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43話 大天使

年末って大変です…。

お時間が空いたときにでもお楽しみ下さい!

タルトが企画した学校の開校の日。

既に数百人の子供達が集まっていた。


「くっくっくっ。

遂にこの日がやって来たわ!

レディ、パーフェ…じゃなくて準備万端よ」

「タルト…悪者っぽい…」

「いやっ、違うんだよ、リリーちゃん。

ここまで実現するのが本当に大変だったんだよ…」

「聖女様もお疲れ様です!

私も完成するのが、楽しみでした」

「オズワルトさんも色々と協力ありがとうございます!」

「いえいえ、これから我が町を支えていく子供達の為ですから、当然です!

では、そろそろご挨拶の時間です」

「えぇーー…、本当にやるんですか…?

私は本当ならまだ聞く側なのに…。

あぁ、校長の無駄に長い話が懐かしい…」

「さあ、行きましょう!

子供達が待ってます」


この後、校庭に子供達を集めて、タルトからのありがたーい話が始まった。

子供達の気持ちが良く分かるタルトは挨拶を簡潔にまとめて終えた。

その後はクラス分けされ、各々の授業が始まった。

タルトは役目を終えて校庭で、その光景を眺めていた。


「この光景、懐かしいなー。

みんな、元気でやってるかな…」


この世界に来て数ヶ月経ったが、元の世界の事を時々、考えてしまう。

友達の事、学校の事、家族の事、アニメの続き?など色々な事が頭をよぎり、寂しくなるのだった。

それでも、今の仲間に囲まれて何とか頑張れているのだった。


「おぉーい、タルト!

挨拶はちゃんと出来たかー?」

「タルトの事だから、また転けたんジャナイカ?」

「リリスちゃん、何で知ってるの!?

あの時の事は秘密にって言ったのに…。

今日は問題ないもんっ!」

「今日はハイヒールじゃねえしなあ。

その光景を見たかっ…んっ、何だぁ、この気配は?」

「何か分からないが、ヤベエナ…」


『マスター、物凄い魔力が高速で接近中です!!』

(久々だね、ウル!

何だか分かる?)

『私の事はどうでも良いのです!

何かは分かりませんが…その総量はマスターを越えてるかもしれません…』


この気配に気付いたノルンも急いで飛んできた。


「タルト殿、この気配は不味いぞ!

私の記憶が確かなら…いや、もう遅いようだ…」


ノルンは上空を見上げる。

その先には一人の女性が飛んでいた。

背中には白い翼があり、天使であることが分かる。

白いフワフワで柔らかそうな肌で、今までで最大の巨乳だと一目で分かった。

服も露出が多く、色香のある大人の女性に見えた。


「…どうして、貴方がここに?

…大天使ガブリエル殿…」

「ノルンさん、今、ガブリエルって言いました?

それって有名な天使じゃ…」

「タルトの言う通りダゼ…。

4人いる大天使の一人ダ…」

「これは不味いねぇ…。

光の最大戦力の一角とはなあ…」


ガブリエルと呼ばれた天使はゆっくりと校庭に降り立った。


「探したわよぉ、ノルンちゃん。

私はぁ貴方を気に入ってたのに、突然、いなくなるんですものぉ。

そしたら、人間の町にいて聖女と呼ばれる面白そうなぁ少女と一緒だなんてぇ」

「それは、タルト殿に希望を見いだしたからだ。

この長きに渡る戦争の日々を終わらせる為のな!」

「ふうん…確かにぃ、面白い町ねぇ。

人間と獣人、悪魔に鬼と…。

それでぇ、聖女様って貴方のことぉ?」


ガブリエルはうっすらと笑みを浮かべながら、タルトを見た。

タルトは背中に冷水を掛けられたように、悪寒を感じたのであった。


「私がタルトです…。

何か用でしょうか?」

「そおねぇ、見た目は普通の人間に見えるわぁ。

ノルンちゃんが言うようにぃ、どこかが特別なのかしらぁ?」

「普通の人間の少女ですよ。

ちょっと魔法が得意なだけです」

「そおぉ、後で試してみようかしらあ。

ところで、此処は何の施設なのぉ?

