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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七十六 美嘉編 「具体的な実例が目の前に」

結人ゆうとが頑張ってるのが分かってホッとしました」


僕の部屋に戻って、鷲崎わしざきさんがしみじみとそう言った。彼女にとってはそれが一番の気がかりだろうから、僕にも理解できる気がしてしまう。


沙奈子が小学校に通い始めた頃に、参観の度に感じた気もするんだ。


もちろん、ほんの何十分か見ただけで全部が分かるわけじゃないのも分かってる。ただ、普段見てる様子との違いという点でもある程度のことが分かると思う。


そして、周囲の態度からもね。


嫌われてたり疎まれてたりしたら、そういう様子って隠しきれない気がするんだ。親とかの前では隠そうとしてても、何気ない仕草とかには出てしまうんじゃないかな。僕だって、嫌ってる相手の前ではたぶん態度が違ってしまうだろうし。


ただ、そういうのに気付けるかどうかも、普段から子供の様子をちゃんと見てるかどうかってことにかかってるんだろうな。


千早ちはやも、取り敢えずは上手くやれてるようです。目立って親しそうにしてる相手がいるわけではないようですが、それでも険悪というわけでもなさそうですし。それで十分ですよね」


星谷ひかりたにさんも安心した様子で言う。


彼女の場合はそれこそ千早ちゃんとは六歳しか離れていない大学一年生なんだからそこまで責任を負う必要はないはずなのに、千早ちゃんのことをすごくよく見て考えてくれてた。彼女のそういうところを千早ちゃんは見倣ってるんだとも感じる。


僕たちはあの子たちの本当の親じゃない。だからそこまで気にする必要はないのかもしれない。でも、たとえ成り行きだったとしても最後には自分が選択したんだから、その選択に対して責任を持ちたい。


自分の人生を賭けることになる選択をしたんだからね。


それに対して無責任なことをしてたら、きっと、沙奈子たちもそれを見倣ってしまう。自分のしたことに対して責任を負えない大人になってしまう。そういう部分でフォローしてくれる誰かがいたらそうはならないかもしれなくても、誰かがそうやってフォローしてくれるのを期待するような無責任な大人ではいたくない。


以前は僕なんかが沙奈子を育てていけるのか心配だった。子供を育てるのなんてどうしたらいいのか全く分からなかった。


でも、今はぜんぜん不安はない。どうすればいいのかが分かったから。


僕に向けられた沙奈子の気持ちを受け止めた上で、あの子の前で実際に手本を見せていけばいいだけなんだ。


人を敬うっていうのはこうするんだ。


人を気遣うっていうのはこうするんだ。


人を労わるっていうのはこうするんだ。


って、僕自身が実践してみせればいいんだ。


そうすれば子供だって分かるよね。


人を敬うにはどうしたらいいのか、


人を気遣うにはどうしたらいいのか、


人を労わるにはどうしたらいいのか、


って、具体的な実例が目の前にあるんだから。



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