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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2006/2601

二千六 玲緒奈編 「失敗と反省と気持ちの切り替えを」

十二月二十四日。金曜日。晴れのち雨。




沙奈子たちが通う学校も今日で終業式。そしてクリスマスイブ。今日の夜は、千早ちはやちゃんが作ったケーキでささやかなパーティーの予定だ。


しかも、鷲崎わしざきさんと喜緑きみどりさんのためにもケーキを作ってくれるって。


波多野さんはバイトが終わってからうちに来る予定。


昼前に沙奈子たちが帰ってきて、そのまま一階の厨房でお昼とパーティーの用意に入る。玲那たちが仕事してるから、ほとんど会話もなくそれこそ『ケーキ屋の厨房』って感じで淡々と作業をこなす。千早ちゃんにとっては、将来、ケーキ屋を経営する時のシミュレーションでもあるって。沙奈子と大希ひろきくんと結人ゆうとくんは従業員役で協力する。これ自体が、星谷さんから与えられた『ケーキ屋経営に向けての課題』なんだって。いかに従業員に対して的確な指示を出せるか、人材を使いこなせるか、という形での予行演習でもあるとのこと。


だから、真剣そのものなんだ。そしてこれもいずれ、『人生部』としての活動内容になるらしい。


大希くんと結人くんにとっては『職業体験』でもあるのかな。


そう。かつては『遊び』としてみんなで料理とかしてたのを、今では『職業体験』として活かしてるんだ。でもまだまだ『ごっこ遊び』らしいけど。


だからミスしてもペナルティはない。沙奈子も以前、八割方出来上がってたケーキをうっかり落としてしまったことがあるそうだ。だけどそれについて、


『なぜ、それまでしなかったミスをこの時になってしてしまったのか?』


というのを、星谷さん主導で検証した。そこで、沙奈子自身、慣れからくる慢心があったらしいことが浮かび上がってきた。それまではケーキを運ぶことに集中していたのが、慣れてきたのもあってついでに他のことをしようとしたみたいで。


「効率的に作業をこなそうとするのは大事なことだと思います。ですがそのために本来の作業が疎かになり今回のようなミスが生じては、文字通り本末転倒というものです。ですので、一つ一つの作業を確実に安全にこなし、それから次の作業に移ることを心掛けましょう」


星谷さんにそう言われて、沙奈子もみんなも、


「はい!」


と返事ができたと。


あくまで『ごっこ遊び』だからペナルティはなくても、きちんと『失敗を経験として活かす』ことは心掛けてる。


『ペナルティがなくちゃ反省しないだろ!』


って言う人もいるかもしれないけど、八割方出来上がってたケーキを駄目にした時のいたたまれなさそのものがペナルティになってるんじゃないかな。千早ちゃんや大希くんや結人くんのがっかりした様子も、沙奈子にとってはすごくつらかったそうだし。


しかもその日は、いつも以上に僕に甘えてたんだ。そうすることでショックから立ち直ろうとしてたんだよ。


こうして日常の中で、失敗と反省と気持ちの切り替えを学んでいったんだ。



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