エピローグ Ark-Memory_1
ここがどこなのか、俺には分からなかった。
いや、過去形にしてしまっては語弊があるか。
分からなかったんじゃない、今も分からないんだ。
それなのに、俺の足は止まることなく進み続ける。
まるで、頭の命令など意に介さぬというように。
あるいは、行き先を知っているかのように。
視界に映るのは、一面の砂漠。
地平線の彼方まで続く果てしない大地が、時化の海のようなうねりを形作っている。
見上げた先には、曇りの無い星空。
青く光る星が瞬き、小さな光がその軌跡を漆黒のキャンパスに擦りつけていく。
砂漠の中に、青白い光を放つ街灯のようなものが多数立ち並んでいる。
乱雑に見えて、しかし何かの道を作るようにポツリ、ポツリ。
ジグザグに置かれた街灯の合間を道に見立てて、俺は足を進めていく。
けれど道は地平線を超えて、地上に浮かぶ星はどこまでも遠くへ続いている。
暑くもなく、寒くもなく、ただ果てしなく道がある。
だからだろうか。
そこが夢だと気付くのに、そう時間はかからなかった。
疲労を感じない足に任せ、夢の中の砂漠を俺はゆっくりと歩いていく。
砂に足を取られながら、一歩、そしてまた一歩。
砂を踏み締める音だけが、暗く静かな世界に響いていく。
風の音さえ聞こえない、そこにあると感じられるのは自分ただそれだけだった。
そうして見つめるのは、原始と技術の入り混じった空間。
未開の地を思わせる果てなき砂漠に、人の英知を思わせる青く光る道標。
異質。俺の実感を埋め尽くすのは、それが全て。
見つめる。
足を進める。
そこに何かを求めるように。
俺の意思か、あるいは、俺ではない何者かのそれか。
ただ、歩みは止まらない。
止める気も、ない。
歩みが果てに至ることはなく、故にそれは終わりを知らず。
砂漠の果ては、未だ見えない。
方舟は、そうしてまた夢を見る。




