番外編短編・真夏のペパーミントティー
夏だ。雲はふわふわ。空の色も鮮やかだったが、この暑さでレーネはぐったりとしていた。
「はあ、暑い。よし、こんな時はペパーミントティーだな」
研究室でペパーミントのドライハーブを煎じると、香りが広がる。清涼感のある香りだ。周りの空気も一気に涼しくなったよう。
ペパーミントは殺菌、鎮静、食欲不振にも効く。味もすっきりとしている為、煮詰まっている時ににも良い。クールダウンする。もちろん、朝の目覚めにも相応しいし、夏にも合う。寝る前はあまり合わない。
「はあ、ペパーミントティー。いいな」
うっとりと目を細め、飲んでいる時だった。研究室に来客があった。村の若い女性だ。確か農園の娘で、時々、健康相談にもやってくる。赤毛とそばかすがチャームポイント。名前はケーテ・バルト。
どうも様子が変だ。顔が赤い。日焼けに効くハーブを教えようとしたが、よくよく事情を聞くと、恋人と喧嘩中らしい。
「彼って私の事をブスって言うんです。昨日なんか妥協して付き合っているだけって言われた!」
頬を膨らませ怒ってるケーテ。相当、頭に血がのぼっているらしい。
「頭きちゃう。落とし穴に投げてやりたい」
「まあまあ、落ち着け。ペパーミントティーでも飲め」
レーネはカップにペパーミントティーを注ぎ渡す。すっとした香りが広がり、ケーテは拍子抜けしていた。振り上げた拳をどう降ろしていいか分からない。そんな戸惑いが目に滲む。
「ペパーミントティー飲んだら、少し冷静になってきただろう?」
「そ、そうね。私も言いすぎたかも」
すっかりトークダウンしているケーテ。ペパーミントティーが彼女の怒りまでも吸収したらしい。
「な、無駄な怒りは、本当にエネルギーを消費するだけだ。そのぶん、楽しい事でもした方がいい」
レーネはダサいメガネを掛け直し、再びペパーミントティーを口に含む。
「そうね、レーネ。スッキリしてきたかも」
ペパーミントティーの香りに包まれ、二人とも苦笑。気づくとカップの中身も空になり、レーネはおかわりを作っていた。




