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ギャンブル中毒者が魔王討伐!?~ギャンブルスキルだけで魔王討伐~  作者: がりうむ
1章

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王都到着

馬車は街道を進み続けた。

昼を過ぎる頃には、周囲の景色も少しずつ変わっていく。

田畑が増え、行き交う人の数も多くなっていた。

商人。

冒険者。

旅人。

今まで見てきた街とは比べ物にならないほど、人が集まっている。


「……すごいな」


思わず声が漏れる。

リリアが窓から身を乗り出した。


「見て!」


「あそこにも街があるよ!」


「違う」


「あれ全部、王都の一部だ」


馬車の御者が笑いながら答える。


「王都アルゼリアは、この国最大の都市ですからね」


「人口も十万人以上いると言われています」


「十万人……」


想像できない数字だった。

俺が前にいた世界でも、東京やニューヨークなどの何百万人規模の大きな都市はあった。

でも、この世界でこれだけの人が一つの場所に集まっている光景を見るのは初めてだった。

やがて、遠くに巨大な城壁が見えてくる。


「うわぁ……」


リリアが息を飲む。

高くそびえる白い壁。

その中心には、空へ伸びるような巨大な城が見えた。


「これが王の城……」


「そうだ」


ガルドが酒瓶を揺らしながら言う。


「この国の中心だ」


「王様って強いの?」


「さあな」


「俺は会ったことねぇ」


「そっかぁ」


リリアは少し残念そうな顔をする。


「じゃあ普通のおじさんかもしれないね」


「王様をなんだと思ってるんだ……」


「無茶苦茶ムキムキなゴーレムみたいな最強のおじさんかと思ってた!」


そんな会話をしている間にも、馬車は門へ近づいていく。

門の前には長い列ができていた。


「すごい人……」


「王都だからな」


「商人も冒険者も集まる」


門番が一人ずつ確認している。

俺たちの番になると、門番が馬車を見る。


「身分証を」


冒険者カードを渡す。

門番はカードを確認した。


「……ん?」


門番がカードを見たまま固まる。


「ジョー……ガルド……リリア……?」


「まさか、キングボア討伐の?」


門番の声が響く。

周囲の人間がこちらを見る。


「え?」


「キングボア?」


「三人で倒したっていう……」


「あの噂のパーティーか?」


ざわざわと声が広がっていく。


「三日前なのに、もう広まってるのか……」


俺が呟くと、ガルドは嬉しそうに笑った。


「俺たち有名人ってことだな」


「違う」


「お前が酔って街中で自慢しまくったせいだろ」


「細かいことは気にするな!」


「細かくねぇよ」


リリアは周囲を見回して目を輝かせている。


「すごい……」


「王都に入るだけでこんなに注目されるんだ」


門番が苦笑する。


「通っていいぞ」


「ただし……」


門番はガルドを見る。


「街を壊すなよ」


「俺か!?」


「一番怪しいからな」


リリアも頷く。


「確かにガルドはお酒飲むと危ないね」


「お前にだけは言われたくねぇ!お前のほうが壊すだろ!」


門が開く。

その先に広がっていたのは――。


「……」


言葉が出なかった。

大きな通り。

何十軒もの店。

空を飛ぶ魔法道具を売る店。

巨大な武器屋。

見たこともない料理の屋台。

まるで別世界だった。


「すごい……!」


馬車を降りると、リリアが走り出しそうになる。


「待て!」


「迷子になるぞ!」


「大丈夫!」


「私は方向感覚いいから!」


「お前、前に宿までの道で迷ってただろ」


「……」


リリアが止まる。


「忘れてた」


「忘れるな」


ガルドは笑いながら歩く。


「まあ、今日は自由に見て回ろうぜ」


「俺はまず酒場を探す」


「予想通りだな」


王都へ来ても何も変わらない。

でも、それが少し安心した。

三人で歩きながら、くだらない会話をする。


「ジョー!」


「早く!」


