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桃太郎、最後の戦い 前

 ケルベロスの先の扉を開けるとそこは、何も置かれていないただひたすらに広い広間だった。

 部屋の真ん中には一人の人間?が立っていた。

 「ずいぶんと若い桃太郎だな。」

 男は言った。

 「貴様が魔王か。」

 「その通り、我は魔王浦島。いや・・・。」男は一瞬そう答え、言い直した。「魔王・裏死魔!!」

 自信満々に言ってるけど、それすげえダセェかんな?

 ダサすぎて、魔王が浦島ってところに思考のピントが合わなかった。

 「魔王・・・浦島太郎だったのか。」

 ちょっと間が開いたがきちんと質問してやる。

 「その通り。カメを助け、竜宮城から帰ってみれば異世界だった。」

 そういうパターンもあるんだ。

 「なぜ、浦島太郎が魔王を?なぜ、こんな事をしている。」

 「特に、理由はない。」浦島は言った。「退屈なのだ。もう、世界の全てを無くしてしまいたいのだ。乙姫からもらった時を操る能力【玉手箱】のせいで、本能が勝手に身体を若いころに戻してしまう。腹も減らぬ。睡眠もいらぬ。もう数千年。行くところは行きつくした。世界を滅ぼすくらいしか、やる事がないのだ。悪魔どもに命令をしている時以外は時を早く進めてどうにか正気を保っている。」

 魔王になった時点でもう正気じゃねえだろうに。

 「だったら、その時間を操る能力で勝手に死に向かいやがれ!」俺は叫んだ。「お前の自殺に俺たちを巻き込むな!」

 「死ねんのだ、死ねんのだよ。我々生き物が世界に義務付けられた業なのだ。」浦島は言った。

 「ならば、俺がお前を倒す!」

 「すばらしい、桃太郎。素敵な言葉だ。数百年ぶりに楽しさを感じる。そして、愉悦だ。傲慢だ。怒りだ。感情があるよ。喜びだ。」浦島は少し笑ったように見えた。「だから死ねんのだ。数百年ごとのほんのこの感情のせいで。桃太郎よ。お前のせいだ。また、私は期待してしまう。」

 「心配するな、絶望男!お前は、ここで俺に倒されるんだ!!」

 俺はムラマサブレードを抜いた。

 浦島は背中から筒状の何かを取り出した。

 って、大砲じゃねえか。

 「さらばだ、桃太郎。」浦島が筒先をこちらに向けた。

 やばい!

 素早く駆け出して、射線から逃れる。

 「死ね!」

 浦島の銃口からビームが出てきた。

 ビーム兵器かよ!

 太さ20センチくらいのぶっといビームが部屋の壁を突き抜けて言った。

 浦島はビームを出しっぱなしにしたまま俺に銃口を向ける。

 出っぱなしのビームが、城の壁を切り取りながら俺を追いかけてくる。

 やっぱ、横からビームに当たっても死ぬんだろうなぁ。

 もはや、巨大なビームサーベルだ。

 やべえ!追いつかれる。

 大きくジャンプ&バク宙でビームを飛び越えてかわす。

 「ふん。」

 浦島が銃を無茶苦茶に左右に振った。

 いかーん。

 「ほっ!ほっ!ほっ!」

 俺は素早く防御魔法陣を三つ目の前に上を向けて召喚。その上を階段を上るように跳んだ。

 ビームの線が俺の後を追ってくる。

 クソっ!ビームが途切れん!!

 上空に飛び上がった俺にビームが迫る。

 「ほっ!ずい!」

 自分の周りを防御魔法陣で囲うとマジックミサイルを自分に命中させて、床に向けて吹き飛ばす。

 素早く着地して上を見ると、俺の居たあたりを通過したビームが向きを変えてこっちに迫ってきているのが分かった。

 俺は素早く、浦島のほうに駆け出す。

 距離はまだある。

 「ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!」

 ほたるこいの短節詠唱を繰り返して、素早く浦島と俺の直線状に魔法陣をいくつも形成する。

 魔法陣を薙ぎ払うかのように、上からビームが落ちてくる。

 俺は光の線が落ちてくる直前左に曲がって、さっき上空に跳んだ時に見つけた場所に全力で走った。

 デコイとして並べていた防御魔法陣はがなすすべも粉砕され、城の床がビームで割れる。

 浦島はビームで床をぶち抜きながら、銃口をこっちに向ける。

 間に合えっ!!

