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最後の旅の案内人 〜やり直しの世界へ〜  作者: megane-san
第1章 追放~覚醒

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12. マルコの決断

 「おじいさま、お話したいことがあります」


じいちゃんは、俺の真剣な表情を見ると何かを察したように頷いた。


「夕食後に、儂の執務室に来い」

 


夕食後に俺がじいちゃんの執務室に入ると、チャールズもソファに座って俺を待っていた。


「あれ?チャールズ……」


チャールズは俺に微笑むと、俺の目をじっと見た。


「ルーピンから報告を受けましたので、私も同席させていただきます」


じいちゃんは、座っていた執務机から立つと、俺の前にしゃがみ込んで俺の目を覗き込んだ。


「今は痛みはないか?」


「おじいさまは、知ってたの?」


「詳しくは知らん。ただ、昔……誰かが儂の色について言ってたのを聞いたことがある」


「俺は、怪物なの?」


じいちゃんは、少しだけ眉を寄せた。


「……馬鹿者。お前は、儂の孫だ」


そう言うと、じいちゃんは俺をチャールズの横に座らせた。


「チャールズは、親父からの命を受けて、ずっと魔の森について調べている」


「チャールズが?」


「はい。先代様がハン様を息子とされた時から」


チャールズは、テーブルの上に重ねてあったノートを俺の前に置いた。


「ルキリア様、これが私が今まで調べてきた全てです」


何冊もあるノートは、年代を感じさせる物から新しい物まであり、チャールズの長年の努力を感じさせる物だった。


「私が説明するよりも、このノートを読んでいただいた方がよろしいかと」


「……ありがとう、チャールズ」


じいちゃんは、俺とチャールズを見て頷くと、執務机の上にあったベルをチリンと鳴らした。


「……お呼びでしょうか」

 

顔を隠した黒服の男が、スッと姿を現した。


「ルイ、今からルキリアの影につけ」


ルイと呼ばれた男は、じいちゃんに頷くと俺の前にひざまずいた。


「ルキリア様、今からルキリア様の護衛をさせていただくルイと申します。姿の見えない所におりますが、いつでもお声をかけてください」


「……わかりました。ルイさん、よろしくお願いします」


じいちゃんが頷くと、ルイさんはサッと姿を消した。


「ルキリア、これからお前の守りを強化する。お前自身も自分の身を守る方法を考えろ」


「わかりました、おじいさま」



翌朝、ばあちゃんに引きずられながら、俺は診察室の椅子に座らされた。


「ルキ、我の目を見ろ」


ばあちゃんは、じっと俺の目を観察した後、手を握って体の中を巡る魔力を調べた。


「……増えておるな」


ばあちゃんは、少し考えた後、隣の部屋から俺の手のひらサイズの水晶玉を持ってきて机の上に置いた。


「ルキ、この水晶玉に触れてみなさい」


水晶玉は、窓からの光を通して、診察室の壁にキラキラした光を反射させた。


俺が恐る恐る水晶玉に触れると、中に黒い雲のようなものが渦を巻いた。


「ふむ……、やはり……。えっ……!」


俺とばあちゃんが、じっと水晶玉を見つめていると、真ん中に黒い鉛のようなものが現れて、黒い雲の渦を吸い込んでいった。そしてその真っ黒いものは、まわりの渦を全部吸収していき、水晶玉は鉛玉のように真っ黒になってしまった。


「何じゃこれは……、んっ?」


ばあちゃんは、何かを見つけたのか、拡大鏡を使って水晶玉を覗き込んだ。


「光……?」


真っ黒に染まった水晶玉の真ん中に、小さく光る粒が見えた。


「不思議じゃ……。闇と光は相反する物。それを両方持つとは……」


ばあちゃんは、ハッとして俺の顔を見上げた後に、ニカっと笑った。

 

「理由はわからんが……、ルキの中に光の気配がある。慣れるまでは、魔法を使用する時にちょっと違和感を感じるじゃろうが、大丈夫じゃ。まぁ、体は至って健康だからのう!」


そう言うと、ばあちゃんは、俺の背中をバシバシと叩いた。


(……よくわからないけど、ばあちゃんが大丈夫って言うなら大丈夫かな……)