リリアが手を振る。


「この店、魔法の杖いっぱいある!」


「お前、金ないだろ」


「見るだけ!」


「絶対買う顔してるぞ」


ガルドも笑う。


「まあいいじゃねぇか」


「仲間とこうやって街を歩くなんて、久しぶりだな」


ガルドは酒瓶を掲げる。


「楽しむぞ!」


俺は苦笑した。


「本当に自由だな、お前」


そう言いながら、俺も歩き出す。

目の前の街はどこまでも広がっていた。

大通りには人が溢れ、聞いたことのない言葉や、エルフやドワーフはもちろん。

見たことのない種族まで歩いている。

露店の焦げた香辛料の煙が鼻をくすぐり、遠くでは魔法道具の実演販売の声が隣のやつの声すらかき消していた。

今まで俺がいた街とは、何もかもが違う。


「これが……王都か」


思わず呟く。

リリアは目を輝かせながら周囲を見回していた。


「すごい……!」


「一日じゃ全部見られないね!」


ガルドも珍しく酒瓶を傾ける手を止め、街を眺めている。


「さすが王都だな」


「世界中の人間が集まるって話も納得だ」


しばらく三人でその景色を眺めていた。

だが。


「……で?」


俺は二人を見る。


「いつまでここにいるつもりだ?」


「え?」


「まず宿を取るだろ」


「あ」


リリアが固まる。

俺がそう言うと、リリアは少し不満そうな顔をする。


「えー」


「先に街見たい」


「お前、絶対そのまま迷子になるだろ」


「ならないよ!」


リリアは頬を膨らませる。


「ジョーって意外と細かいよね」


「意外じゃない」


その横でガルドは周囲を見回していた。


「しかし……」


「本当にでかい街だな」


いつも酒ばかり飲んでいるガルドが、珍しく感心している。


「お前でも驚くんだな」


「そりゃな」


「ここには世界中の酒が集まる」


「結局そこかよ」


「重要だろ?」


呆れながら歩いていると、大通りから少し外れた場所に宿屋の看板が見えた。


《銀の羽亭》


落ち着いた雰囲気の三階建ての宿だった。


「ここでいいんじゃないか?」


ガルドが看板を見る。


「悪くなさそうだな」


リリアも頷く。


「きれい!」


「じゃあ決まりだ」


扉を開ける。

カラン、と鈴の音が鳴った。


「いらっしゃいませ」


カウンターにいた女性が笑顔で迎える。


「三人部屋は空いていますか?」


俺が聞くと、女性は宿帳を確認する。


「はい、空いています」


「じゃあそこをお願いします」


料金を支払う。

金貨を使うことに少し緊張した。

キングボア討伐の報酬によって、生活は大きく変わった。


「……金って怖いな」


思わず呟く。


「ん?」


リリアが首を傾げる。


「どうしたの?」


「いや」


「前まで金がなくて困ってたのに、今は普通に宿を取れてるから」


「いいことじゃん!」


リリアは笑う。


「いっぱい頑張ったからだよ!」


ガルドも頷く。


「そうだ」


「結果を出した奴には、それ相応の報酬がある」


その言葉を聞いて、少しだけ納得した。


受付から鍵を受け取る。


「三階の一番奥のお部屋です」


「ありがとうございます」


階段を上がる。


部屋へ入ると、そこには三つのベッドと小さな机が置かれていた。


「広い!」


リリアがすぐにベッドへ飛び込む。


「おい、汚すなよ」


「大丈夫大丈夫!」


言った直後。

ボフッ。

枕に顔を埋めている。


「……絶対大丈夫じゃない」


ガルドは荷物を置くと、窓の外を見る。


「夜になったら街も見てみるか」


「夜の王都?」


リリアの目が輝く。


「屋台とかいっぱいあるぞ」


「行く!」


「即答だな」


俺は苦笑する。

でも、悪くない。

王都に来た目的は観光だ。

少しくらい楽しんでもいい。

窓の外を見ると、夕日に照らされた巨大な街。

見たことのない景色。


「明日から、何が起きるんだろうな」


そんなことを考えながら、俺たちは王都で最初の夜を迎える準備を始めた。

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