千七十 美嘉編 「私って可哀想でしょ?」
六月六日。木曜日。晴れ。
この世に起こることの全ては、原因があってこそ結果があると思う。結果がどんなに理不尽に見えたって、そこにはちゃんと原因があると思うんだ。
どんなに認めたくなくても、信じたくなくても、ね。
『認めたくない、信じたくない、だから原因なんかない!』
って言う人はいるかもしれないけど、それは完全に『甘え』だよね。親がそういう甘えを見せてたら、子供もそれを見倣うと思う。
『自分は悪くない!』
ってさ。自分が原因を作ってるのにそれ認めない人間になってしまうんじゃないかな。
何でもかんでも『自分が悪い』『自分の所為だ』と思えって言ってるんじゃないんだ。ただ物事を客観的に見るのを避けようとするのはマズいんじゃないかなってだけで。親がそんなことをしてたら子供も真似るんじゃないかなって。
イジメの加害者とか、完全にそうだよね。二言目には、
『イジメられる方にも原因がある!』
って。相手が何か好ましくないことをしたんならちゃんと教師とかに告げて指導してもらえばいいのにそれをせずになんて、ただの『甘え』としか思わない。
『だって教師に言っても改善されないし!』
とか言うのもいるみたいだけど、それが改善されないのは教師や学校側の対応が拙かったり能力不足なだけで、それはむしろ教師や学校側の問題じゃないの?。
沙奈子が通ってた小学校を見てるとすごく思う。ただ、今ではそう思える僕も、自分が通ってた学校のことしか知らなかったら、『教師や学校には頼れない』と思ってしまってたかもしれない。ううん、実際にそう思ってたな。だから、
『自分で何とかするしかない!』
とも思ってたかもしれない。
だけど、実際にはそうじゃないんだよ。対処できる学校は現にある。ということは、それができない学校は体制に問題があるってことだよね。
僕は今では、学校そのものを『こんなものは駄目だ!、役に立たない!』とは思わない。『体制が不十分な学校もある』って思うだけだ。だとしたらやっぱり学校が改善されることで問題が緩和される可能性もあるんじゃないの?。それをせずに、
『イジメられるのは、イジメられる側にも原因があるからだ!』
って言い訳するのは、筋違いだとしか思わない。
僕は沙奈子に、そんな人になってもらいたくない。他人を害しておいて言い訳して自分を正当化しようとするような人に。
千早ちゃんが言ってたな。
「沙奈が転校してきたばっかりの頃さ、『なんか暗い顔してウジウジしてるのが来たな』って思っちゃったんだよ。しかも『私って可哀想でしょ?』アピールしてるみたいに見えてて、それがヒロに構われてるってのが許せなかったんだ。それで……。
ごめんなさい……」