俺が診察室を出ようと立ち上がると、ばあちゃんは、俺の腕をぐいっと引っ張って、俺の首に魔道具の付いたネックレスをかけた。


「これは、魔力を抑える魔道具じゃ。もしまた目に魔力が集中して痛みを感じたら、この魔道具を起動させて魔力を抑えよ。多少はマシになるはずじゃ」


「わかった!おばあさま、ありがとう!」


セイは笑顔でルキリアを見送ったが、ドアが閉まった瞬間、力が抜けてガクッと崩れ落ちるように椅子に座った。


「我が、昔に携わっておった研究……。あの、人族と魔族の掛け合わせの魔力とも違う……」


そして水晶玉を手に持って、キラキラした透明な光が反射しているのを見つめながら呟いた。


「ルキの目に、魔王が持つという暗黒の魔力が漏れ出した……。我はこれを抑えるべきか……」



♢*♢*♢*♢*♢




その頃、隣国エビータ国の王宮は、平和協定締結の式典の準備で慌ただしく動いていた。


「兄さん、招待客はこれで全部かな?ガーラ国と聖エリス国からは、国王と教皇が直々に来られると返事があったよ。落ち度のないように、準備しないと……」


「親父が亡くなってまだ半年経ってないのに、ここまでこれたのはルナールのおかげだよ。お前、目の下真っ黒だけど、ちゃんと寝れてるか?」


「いや、兄さんも組織の大改編をして、あのスピードで立ち上げたのは凄いよ。前世の経験が生きてるよね。俺たちもこの式典が終われば、少しはゆっくりできるかな……」


「そうだな……。そういえば、マルコの方はどうだ?返事はもらえたのか?」


ルナールは、ペンを置いて腕を組み、少し考えてから答えた。


「……いや、まだなんだ。式典が終わったら、マルコともう一度話してみるよ」


「すまんな……。嫌な役をさせっちまって」



 

♢*♢*♢*♢*♢

 


「団長!」


空挺団最年長のサムが、宿舎に向かうマルコを呼び止めた。


「……サム、どうした?」


「今日はいつもの4人で飲み会をするんですけど、団長も一緒にどうですか?アイツら、かなり愚痴がたまってるみたいなんで……」


マルコは、みんなのまとめ役をさせてしまっているサムに申し訳ない気持ちもあり、自分も参加すると返事をした。


マルコがみんなが行きつけの居酒屋に入ると、奥のテーブルに座っている団員たちの姿が見えた。年少のエリックはすでに酔い潰れて、隣のサムにくだを巻いている……。


「団長、まだかなぁ。今日は、俺、団長に言いたいことがあるんだ……」


「何が言いたいんだ?」

 

マルコがテーブルの席に着くと、エリックはテーブルに突っ伏していた顔を上げた。


「あれ?団長が座ってる〜……」


エリックは、そのままサムにもたれて寝てしまった。


「お前ら……、エリックは、酒は飲めなかっただろ」


「こいつが、今日は酒の力を借りて団長に言いたいことがあるからって言って……」


マルコは、テーブルに運ばれてきたエールの入ったジョッキを一気に飲み干すと、大きくため息をついてからみんなの顔を見回した。


「……言いたいことがあるなら、ここで全部吐き出せ」


団員たちは皆黙っていたが、サムが小さく口を開いた。


「エリックは、団長が騎士団や海兵団の連中から見下されたような言い方をされて悔しかったんですよ。……団長、俺たち、ここにいる必要がありますか?」


その場に居たコルビーとドロウも、拳を固く握って頷いた。


「……母ちゃんが、先週亡くなったんです。もう俺、一人だから……」


「団長、俺たち、この国いる意味、もう無いんじゃないですか?馬鹿にされてまで、この国に仕える忠誠は、俺にはない」


マルコは、顔を上げてみんなの顔を見回すと、苦し気に告げた。


「……汚れ仕事をすることになってもいいのか?亡命したら、確実にそういう仕事をすることになる。お前らにそんなことをさせたくない……」


マルコはそう言って立ち上がると、「今日はこれで憂さ晴らしをしろ」と、飲み代には十分すぎるお金をテーブルに置いて店を出ていった。




マルコは宿舎には戻らず、そのまま執務室のソファに寝ころび、壁に貼ってある大陸全土の地図を眺めていた。


一瞬、空気が揺れて、凍えるような冷気をまとった男がマルコのそばに現れた。


「私のことを探してくれたようですね」


「はっ、お前は……」


「私は、貴方の推測通り、ノクタリア国の第一王子。もう貴方の返事が決まったのではないかと思い、こちらへ参りました」


「……俺は、あいつらに汚い仕事をさせたくないんだ」


「汚い仕事?戦争で他国の者を殺してきた貴方が?」


「あれは……国の命令だったから……」


「目的を達成するための仕事に、汚いも綺麗もありませんよ。先を……目的を未来を見なさい。自分の欲するものを得るための仕事は、苦とはなりません」


「……」


「貴方は先王時代の戦争で功績を上げた英雄だった。貴方は先王に認めてもらいたかった。そして、居場所を確立したかった。そのために、戦争でたくさんの兵士を殺して……、そして英雄となった」


「俺は……」


「貴方が先王に求めたもの……、『認められること、居場所』、それを今、団員たちは貴方に求めているんです。彼らは、貴方に認めてもらい、そして貴方の側に居場所を確立したい。……その願いを叶えてあげたらどうですか?」


「居場所……」


「……すでに、色々と調べさせてもらいましたよ。10日後、この国では平和協定の式典が開かれますね。その日に出発することをお勧めします。……それでは王宮でお待ちしております」


そう言うと、男は冷たい血の香りを残して姿を消した。






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