子供達が沢山いるみたいだけどぉ?」

「ここは学校といって、子供が生きる術を学ぶ場所です」

「がっこう…ねぇ、タルトちゃんが考えたみたいねぇ。

まあ、生きる術だけなら良しとしましょうかしらぁ」

「ありがとうございます。

それでは、問題ないって事で良いでしょうか?」

「そうはいかないわぁ。

タルトちゃんの事を調べたけどぉ、脅威になるかもしれないのぉ」

「ガブリエル殿!

この方が問題ないことは、ノルンの名に賭けて誓おう!」

「それでは駄目だわぁ。

ノルンちゃんが洗脳されてるかもしれないでしょおぅ?

私が直接、見定めるわぁ」

「皆さん、警戒してください!

来ます!!」


タルト達は一斉に戦闘体制に入った。


「あらぁ、可愛らしい服装ねぇ!

お姉さんと良いことしなあい?」

「し・ま・せ・ん!

そんな趣味はありませんからっ!」

「そぉ、残念ねぇ、じゃあ、行くわよぉ。

直ぐに死なないでねぇ、光の幻想シャイン・ファンタズム


ガブリエルは悠々とゆっくり、こちらに近づいてくる。

見た目は完全に無防備だった。


「舐めてんのかあっ!

すぐに終わらせてやるっ!

壱の太刀、春霞!」


桜華は一瞬で間合いを詰め、奥義を放つ。

だが、その一撃はガブリエルの体を捉えたが手応えは全くなかった。


「怖いわぁ、幾つも剣が分かれて見えたわよぉ。

あれじゃ、避けれないじゃなあぃ」

「ちっ、避ける気さえ無かったくせに」

「こっちも行くわよぉ、光の鉄槌シャイニングクラッシュ

「何だあ、この遅い光の玉は?

避けてくださいって、言ってるようなもんだろう!」


桜華は飛んできた玉を上半身を反らして、大きく避けた。

桜華を通り抜けたと思ったら、腹部で爆発が起こり、派手に吹き飛んだ。


「桜華さんっ!」

「何故ダ、桜華は完全に避けてイタゾ…」

「くっ、やはり相当な強さだ…。

ガブリエル殿!話し合いで解決出来ないものか?」

「それは無理だわぁ、精々、頑張ってねぇ」


ガブリエルはそう言うと、笑みを浮かべながら進み始めた。


「オイッ、ノルン!

同時に仕掛けるゾ!」

「承知した、リリス殿」

「タルトは観察して謎を解明してクレ!」

「うん、分かった。

二人とも気を付けてね!」

「「行くぞ・ゾ!!」」

「あらぁ、天使と悪魔が仲良く攻撃だなんて感激だわぁ!」


二人は左右から挟み撃ちの形で仕掛けた。

リリスの手刀とノルンの剣は完全にガブリエルを捉えている。

しかし、すうっと体をすり抜けていってしまう。


「残念だわぁ、これは贈り物よぉ」


光と共に二人がいた空間が爆発した。

その爆風で二人は吹き飛ばされた。


「これで、あとぉ、一人だわぁ。

タルトちゃんはもっと粘ってねぇ」


(どう、ウル、何か分かった?)

『おそらくですが、推測できました!

対応策としては…』


「どうしちゃったのぉ、黙りこんじゃってぇ」

「ちょっと考え事をしてただけです。

今度は私が相手です!」

「ちょっとぉ、本気ぃ?

目を閉じちゃったわぁ、この子ぉ」

「気にしないで下さい、行きますよ!」


タルトは低空に真っ直ぐに飛んでいった。


「じゃあ、その勇気を評して贈り物よぉ!」


無数の光の玉がタルトを襲う。

しかし、タルトは意とせず、そのまま直進した。

玉が直撃したと思った瞬間、タルトの体をすり抜けていった。


「今度はこっちから行きますよ!

マジックバレットォ!!」


タルトはガブリエルではなく、遥か後方へ魔法を放つ。

爆発音と共にガブリエルの姿がふっと消えた。


「やはり見えていたものは、全て幻でしたか。

目で見たものに惑わされず、魔力を探知すれば簡単ですね」

「やるわねぇ、タルトちゃん!

