第11話
翌日、目が覚めたら自分のベッドにいた。
ベッドのそばにいた侍女が、姉を呼びにいくといい、私の返事を待たずに部屋を出て行った。
するとすぐにバタバタと廊下から走っている足音が聞こえてきて、バンッとドアが開いて姉が部屋に入ってくる。
「フェリシア、体調は大丈夫かい?昨日のことは覚えている?」
姉は矢継ぎ早に私に状態を聞いてきた。
「お姉様、頭が痛いので二日酔いのようですが、それ以外は大丈夫です」
姉が侍女に二日酔いの薬を持ってくるように指示して、部屋には2人だけになる。
「昨日の顛末、話してもいいかい?それとも体調がよくなってからにするかい?」
「大丈夫です。わたくしも知りたいですから、話していただけますか」
私を襲おうとしていた男は、本当に私に縁談を持ち込んでいたようだが、姉が断ったことで、腹を立てていたらしい。
昨日のパーティーで私が赤ワインを受け取った侍女の家族が、私を襲おうとした貴族の家で働いていて、侍女に家族を首にしたくなければ、私に媚薬を飲ませろと脅されていたそうだ。
ただ侍女としては私に媚薬を盛ることはできなかったらしく、アルコール度数の高いワインをトレイにのせて、私が飲むように仕向けたらしかった。
そして私が1人で休憩室に向かったことを脅されていた貴族に話したようだった。
そこをたまたま通りかかったアリーサ様が聞いて、侍女を追いかけて問いただし、アレックスに伝えてくれたらしい。
「まさか、アリーサ様に助けられるとは・・・・」
私が絶句していると、お姉様はくすくす笑い出す。
「そうだねぇー、いつもフェリシアに突っかかっては、反撃されて撃沈していたから、意外だよね」
「アリーサ様、アレックスが好きだったようです」
「おや、やっと気づいたのかい?」
「お姉様、ご存じでしたの?」
「もちろん、気づいている貴族は多かったと思うよ」
なんてこと、だからいつも私に絡んできたのですか。
「もしかしてナターリア様がわたくしに絡んでいたのは、娘さんがアレックスを好きだったとか?」
「ナターリア様は、娘の縁談を持ち込んだ先々で、フェリシアに申し込みをしていると断られることが、多かったみたいだよ」
なんてこと、だから2人は私が結婚しようとしないで、アレックスや縁談話の男性を侍らしていると思っていて怒っていたのね。
「アレックスが、どさくさに紛れて告白したって言っていたけれど、覚えているかい?」
「えっ?」
アレックスから告白なんてされていませんけれど・・・・間違いでは?と言おうと思ったけれど姉の話は続くようなので、口を挟まずに聞く。
「その様子じゃ、覚えてなさそうだね」
残念だねぇーと姉は肩をすくめた。
「お姉様、アレックスは、ジャクリーンが好きだから共同事業をしたのではないのですか?」
「私の口からはこれ以上言えない。あとは本人から聞くといいよ」
あと、襲おうとした男の家とは、お姉様がきっりと対応してくれるらしく、心配しないようにと言ってくれた。
翌日には、二日酔いも治りベッドからでて、普通に家の仕事をこなしていたら、執事のセバスチャンからアレックスが見舞いに来たと連絡してきた。
ちょうどいい、お姉様が思わせぶりな言い方をした、昨日の件を詳しく聞きましょうか。
「アレックス」
私はアレックスが待っているサロンに入ると声をかけた。
「体調は大丈夫か?香りがきつくない花を選んできた」
アレックスはソファーから立ち上がり、両手いっぱいの大きな花束を差し出してくる。
私は花束を受け取る。
「ありがとう、玄関に・・・・いえ、部屋に飾るわ」
私がなぜ言い換えたかというと、アレックスが顔をしかめたからだ。
花束は付き添いの侍女に渡して、部屋に飾るように指示して、私は対面のソファーに座った。
「改めて、一昨日はほんとうに助けてくれてありがとう」
「いや、間に合ってよかったよ」
「えぇ、ほんとうに。あとアリーサ様にもお礼を言わなければいけないわ」
「そうだな、お礼を言いにいく際は一緒に行こう」
「・・・・なぜ?」
「なぜって、あの時のこと何も覚えていないのか?」
アレックスの顔が少し強張ったように見える。
「いいえ、鮮明に覚えているのだけれど、あなたから告白を受けた記憶がまったくないのよ」
ここははっきり白黒つけよう。
「なんだって!!はっきりと俺のフェリシアになにするのだと・・・」
「ちょっと待って。それだけでお姉様たちに、わたしくしに告白したといったの?」
「えっ、十分告白したと思うのだが・・・・」
「何言っているのよ。全然告白でもないじゃない。付き合って欲しい、結婚してほしい、好きだ・・・というような言葉が全然ないわ。しかも俺の・・・って言葉はね、恋人や婚約者、夫婦関係の時の言葉よ!!」
私は思わずアレックスに怒鳴ってしまった。
私の剣幕にアレックスは驚いていたが、口を開く。
「ずっとフェリシアが好きだった。だけど告白することで、今の関係が崩れるのが怖くて、ずるずるときてしまった。私との結婚を考えてくれないだろうか」
「不合格」
「えっ?」
「全然ダメよ。それがわからないようでは、話にならないわ!!」
私はアレックスを置いて部屋を出ていった。




