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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2013/2601

二千十三 玲緒奈編 「本気の遊び」

十二月三十一日。金曜日。雨のち雪。




昼前くらいから降り出した雨は、日が暮れた頃から雪になったみたいだ。


そんな中で、いよいよ大晦日。と言っても、僕たちは本当にそういう『イベント』には興味がないんだってつくづく感じる。絵里奈も玲那も沙奈子も、普段と何も変わらない。まったく変わらない。


『大掃除』も、特にやらない。『SANA』の事務所である一階を、イチコさんと田上たのうえさんと玲那がいつも以上に丁寧に掃除したくらいかな。表の『SANA』の看板も拭いたりして。


三階は、沙奈子たちがちゃんと掃除してくれてる。特に沙奈子が丁寧にするから、千早ちはやちゃんも大希ひろきくんも結人ゆうとくんもそれにつられて天井から壁からサッシの溝からことあるごとに綺麗にするんだ。一階の厨房も、ケーキ屋経営のシミュレーションとして、


『食品衛生上問題にならないように清掃する』


というのもやってるって。もちろんまだまだ『ごっこ遊び』レベルなんだけど、それでも普通の厨房としてはすごくきれいにしてるのが僕にも分かる。これも、『実際に仕事をする時にはここまでするんだ。っていうのを今から実感するためにやってる』っていう明確な目的があるからやれるんだろうな。本気の部活をやってる感じなんだよ。体育系の部活動をしてる生徒たちが、試合で勝つための、それどころか『プロを目指すため』の練習をやってるのと同じくらいの集中力でやってるんだって、傍で見てても思う。


残念ながら学校では、『ケーキ屋』とか『飲食店』とかについての、それこそ『設備管理』まで含めた実地の研修はしないよね。それを千早ちゃんは、うちの厨房をケーキ屋そのものに見立てて、星谷さんの指導の下、これまでやってきたんだよ。ただ単に『美味しいケーキを作る』だけじゃなくて、『見た目に売れそうなケーキを作る』だけじゃなくて、『ケーキ屋を経営する』というのがどういうことかを千早ちゃんに知ってもらうのが、目的だったんだ。僕たちは千早ちゃんのその『ケーキ屋経営のシミュレーション』のための場所を提供する代わりに、ケーキや料理をいただいてたってことかな。『施設利用料』って感じで。


正直、一階の厨房については、千早ちゃんが一番、隅々まで把握してるんじゃないかなって気もする。


玲緒奈れおなが生まれてからはそれこそそっちに集中してたから千早ちゃんたちのことはあんまり見ていられなかったけど、『新型コロナウイルス感染症』のことがあってほとんど遊びに行けなかったからこそ、


「こういう時にこそ『遊びに真剣になる』ことも必要なのだと私は考えます」


星谷さんは言ったそうだ。『ケーキ作りや料理で遊んでいた』のを、


『千早ちゃんがいつかケーキ屋をするための本気の遊び』


にするんだって。



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