この魔法を破られたのは、何百年ぶりかしらぁ」


ガブリエルはタルトが狙ったところにいた。

しかし、タルトの魔法でダメージを負った様子はなく、相変わらず凛と佇んでいた。


「さすがタルトだぜぇ、良く気付いたな!」

「その代償にしては、スゲエ痛かったゼ…」

「よくやってくれた、タルト殿…。

勝負はこれからだな…」


先程のダメージから立ち直り、三人が駆け寄ってきた。


「すぐに治癒しますね!」

「助かった、これでもう一戦行ける!」

「あらあ、治癒魔法も使えるのぉ?

便利ねぇ、じゃあ、小技じゃなくて大きな贈り物をあげるわぁ」


ガブリエルは片手を挙げると上空に光の玉を作り始めた。

その大きさは昔、シトリーの火の玉より遥かに大きかった。


「これが直撃したら周辺も吹き飛んじゃいます!

私が全力で迎撃します!」


タルトも即座にステッキを構え、魔力を込め始めた。


「タルト殿、微力ながら私も協力しよう!」


ノルンも両手に魔力を溜め始めた。

その手のひらには圧縮された魔力が光輝いている。


「うちらも出来ることをやるかねぇ。

斬れるとは思わないが、刀で受け止めてやるくらいはするか!」

「アタシも付き合うゼ!

一緒に最前線に行こうゼ!」

「はっはっはっ!

良いコンビになれそうだなあっ!」


その光景を笑みを浮かべたまま、ガブリエルは見ている。


「そろそろいいかしらぁ、行くわよぉ。

光の巨鎚シャイニングインパクト


挙げていた手を軽く動かすと、巨大な光玉が動き出した。


「皆さん、迎撃します!

マジッッッッック…バスタァアアー!!」

「光の鉄槌!!」

「巫覡!」

闇の一閃(ダークフラッシュ)!」


お互いの必殺技が衝突する。

その衝撃で周囲の物が破壊される。

四対一で何とか拮抗しているようだった。

いや、ガブリエルにはまだ余裕の表情をしている。


「ぐぬぬぬぬ…押し返せない…」

「四人がかりでこれほどとは…」

「くぅ…気を抜くと一瞬で吹き飛ばされそうだぜ…」

「チッ、大天使とは強エナ…」

「やるわねぇ、これを止めるなんてぇ。

もうちょっと力を込めちゃおうかなぁ」


ガブリエル側が少しずつ押し始めた。


「100%中の100%ぉ!」


タルトは更にステッキに力を込めた。

少しずつだが押し返してるのを感じた。

しかし、その瞬間、ふっと光玉が消えた。


「なっ!?

はあ…はあ…一体何を…?」

「もう、満足したわぁ、だからぁ、帰るわねぇ」


ガブリエルはウィンクして、そう言い残すと飛び立とうとした。


「待ってくださいっ!

貴方の目的は何だったんですか?」

「あらぁ、最初に言った通りよぉ。

ノルンちゃんに会いに来たのとぉ、タルトちゃんを見定めに来たのよぉ」

「タルト殿をどう報告するつもりだ?」

「別にぃ。

脅威でもない只の人間とでも言っておこうかしらぁ。

こんな面白い子は勿体ないわぁ」

「助かった…と考えて良いのですか?」

「他の大天使に睨まれないようにしてねぇ。

それともっと強くなりなさあい。

あぁ、そうそう、鬼が怪しい動きをしてるから、気を付けてねぇ。

ではぁ、またねぇ!」


ガブリエルは高速で飛び去っていった。

残されたのは満身創痍のタルト達であった。


「一体、何がしたかったんでしょう…?」

「ガブリエル殿は気まぐれで有名なのだ。

本当の思惑は誰にも分からない」

「あんなに強ええのが、あと三人もいるのかあ。

もっと強くなんねえとなあ!」

「全くダ…、アタシ達ももっと強くなれるハズダ!」


(それにしてもガブリエルって名前は…。

有名な天使の名前だけど別世界でもピッタリ、一致するものなの?)


タルトは一人、違う問題に頭を悩ませていた。


周囲に何もない校庭だった為、被害は最小限に留まった。

この襲撃の事は公には秘密となった。

味方である大天使に攻撃されるなんて、悪い印象しか与えないのである。



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