がする。確かに家出をしようとしたのは大きいかもしれないけど、大希くんについて、小学校の時にも千早ちゃんとのことで教室からいなくなって、校庭の築山に隠れてたのを沙奈子が見付けたことがあったのを思い出した。そうだよ。彼には元々、自分の中で問題が処理しきれなくなった時には、衝動的に突発的に行動を起こす傾向があったんだ。


彼は、誰かにストレスを転嫁しない。だからこそ、誰かを攻撃するんじゃなくて、内罰的と言うか自罰的と言うか、憤りが自分に向かう性質なんだろうな。


だけどそれはあくまで、僕から見た印象でしかない。僕が見てるのは、彼の表面的な部分だけだと思うんだ。彼の内面的なことまでを見てるのは、結局は山仁やまひとさんなんだと思う。だから僕たちは、山仁さんに協力を求められた時に力を貸すしかできない気がする。そうだよ。大希くんがいなくなった時に、心当たりを探すくらいしか、できることはないと思うんだ。


大希くんがいなくなった時に、


『みんなが心配したんだぞ!!』


とか言って強く叱らなかったことを責める人もいると思うけど、そんなの、大希くんのことを知らない人の自己満足でしかないと思う。今、大希くんのことを一番許せないと思ってるのは、大希くん自身のはずなんだ。誰かに迷惑を掛けることで構ってもらおうとしてるとか、そんなんじゃないんだって気がする。だって彼は、山仁さんに十分に構ってもらえてるから。家でも、イチコさんともゲームのこととかをすごく楽しそうに話してるそうなんだ。


だけど、沙奈子たちと一緒にいると、自分だけが頑張ってない気がしてしまうみたいだね……。そして、いたたまれない気持ちになる、と……。


山仁さんはこうも言ってた。


「大希は、沙奈子さんや千早ちゃんや結人ゆうとくんのようなつらい経験をしていません。三人に比べたらとても恵まれた境遇だったとも言えるでしょう。母親を亡くしたことはつらい経験でも、それでも、ということなのだと思います。ですから私は、あのことを話そうと思うのです」



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