 俺は跳んだ!

 ギリギリに迫ったビームは、俺がコンセントを抜いた瞬間に消えた。

 セーフ。

 エネルギー供給が有線で良かったぜ。

 しかも家庭用100Vかよ。

 「やるな。」浦島が言った。「では、これはどうだ?」

 浦島の前の地面に一つ黒くて丸い影ができ、その中からせり上がるようにゴーレムが出てきた。

 ゴーレムは人を模した形ののっぺりとした人形で、金属で出来ていた。頭部には大きなレンズのようなものが一つ埋め込まれている。おそらくそこから、相手を視認するに違いない。アイアンゴーレムと言うか、近未来のロボットに感じは近い。

 ロボットは歩行制御が甘いのかバランスの悪い感じで俺のほうに迫ってきた。

 「ずい!」

 短節のマジックミサイルを叩きつける。

 パン!と、ロボの表面でマジックミサイルがはじけた。

 ダメージが通った様子はない。

 ゴーレムはこっちに走ってくる。

 「電池式だ。」浦島が言った。「有線ではないぞ。」

 機械系か。ならば。

 「リン!」

 地面から雷が走る。

 ダメか。ロボなら止まるかとも思ったが。

 「絶縁コーティングだ。」浦島が言った。

 俺の目の前まで迫ってきたゴーレムがパンチを・・・うぉっ!!

 なんじゃ今のは!

 ゴーレムは一瞬だけ腕を振りかぶるモーションを見せると、上半身を高速回転させてデンデン太鼓のように遠心力でパンチを繰り出した。

 慌てて跳び退ってかわし、そのまま距離を取る。

 あぶねえ。予想外のパンチ過ぎて当たるところだった。

 ゴーレムとの距離をとる。

 「通りゃんせ、通りゃんせ!」

 ゴーレムと自分の間の地面を荒らす。

 ゴーレムはこっちに向かってくるが、やっぱり歩行が苦手なのかふらついて手をついた。

 すぐさまマジックミサイルを召喚。

 「ずいずいずっころばしごまみそずい、茶壺に追われてとっぴんしゃん、抜けたーらどんどこしょ、俵のネズミが米食ってチュウ、ちゅうちゅうちゅう!!」

 5節!

 それも、一本!!

 ネネさんの魔力制御を見ながら、俺もずっころばしを練習してきた。

 5節唱えて一本の今の状態、なん十本のマジックミサイルが同じ場所に出てエネルギー密度が上がっている状態だ。

 貫通力は別として、ネネさんが常に1本しか光の矢を召喚できないのは、単に散らして作ることができないだけなのだ。

 ゴーレムが荒れた地面を抜けて俺のすぐそばに迫っていた。

 即座に俺はマジックミサイルを『浦島に』飛ばす。

 マジックミサイルが浦島を直撃!

 浦島の右手が吹っ飛んだ。

 同時にゴーレムのパンチが俺を直撃、俺も部屋の隅まで吹っ飛ばされる。

 「ほっ!」

 防御魔法陣で吹っ飛ばされて壁に叩きつけられた分のダメージを緩和する。

 それでも、あばらが何本も折れた感触がある。

 慌てて、魔法ストレージを開けてグレートポーションを咥え、壁にしがみつくように上半身を起こす。

 浦島は?

 「おお、痛いよ。桃太郎。」

 浦島の右手は肩から消し飛んでいた。

 「こっちより、ゴーレムとの戦いの途中だろ。桃太郎。」浦島が言った。

 俺の右肩に衝撃が走った。

 鎖骨から肩、右肺の辺りがものすごい力で吹き飛ばされ、えぐられた。

 ぐっ!

