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桃太郎 学園編 桃太郎vs金太郎

 『黒田選手はおそらく棄権しますわね。彼は勝てない戦いはしませんから。』

 かぐや姫の実況が聞こえてくる。

 さっきから解説が的確過ぎて嫌だ。

 棄権して戻ってきた孝高はネネさんに言った。

 「相手が呪文を使ってくれれはワンチャン有ります。もし、武で押してくるようなら、少しでも疲れさせるか、ずっころばしの短節で足にダメージを蓄積させてください。そうすれば、桃太郎君が楽に戦えます。」

 「いや、ネネさん。そう言うのはいいです。」俺は言った。「ネネさんは自分の力がとのくらいジョージ先輩に通用するか試してください。別に、優勝なんて大きな意味はありません。せっかくの強敵です。僕達はチャレンジしましょう!」

 それに俺、次、負ける気しないし。

 よく考えたら負けてもかぐや姫が別のクラス行くだけなので俺的にはメリットしかない。ネネさん負けたら俺も負けようかな?

 「桃太郎君・・・。そうだね!私頑張ってみる!(`・ω・´)」ネネさんは明るく言った。「孝高君、いいかな?」

 「かまいませんよ。僕だって、負けるの嫌で勝手に降りてきちゃってますし。」

 「ネネさんで決めちゃいましょう!!」

 「ありがとう!頑張る!!」

 ネネさんが試合会場に上がった。

 「やあ、レディ。負けないよ。」金太郎が髪をかき上げた。

 「私も負けません!」

 『さぁ!世紀の一戦が始まる!!』

 『ずっころばしの名手ネネさんがどこまで食い下がれるか。見どころですわ。』

 実況が会場に流れた。

 「始め!!」

 金太郎が一気に距離を詰めてきた。

 「通りゃんせ!ずい!ずい!」

 ネネさんが通りゃんせから仕掛けた!!

