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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2007/2601

二千七 玲緒奈編 「僕の印象じゃ」

十二月二十五日。土曜日。雨。




沙奈子がケーキを落とすというミスをしたように、人間は完璧にはなれない。だから、


『完璧な親になんてならなくていい』


僕もそう思う。僕自身、自分が完璧な親だなんて思ってない。世間では僕みたいなのを『陰キャ』と言うそうだ。そして『陰キャ』は、『陽キャ』の足を引っ張り邪魔をするだけの見下すべき存在なんだって。


僕の印象じゃ、研究職の人とかには、陽気で人付き合いが上手くて快活なタイプばっかりには思えないんだけどな。前の会社でも、設計書を製図する部署の社員達も陽気なタイプはむしろ少数派だったと思う。おかしいな。いわゆる『陽キャ』の人達が便利に使ってる道具の多くは、ただコツコツと画面に向かって製図してた人らがいたことで『製品』として世に出てるはずなんだけどな。


だから僕は、『陰キャ』とか『陽キャ』とかいうカテゴリで物事を判断する人の言ってることは聞き流そうと思ってる。だって、現実を見てない人の言い草だし。そんな二元論で説明できると思ってるのが理解できない。


一方で、いちいちそんな風に考えるような僕みたいなのは役に立たない人間なんだと思ってる人もいる。そういう人らからすれば僕は『完璧な親』なんかじゃまったくないよね。だから完璧なんてならなくていいと思ってる。


でも同時に、自分が完璧でなくていいのなら、子供に完璧を求めるのはおかしいと思うんだよ。子供に完璧を求めるのなら、親はそれこそ完璧じゃないとおかしいし。


親である自分については『完璧じゃなくていい』と甘えるのに、子供に対しては『甘えるな!』なんて、それが身勝手でないならなんだって言うんだろう?。


ましてや、


『子供が努力できる環境を用意したくない。という甘え』


を許してほしいと思うのなら、子供に対して『努力したら何とでもなる』なんて、恥ずかしくて言えないよ。


沙奈子たちに対しては、『努力できる環境』を用意できたと思う。完璧じゃなくても、最低限のものは用意できたと思うんだ。そしてそれは、僕や絵里奈だけの力でできたことじゃない。星谷ひかりたにさんが家庭教師代わりにすごく頑張ってくれたおかげなんだ。それがなかったら、とてもここまではいってないよ。


僕一人の努力でこれが成し遂げられたわけじゃないという事実を考えたら、やっぱり、『努力したら何とでもなる』とは言えないな。努力が活きる状況があったからこそのものだっていうのは間違いないから。


『子供を甘やかしてたらロクな人間にならない!』


そんなことを言ってる人が、本人が言ってるほど立派には見えないんだけどな。



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