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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2027/2601

二千二十七 役童編 「それに応えられない自分が」

一月十四日。金曜日。雪。




『それじゃダメかもしれない……』


僕の昨日の不安が、的中してしまったらしい。大希ひろきくんは昨夜、ほとんど眠れなかったそうで、朝、とても学校に行けるような状態じゃなかったみたいで。でも、山仁やまひとさんが学校で教師たちと話した時に、


「半日でも、保健室やカウンセリング室でもいいからとにかく毎日、学校には来られるようにしましょう。でないと、学校に足が向かなくなってしまうかもしれません」


とのことで、『学校には行く』という方針を確認したそうだ。


だから今日も、朝からは行けなかったけど、昼まで山仁さんと一緒に寝て、それから山仁さんと一緒に学校に向かったって。


実は昨日も、学校で、担任と話をした時に、


「友達はみんな、頑張ってるんです……。でも僕だけ頑張れなくて、お父さんにも迷惑掛けてる気がして……。そんな自分がすごく嫌になって……」


とか言ってたって……。


水曜日に家出未遂を起こして、それでみんなに心配を掛けて迷惑を掛けてってしたことで、余計に自分を追い詰めてしまったのかも……。


「みんなが優しくしてくれるから、それに応えられない自分が余計に許せないのかもしれませんね……」


絵里奈の言葉に、僕も、


「そうかもしれないね……。大希くん、優しすぎるから……」


って……。


そうなんだ。大希くんはすごく優しい子なんだよ。何か不満があったら当たり散らせばいいのにそれができない子なんだ。


と言うか、


「お父さんに対しても周りに対しても、何か不満があるわけじゃないのか……」


そんなことを思ってしまう。そうかもしれない。『不満がない』からこそ、何も不満のない境遇にいる自分が頑張れないことが許せないのかも……。


だけど、中学三年生で何か具体的な目標とかを持ててる子の方がむしろ少ないんじゃないかな。たまたま彼の周りには、沙奈子とか千早ちはやちゃんとか結人ゆうとくんっていう形で目標や目的みたいなものを持てた子ばっかりだっただけで。なのに大希くんはいい子過ぎて、


『目標や目的を見付けられない自分はダメな人間なんだ』


みたいに思い詰めてしまったのかな。高校受験という大きなきっかけもあって、それまではあまり気にしてなかったことが突然、気になってしまった可能性もあるのか。


世間の人の中にはそういうのに対して『甘ったれるな!』と言う人もいると思う。ううん、間違いなくいる。だけどそういう人は、


『自分と自分以外の人は違うという現実』


を認めることができないという『甘え』を自覚するべきだと僕は思う。誰かに対して『甘ったれるな!』って言うならね。



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