 金太郎の踏み込んだ地面が少しだけ盛り上がり、少し金太郎はよろめいた。

 ずっころばし以外は少し苦手のネネさんだが、通りゃんせの短節は使い方しだいで大きな効果を生むことができる。

 そこを、ネネさんのマジックアローが襲う。

 「ほっ!ほっ!」金太郎の防御魔法陣がネネさんの矢をはじいた。

 うまい。魔法陣を正面を向けて出さずに斜めに出して矢を逸らすのか。勉強になる。

 「短節詠唱ができるのは君たちだけではない!」

 金太郎がついに自分の剣の間合いにネネさんを収めた。

 素早く切りかかる。

 ネネさんがひらりとかわしながら、「ずい!」と光の矢を放つ。

 金太郎がすっと半身になってその矢をかわした。

 あの距離から、ネネさんの矢をかわしてくるか。やるな。もしかしたら、魔法無しなら俺より強いかもしれない。

 金太郎が彼の愛剣、魔・叉刈りブレードを振るう。

 今度もネネさんはひらりとかわしながら「ずい!」と唱えた。

 どうだ!ネネさんは武力だって高いんだ。

 金太郎は再びネネさんの矢をかわした。

 ネネさんは距離を取ろうとするが、金太郎が許さない。

 「ずい!」金太郎が短節のずっころばしを唱えた。剣での攻撃にからめて来たのだ。

 ネネさんがギリギリでどちらもかわす。そして、かわし際に唱えた。「ずい!」

 しかし、ネネさんの反撃の矢も三度かわされる。

 金太郎の魔法の矢を無理にかわしたネネさんが思わず体勢を崩したのを見て金太郎が勝負に出た。

 金太郎は素早い連撃をネネさんに向けて繰り出した。そして、攻撃しながら詠唱を開始した。

 「通りゃんせ・・・」

 ネネさんがかわし際にマジックアローを飛ばす。「ずい!」

 金太郎が身をよじりながらネネさんのマジックアローをかわす。

 「通りゃんせ、」金太郎の詠唱は止まらない。

 さらに金太郎は詠唱を続けたまま攻撃を繰り出す。

 金太郎の攻撃をかわし際にネネさんが武器を振るいながら「ずい!」と唱えた。

 「ここはどこの、」

 ネネさんの攻撃はがむしゃらったが、詠唱をしながら剣を振るっている金太郎には有効だった。

 金太郎がネネさんの剣撃をかわすも少しバランスを崩した。

 ネネさんのマジックアローが金太郎の左腕を貫いた。

 「細道じゃ!」

 しかし、金太郎は左腕をマジックアローが貫通して行ったのを物ともせず、通りゃんせ二節を唱え切った。

 ネネさんの足元が大きく割れた。

 地割れに呑み込まれる寸前でネネさんが大きく跳ぶ。

 その瞬間、地面から岩の腕が二本伸びてきてネネさんの両足をつかんだ。空中ではかわせない。

 「ずいずいずっころばしごまみそずい!」一瞬狼狽したネネさんを金太郎は見逃さない。すぐにずっころばしを詠唱。

 それも、一節ではない、短6節だ。

 「ほっほっほたるこい!」ネネさんも慌てて防御魔法陣を自分の周りに広く展開。呪文が短い分ギリ間に合った。

 しかし、防御魔法陣が展開された瞬間、金太郎の叩きつけるような剣撃が一度、二度、魔法陣に落とされ、ネネさんの防御魔法陣が破壊された。

 そして、金太郎が召喚した十数本のマジックミサイルはまだ空中に漂っていた。

 「ま、参りました。」空中で足をつかまれたせいで地面にひっくり返ってしまったネネさんが、金太郎を見上げながら降参した。

 「おおおおおおおおおおお!!!!」

 うなるような歓声が会場を埋め尽くした。実況の声もかき消されて聞こえない。

 惜しみない拍手が二人に浴びせられた。

 ネネさんが礼を言うかのように観客席に手を振りながらベンチに戻ってきた。

 目が涙で潤んでいる。

 「ネネさん。お疲れさまでした。」

 「ふぇええええん。惜しかったよぅ( T□T)」

 ネネさんは俺に抱き着くとこらえきれなくなって泣き出した。

 そういえば、ネネさんって今まで棄権だけでちゃんと負けるのは初めてだったな。

 ネネさんの攻撃が当たる可能性を考慮に入れていた金太郎。

 攻撃が当たっても詠唱が止まらない可能性を考慮していなかったネネさん。

 この辺りは場数の差だ。

 「仇を取ってきます。」俺の肩に埋まって泣いているネネさんの頭を撫でながら俺は言った。「優勝しましょう!」

 「うん!」

 ネネさんが答えた。

 俺は試合場へと登って行った。

 かぐや姫を放出できないのは残念だが、負けるわけにはいかなくなった。

 ネネさんの頑張りを、みんなの頑張りをきちんと形にしてやらねば!

 考えてみれば一日に何度も気絶するのって拷問に等しい。

 それを、クラスのみんなは耐えてきたのだ。

 優勝くらい届けてやりたい。

 俺は、金太郎と向き合った。

 「やあ、桃太郎。」

 「ジョージ先輩。」

 「短節詠唱を広めたのは君だね?試験の時もやっていたものね。」

 「気づいてましたか。」

 「ホントは唱え損ねだと思っていたんだが、大したものだよ。」ジョージ先輩は感心したように言った。「短節詠唱と物理攻撃との組み合わせ。これこそ古式詠唱の実戦形式への最適解だ。」

 「いいえ、先輩。先輩がもしそう思っているのならば、あなたは私には勝てません。」

 「なにっ!?」

 「短節詠唱の本懐は速さや利便性では無いのです。」

 「・・・?どういうことだ。」

 「申し訳ありません。説明ができない。先輩には理解できない理にその真理があるのです。」

 「何を言っているのか解らないが、はったりをかけようというのなら無駄だぞ。そんな戯言に引っかかるほど私は甘くない。」

 「やれば判ります。」

 「双方、位置へ。」俺たちが話し始めたので審判が声をかけた。

 『さあ、泣いても笑ってもこれが最後です!!お互い大将戦。ゴールデン・ジョージvs桃太郎!運命の一戦が今始まろうとしています!』

 『ジョージ様、頑張って!!』

 かぐや姫め・・・。

 「始めっ!」審判の号令が飛んだ。

 金太郎がさっきの試合と同じようにこっちに突進してきた。

 俺は金太郎に向けて短節詠唱を唱える。

 「わた!」

 金太郎の身体が急に停まった。

 「なにっ!!」いきなり動けなくなって金太郎が慌てた声を出す。

  ―――短節詠唱の最大の長所は呪文が短い事ではない。

 「せん!」

 金太郎が魔法戦に切り替えようと詠唱に入ろうとしたのを見て、次の短節詠唱を終える。

 突然、声が出なくなって金太郎が焦る。

  ―――短節詠唱の最大の長所、それは・・・

 「りん!」

 試合場の地面から稲妻が飛び出し金太郎を襲う。

  ―――何を唱えているか判らないこと。

 「通りゃんせ、通りゃんせ!ここはどこの細道じゃ!」

 金太郎が稲妻で麻痺してる間に、古式二節をきっちり唱える。

 金太郎の両足の真下の地面が足の形にえぐれ、金太郎は膝まで地面にめり込んだ。

 「何をした!桃太郎!!」口のきけるようになった金太郎が叫んだ。

 俺は金太郎に人差し指を向けた。

 「もも!」

  ―――そう!短節詠唱ならば著作権をかいくぐれるのだ!!

 指先にエネルギーが膨大な集まっていくのを感じる。

 「金太郎!全力で防御しろ!!」俺は金太郎に向かって叫んだ。

 指先に集まっていく小さな白い光を見た金太郎が、慌ててほたるこいを全節詠唱する。

 金太郎の防御魔法陣が出現するのを待っていたかのように、俺の指先からエネルギー波が放たれた。

 金太郎が防御魔法陣の後ろで、手をクロスさせて耐える。

 「がぁぁぁああああっ!!」

 まばゆい光と衝撃が過ぎ去ると、そこには膝から先を地面につっこんだまま、仰向けに倒れている金太郎の姿があった。

 静寂。

 そして、審判が声を上げた。


 「勝者、桃太郎!1年下級クラス、優勝!!」


 歓声が一斉に上がった。

 ベンチからみんな飛び出してきた。

 ネネさんが飛びついてきた。

 受け止めようとするが、6歳の小さな体には大きすぎてそのまま後ろに倒れ込んだ。

 「優勝だ!!」喜久兵衛が大きな声をあげ、みんな喜びを爆発させた。


 『まさかの、結果に終わりました。優勝した1年下級チームには全国大会に行っても頑張ってもらいたいものです。』


 「えっ!?」

 途端にみんな我に返った。

 「全国大会・・・?」


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