 持ってかれそうな意識を必死で我慢して咥えていたグレートポーションを丸のみする。

 即座に光り輝いて復活する俺の右肩。

 あぶねえ、グレートポーション咥えてなかったら、死んでた。

 見ると、すぐ後ろの壁に、大きな血のシミを作って金属の左腕が刺さっていた。

 なぜ、左だと分かったのかというと、ゴーレムの左手の肘から先が無くなっていて、その肘がこっちを向いて細い煙をあげていたからだ。

 ロケットパンチかよ。

 ゴーレムは右手をこっちに構えた。

 クソッ。慌てて立ち上がり回避。

 直前まで俺が寄りかかっていた壁に右腕が刺さった。

 あぶねえ。

 ゴーレムは困ったように両手を見つめると、足元に黒い円が現れ、沈むように消えていった。

 浦島に目を走らす。

 浦島の目の前の地面に今度は二つの黒い円が現れ、それぞれから新しい、ゴーレムが現れた。

 「通りゃんせ、通りゃんせ、こーこはどーこの、ほそみちじゃ!」

 通りゃんせ、、4節で、ゴーレムから自分までの間の地面だけをぼっこぼこに荒らす。

 こっちも浦島に近づき難くなるがしょうがない。

 それに、浦島に重ねマジックミサイルが有効だった。

 相手が油断して防御無しの状態だったが、右腕を木っ端みじんにしたった。

 ずっころばしの詠唱時間さえ稼げば倒せる。

 えっ?

 浦島に右腕がある。服も全部。

 「時間が戻ったんだよ。」浦島は言った。「君は私を一辺に消し飛ばす必要がある。」

 くそ、頭に当てていれば。

 そこまで狙う余裕がなかった。

 「頭も試してみるかい?」浦島は自分の頭を人差し指で差して言った。「私の死にたくないという本能は脳にだけ宿っているのかもしれない。」

 ブラフか?いや、マジで頭吹っ飛ばしても回復しそうだ。

 ゴーレムが両腕をこっちに向けたまま、足場の悪い地面をよろけながら、進んできた。

 くそ、詠唱しながら四発避けなあかんのか。

 「ずいずいずっころばしごまみそずい、茶壺に追われてとっぴんしゃん、」

 ゴーレムの一体が右手で俺に狙いを定めた。

 集中!呪文を切らすな!

 マジックミサイルよりは遅い!

 「抜けたーらどんどこしょ、」

 ゴーレムの腕がロケットのように飛んできた。

 身をよじる。

 ゴーレムの腕をかわしたと思ったその瞬間、ゴーレムの腕が破裂した。

 散弾だと!?

 無数の金属片が俺の身体を襲い、体中から血しぶきが舞った。

 「俵のネズミが米食ってチュウ、」

 舐めるな!集中!我慢だ!

 「ちゅう、かはぁっ!!!」

 散弾の痛み冷めやらぬなか、別のゴーレムの左手が腹にさく裂した。

 これは無理だ。我慢とかいう話でない。身体の中の空気が一気に押し出され、声など出せない。再び壁に吹き飛ばされた。

 今度は短一節のほたるこいすら唱えることができず、俺は壁に叩きつけられた。

 ぐはっ!

 痛みに耐えながら、俺は即座に左に跳ぶ。

 やはり、もう一体のゴーレムがとどめのロケットパンチを飛ばしてきていた。

 今度は素早く、右に跳ぶ。

 背後の壁に重い音と共に腕が突き刺さった。

 今のはほんとに勘だった。

 クッソあぶねえ。あいつら弱ったとみるや確実にとどめを刺しに来る。

 ゴーレムの腕が全部なくなったのを見て、グレートポーションを食べる。

 胃袋的に最大7つだ。あと、5つ。

 ゴーレムたちが黒い円の中に消えていく。

 「慣れてきたようなので、少し増やそうか。」浦島が言った。

 浦島の目の前の地面に十個の黒い円が出現した。

 「何体いるんだよ・・・。」

 「108体だ。」浦島は言った。

 まじか・・・。

 「心配するな。同時には54体までしか出さん。」浦島は言った。「時を戻して壊れたゴーレムを元通りにするのにも時間がかかるのだ。」



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