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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2018/2601

二千十八 玲緒奈編 「おかげで冬休み中にやってたのが」

一月五日。水曜日。晴れ。




今日からまた仕事が再開する。と言っても、僕は、仕事をしてる方が落ち着くから、冬休み中もぼちぼち仕事をしてたんだけどね。


玲緒奈れおなも、もっと仕事の邪魔をしに来るかと思ったけど、意外とそうでもなかった。彼女は彼女で遊びを考えて、それを実行してるみたいだ。


今も、僕の体にもたれて盛大に拳しゃぶりをしながら何かを思案してるみたいだった。僕はそんな玲緒奈の体温と重みを感じながら淡々と仕事をこなす。


ただ、その仕事自体は、冬休み中にいくらかやっておいたといっても、会社からのメールで全部チャラにされた。


『仕様変更』だ。これで冬休み中にやってた分がまるごと無駄になった。一からやり直しだ。まあ、いいんだけど、


「あたたたた……!」


僕が言いながら頭を抱えると、向かい合って仕事していた絵里奈が、


「もしかしてまた『仕様変更』ですか?」


と聞いてくる。いつものことだから彼女にとってももうおなじみの反応なんだ。


「うん。おかげで冬休み中にやってたのがパアだよ」


「うわ~……、ホントに『お悔やみ申し上げます』ですね……」


彼女がそう労わってくれるから僕もまだ落ち着いてられる。おかげで、玲緒奈に八つ当たりとかせずに済んでる。すると玲緒奈が、


「ぶわ~、パパ。ぶぶぶぶぶ……」


まるで絵里奈の真似をするかのように言いながら、僕の体をポンポンとしてくれた。僕がこうやって落ち込んでると絵里奈や沙奈子や玲那が労わってくれてるのを傍で見てるから、


『パパがこの感じの時にはこうすればいいんだ』


っていうのを学んでくれたのかもしれない。しかもこんな風に僕の体をポンポンするのは、玲那の真似だな。きっと。


だけどそんな玲緒奈を見てると、やっぱり、赤ん坊は自分の身近な人の振る舞いを見て自分がどう振る舞ったらいいのかを学んでるんだって実感する。


何か事件とかが起こるとよく、『地域性』って言葉を使う人がいるよね?。それを使うということ自体がもう、人間は環境に影響されて振る舞いを変えるんだってことを認めてるんじゃないか。『地域によって傾向がある』って言うのなら、それはそれぞれの地域が作り出してる環境が人間に影響を与えてるっていう以外のなんだって言うのさ?。


なら僕はやっぱり、玲緒奈の『世界』のほとんどがこの『ウォール・リビング』内で完結してる今のうちに、他者を労わるというのはどういうことなのかってのを、自分達の振る舞いで示してあげなきゃと思うんだよ。



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