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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2017/2601

二千十七 玲緒奈編 「大人に理解できるようなことが」

一月四日。火曜日。曇りのち雨。




そうだ。何か特別な功績を残した人しか価値がないのなら、この世のほとんどの『親』だって無価値ってことになってしまうよね?。それなのに親は、親だというだけで自分の失敗や過ちを大目に見てもらえるらしい。


本当におかしな世の中だよ。


だけど僕は、自分の失敗や過ちを、沙奈子や玲緒奈れおなに無条件に許してもらおうとは思ってない。『親』という立場を免罪符にしようとは思わないんだ。


それはそれとして、僕が勤める会社も『SANA』も今日が冬休みの最終日。僕たちは、いつもと変わらない感じで過ごしてる。玲緒奈も、


「だぶあー!。くあげ!。くあげ!。ぶぶぶあー!」


とか、なんか歌ってるみたいに言いながら、トンネル内で寛いでる。かと思うと、突然、トンネルの中から這い出してきて立ち上がり、どどどと走って、壁に体当たりする。さらに、壁を掴んで、


「ぶあーっ!。あぶあーっ!!。どるるるるる!!」


叫びながらゆっさゆっさと揺さぶりながら、一歩ずつ横移動していく。


いやはや、まったく何の意味があるのかまったく分からない『遊び』を、玲緒奈は自分で編み出して楽しんでる。でもその次の瞬間には、床に落ちてたガラガラをつかんで振り回し、


「がっしゃ!。がっしゃ!。ばるるるぶあ!!」


魔法の呪文みたいなのを唱えてガラガラを天高く掲げ、でもやっぱり次の瞬間にはそれを思いきり壁に向かって投げつけて、


「ぼあーっ!!」


雄叫びを上げてた。その様子に、玲緒奈の頭の中では、いったい、どんな話が展開されてるんだろう?って思う。


そうなんだ。僕たちにはまったく理解できないけど、玲緒奈は間違いなく頭の中で猛烈に何かを思考してる。


「うばーっ!。パパっ!!」


とか言いながら僕に体当たりしてきたりというのも、彼女なりに何かの意図があってのことなんだろう。


「はーい。何ですか?。玲緒奈」


僕が、本当は冬休みが終わってからすればいい仕事をしながら応えると、彼女は僕の体を掴んでゆっさゆさと揺さぶりながら、


「ばーる!。ばーる!。あぶるるる!!」


また何か歌うようにリズムを取ってた。


絵里奈が使ってる『文字カード』も、二周、集中して見てられるようになった。そう、『あ』から『ん』までを、二回、おとなしく見ててくれるんだ。それだけ集中できるようになった。


発音はまだちゃんとできなくても、僕は別になにも心配していない。玲緒奈はちゃんと、見て、聞いて、考えてる。大人に理解できるようなことができなきゃ成長してないってわけじゃない。


僕はそれを実感したよ。



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