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桃太郎 学園編 自主練

 英雄学校の授業が始まった。

 午前中は、座学と訓練が半々。

 午後は午前中に学んだことを生かしての自主訓練だ。

 校内の練習場は最上級クラスと上級クラスで使われてしまっているので、北東に少し離れた野っぱらで下級クラスは自主練をしていた。

 「ああーん、ダメだ!」喜久兵衛が頭を抱えた。「どうしても、ずっころばしが出ない!」

 「私も、二節唱えても矢が増えない・・・(´・ω・`)」

 最下位1,2,3位は並んで自主訓練をしていた。

 「喜久兵衛は『ほたるこい』を試してみないか?」俺は言った。

 ずっころばしって、魔法陣の召喚・矢の召喚・狙い・発射と色々なプロセスが必要で実は複雑だ。一方、防御魔法のほたるこいは固い魔法陣を召喚するだけの魔法だ。

 診断で、魔力が0だった喜久兵衛にはここから始めるのが良いだろう。

 「ほたる?」

 「そう。」一節だけ唱えてやる。「ほっほっほ~たるこい!」

 目の前に魔法陣が召喚された。

 「これが盾になるんだ。」

 まあ、喜久兵衛には魔法陣を盾になるほど固くするのは難しいかも知れないが、召喚するところまでならできるはずだ。

 英雄学校なんかに通わない巷の冒険者たちは、カリキュラムとか簡単さとか無視して、これで古式詠唱の練習をする。

 「よし!やってみる!」喜久兵衛が集中して唄う。「ほっほっほたる、来い!!」

 喜久兵衛の目の前に40㎝くらいの魔法陣が現れた。

 「やった!やった~あぁぁ~・・・。」と喜びながら気絶する喜久兵衛。

 MPも0って言ってたから、しゃあないか。

 でも、気絶しても魔法陣が消えないのは良いな。大きさも良い。

 魔法の顕現の仕方は人によって違い、この辺りの事は診断の数値では出てこない。これは喜久兵衛の才能だ。

 試しに浮かんだままの魔法陣を触ってみる。

 「おっ!」

 固い。喜久兵衛は数値以上の才能があるのかもしれない。

 ちなみに、昨日、望む生徒には能力診断が行われ、喜久兵衛は診断を行った。

 彼の能力は、武力1、魔法0、HP180、MP0だった。

 喜久兵衛みたいな子供でもHP180ってことは俺のHP8ってすごい低かったんだと知った。

 俺も自分の能力が1年でどのくらい成長しているかを知りたかったが、ここで能力がクソ高いことがバレると最上級クラスに飛ばされそうなので、注射が嫌いと子供っぽいことを言って逃げた。

 「私も、それで練習しようかしら・・・。」

 一方で武力1、魔力2、HP120、MP3の魔術の才能あふれるネネさんは、何故かずっころばしが下手だ。

 「う~ん。古式一節どころか3節も何回も唱えてるのに、なんとも無いのはすごいと思うんですけども・・・。」

 「矢が一本しか出てないからだよ・・・それに、その一本もすごく細いし。(´・ω・`)」

 こればっかりはどうしたものか解らない。何か原因があると思うんだが。

 「あの・・・ネネさんのマジックミサイル、ちゃんと強化されてますよ?」一人のクラスメイトが横からおずおずと話しかけてきた。「三節詠唱のほうが矢が3倍強いです。」

 たしか孝高とか言ったかな?高校生くらいのすこしナヨっとした子だ。

 「そうなの?(?_?)」

 「どうしてそんなことが分かるんです?」

 「実は僕、いろいろな人や物のステータスが見えるんです。」孝高は言った。

 出た!異世界チート定番能力!!

 「ほんとですか!?ひょっとして僕の能力も見えちゃってたりします?」孝高に訊ねる。

 「いいえ。」孝高が答えた。

 なんだ。大した能力じゃないのかな?

 「ムラマサ・ブレードの隠ぺい能力が高すぎて、桃太郎君の能力までは見えません。」

 めっちゃ見えてた!

 しかも、俺の知らないムラマサ・ブレードの能力まで。

 「その剣はもしかして伝説のあの剣なのですか?」孝高が訊ねた。

 「どうなんでしょう?むしろ、孝高さん判りませんか?」

 「隠ぺい能力が強すぎて確認できないですが、多分、本物なんじゃないかと思います。ここまで隠ぺいされたのは初めてですから。」

 この孝高、完全にチート野郎のようだ。

 「強さ三倍になってたの?」今度はネネさんが尋ねた。「でも、一本の時が弱いから、3倍になっても大したことないよね。」

 「いえ、一節の時も見た目が細いだけでエネルギーは他の人よりも強いくらいですよ。

 て、待てよ?

 もしかして。

 「ネネさん、一節のずっころばしを僕に向けて撃ってみてくれませんか?」

 「でも、危ないよ?」

 「魔法で防御しますので。」

 念のために、ほたるこいを2節まで唱える。それも短7節で魔法陣を7枚召喚し、前方に直線状に並べる。魔法陣も小さく絞って強度を高くした。

 「ここに向けてお願いします。」ネネさんに魔法陣を向ける。

 「うん、やってみるね。」ネネさんが呪文を唱えた。「ずいずいずっころばしごまみそずい。」

 針のように細い光の矢が放たれた

 光の矢は二枚の魔法陣を刺し貫いて、3枚目に刺さって止まった。

 「まじか・・・。」魔法陣って穴が開くこともあるんだ。

 「す、すごい。」孝高も絶句する。

 普通、ずっころばしで召喚された矢はマジックミサイルとよばれるが、ネネさんの召喚するのは命中したものを破壊をしない。貫通するのだ。さしずめ、マジックアローとでも言うのだろうか。

 「え?今のそんなにすごいの?(>_<)」ネネさんは困った様子だ。

 「二節詠唱で縦に並べた防御魔法陣を、一節詠唱のずころばしで半分貫いたんだから相当ですよ!」

 「そ、そうなの?えへへ( *´艸`)」ネネさんは褒められているのがようやく解かってとても嬉しそうだ。

 「3節も試してみましょう。」

 ここまで来ると興味がある。

 今、一節で3枚抜かれた。

 もし、ネネさんが成長して5節まで唱えられるようになったとすると、単純計算で15枚の魔法陣を貫通できることになる。

 一方、こっちはほたるこいを4節までしか知らない。たぶん続きなんて無いんじゃないだろうか?

 今の実力で、ほたるこいの4節を短14節まで分解する事ができる。だが、14枚の魔法陣では1枚足りない。

 今のうちから、対策を考えておかないといけない。

 「ほっほっほーたるこい・・・・

 4節目まで唱え終わる。短14節だ。

 14枚の魔法陣が目の前に列を伸ばした。

 「ずいずいずっころばしごまみそずい・・・

 ネネさんがずっころばしを唱え終えた。

 さっきとあまり変わらないやせ細った矢が召喚されてこっちを向いて飛んできた。

 ストトトトトト。

 小気味いい音と共に10個の魔法陣を貫通して、矢は11枚目の魔法陣で止まった。

 もう一節増やされたら防御できんかもしらん。

 ネネさん、ヤバいっす。

 「やったやった!ほんとに3倍強くなってる!!ヾ(≧▽≦)ノ」俺が戦慄しているとも知らず、ネネさんは無邪気に大喜びするのだった。



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