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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2009/2601

二千九 玲緒奈編 「ママとパパのところに来て良かった」

十二月二十七日。月曜日。晴れ。




昨夜から降りだした雪は、朝にはそこそこ積もってた。三センチくらいかな。でも、京都市内で雪が積もることはせいぜい年に数回程度だから、これくらいでも通勤や通学にいくらかは支障もあると思う。


だけど幸い、僕は明日、会社に出向いて今後の業務についての打ち合わせに出席するだけで済むのがありがたい。この程度の雪なら、明日にはほぼ完全になくなってるだろうからね。もしまた積もってたら?。その時は慎重に出勤するしかないかな。


玲緒奈れおなは一歳二ヶ月を過ぎ、歩く姿も堂に入ってきた。


「くあえ!。ぶるる、くあげ!!。ちゃーっ!。パパっ!」


例の文字カードをいじりながら玲緒奈が声を上げる。その中で、『くあげ』と発音したのが聞き取れた。


「玲緒奈、今、くらげって言った?」


僕が問い掛けると、


「くあげ!、パパ!。くあげ!。ぶー!。どるるるる!!」


正確に『クラゲ』とは発音できてないけど、確実に成長してるのは分かって、僕も絵里奈も笑顔になる。絵里奈は明日の『仕事納め』に向けていろいろと忙しかったみたいだけど、玲緒奈の存在が気持ちを和らげてくれるそうだ。


それは僕も同じかな。


と、その時、ミニキッチンの前に置いてあったファンヒーターが、「ピー、ピー」と、予告音を発した。連続運転が二時間になると自動で止まるから、その予告なんだ。すると玲緒奈はどたどたどたとウォール・リビング内を走り抜けてミニキッチン側の壁に突進。体当たりするみたいにして飛びついて、ファンヒーターを指差し、


「どるるるるあ!、ぶー!。パパっ!。ぶるあああ!」


ファンヒーターが音を発したことを教えようとしてくれるみたいに声を上げた。


「ありがとう、玲緒奈♡」


僕は応えながら立ち上がって壁を乗り越え、運転延長ボタンを押した。それを見た玲緒奈は、


「ばー!。パパっ!。うぶあーっ!」


右手を高々と掲げて僕を見る。


『よくやった、パパ。褒めてつかわす!』


とでも言ってくれたのかな。だから僕も、


「はっ!。ありがたき幸せ!」


ポーズを取って深々と頭を下げる。そしたらまた玲緒奈が、すっごいドヤ顔で、


「ぼああ!、パパっ!」


だって。そんな姿がまた可愛くて可愛くて。壁の内側に戻った僕の脚に抱き付いてきた玲緒奈を抱き上げて、頬にキスをしたら、


「ぶーっ!」


って怒られて顔を思いっ切り押し退けられた。キスは余計だったみたいだ。


「あはは、ごめんごめん!」


僕は謝りながらも、顔が緩みっぱなしで。


本当に玲緒奈に来てもらってよかったと思う。だからこそ、玲緒奈にも、


『ママとパパのところに来て良かった』


って思ってもらわないといけないと感じるんだ。



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