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学園祭の準備です

滑り込みで文化祭のシーズンに間に合いました。

宜しくお願いします


11/11タイトルと文章内の表現を文化祭→学園祭に変更しております

誤字報告ありがとうございます。

シュアリリス学園も学園祭の季節になりました


「ええっ?飲食店は一学年2組までなの?」


菜々が頭を抱えた。


1-Sの教室はどよんとした雰囲気に包まれた。


「で、うちの『執事とメイドカフェ』は出店許可が下りたのよね?」


菜々がギロッと笠松君を睨むと笠松君はひぃ…と小さく悲鳴をあげた。笠松君と一緒に出店申請に行って来た高森君がオドオドとした様子ながらも声を上げた。


「そ、それが…その…。すでにB組が『執事喫茶』の出店申請をしているからコンセプトが似てるって、会長に…却下されて…」


私は菜々を見て、萌ちゃんと花音ちゃんを見た。学園祭実行委員に任せていられるかっ!


「っしゃー!私達が乗り込むか!」


私達は猛ダッシュで生徒会室に乗り込んだ。


生徒会室には次期生徒会役員のメンバーがいた。


因みに我がシュアリリス学園は生徒会役員の選出基準は指名制と推薦制で選挙とかで決まるものではない。


本当、選挙とかなくてよかったよ…下手すりゃ海斗先輩から選挙のウグイス嬢をさせられるとこだった。


「お~?何だよ嫁ちゃん」


筋肉王者、旭谷祥吾先輩がパソコン作業をしながらこちら見た。


「旭谷先輩、お忙しい所失礼致します。学園祭の出店申請についてですが…」


「おお?カフェだったか?悪いがB組が執事喫茶を先に申請しているから、同類の店は許可できんなぁ~」


そう言ってニヤッと笑った旭谷先輩の魔質が若干澱んだ…。これは…?


「先輩、差し支えなければそのB組の申請日いつか教えて頂けますか?」


旭谷先輩の魔質がまた澱んだ…これはこれは?


「先週の土曜日だが?」


「体育祭当日?!」


菜々が声を上げると、旭谷先輩は早口に


「別に早く出す分には違反ではないよ」


と言い放った。私は出来うる限り旭谷先輩を上から見下ろしながら


「でしたら、飲食店の枠で1-Sの申請受けてもらえませんか?近日中にコンセプトを決めて改めて申請しますので」


拒否はさせないぞっ!と魔圧を漂わせながら言った。


何も感じないはずではあるが、私のただならぬ気配に若干ビビったのか旭谷先輩は、隣で書類を見ている邑岡先輩を見た。


「ハルどうしよ?」


邑岡先輩は私達をチラ見してから申請の書類を何度か見てニッコリと微笑んだ。


「明日までにコンセプト提出してくれたらいいよ?その代わり期限を過ぎたら受け付けないから」


「分かりました…」


私達はまたダッシュで一年S組に帰った。


「どうだった?」


とクラスメイトに取り囲まれて取り敢えず、仮申請で『飲食店』というコンセプトは受け取ってもらえたが明日までに明確な申請を出さなければいけないと皆に伝えた。


「体育祭当日にB組が申請出してるなんて、早すぎない?」


「B組ね…。ね、もしかしてこれ旭谷先輩の指示じゃない?優勝逃したから」


「マジか!」


うん…私もそう思うよ。何故なら申請日を聞いた時に旭谷先輩は魔質を澱ませて非常に動揺していたからね。


「筋肉王者…旭谷先輩は文化祭でリベンジ狙ってくるね…こっちは米30キロがかかっているんだ、負けられないよ!」


「すげー麻里香。あっついわ!」


「麻里香ちゃん家、お米の消費量が半端ないものね…」


「主婦は辛いね~」


といじられながらも、皆で飲食店のカテゴリーで文化祭向けなお店を決めることになった。


まずは飲食店をするにあたって注意事項があった。


その1、教室で火気厳禁。その2、調理の一切は家庭科室で作った物を使用する。


「基本は作り置き食品の提供になるよね~」


「カフェがダメなら茶屋は?」


と、萌ちゃんが言った時に何故だか皆が私を見た。


「麻里香ちゃんおはぎ作るの得意だよね?」


あれ?


「そうだ、そうだよ!洋風がダメなら和風だよっ!いっそのこと、町娘茶屋か十二単茶房とかは?」


「十二単は動きにくいよ~」


という訳でまた生徒会室に走り込んで『江戸っ子茶屋』で申請し許可が出た。


当日までにレシピをコピーして裏方の調理班の皆に配って…ああ、そうだ三色団子とかも作っちゃう?とかブツブツ考えながら、帰路につき家に帰ると夏鈴ちゃんが出迎えてくれた。


「マリ姉おかえり~」


「ただいま~。今日幼稚園行って来たの?どうだった?」


「うん、楽しかったよ!帰りはゆーくんが迎えに来てくれたし」


ゆーくんとは悠真のことである。夏鈴ちゃんはこの一ヶ月で随分と肉付きが良くなって性格も明るくなった。腹違いの兄弟の私達と従兄弟と同居という非常に複雑な生活環境の中にも順応してきていた。


私は自分の部屋に入ると(今は夏鈴ちゃんと彩香の女子3人の部屋だ)制服を脱いで部屋着に着替えると、階下に降りた。


「ママ~うちの高校の学園祭、和風喫茶のお店出すことになったんだ~」


台所でだし巻き卵を焼いていたママは嬉しそうな顔で私を顧みた。


「和風?じゃあ和菓子を出すの?」


「そう~おはぎを作ってくれって皆に頼まれたぁ~」


私はママが作っている夕飯のおかずの品目を確認した後に、小松菜の胡麻和えを追加で作ることにした。


「学園祭の準備も楽しいよね、懐かしいわぁ。そうだ、麻里香の学校は二日目が一般開放だったっけ?」


「そうだよ。申請すればパスを発行してくれるんだけど、これがさ~去年、ネットオークションでパスが出品されてたらしくって今年から門の所でパスを持ってても身分証の提示が必要になったから、身分証明書とか忘れずに持って来てね」


「ネットオークション?!へぇ~今時ねぇ~そこまでして文化祭に入りたいのかしら?」


ママが鳥のつみれ汁を作りながら苦笑いをしている。


「うちは特殊だからね、お金持ちのご子息ご令嬢が在籍しているでしょう?その方々と縁を持ちたい第三者が入り込んでいるのはよくあることなんだって」


「何だか怖いわね~セキュリティ対策大丈夫なの?」


「その辺りは海斗先輩と空手日本一が見回り強化してくれるらしいから」


そうだ、筋肉馬鹿と(彼氏)筋肉王者(旭谷先輩)が揃っているのだ。不逞の輩など見つけ次第袋叩きにしてしまうだろう。


その後、夕食を食べながら夏鈴ちゃんの初幼稚園登校のアレコレを聞きつつ、和風喫茶のメニューをママと考えたりして楽しく過ごした。


次の日


和菓子のメニューは三色おはぎと苺大福と豆大福はどうだろうかと、クラスの皆に聞いてみると皆から大絶賛を受けた。


私はレシピを調理班の皆に配った。ああ~テンション上がるな!


「そういや、旦那のクラスは何の出し物なの?」


と、同じく調理班になった菜々に聞かれて海斗先輩とのやり取りを思い出しながら


「軍人カフェだって」


と答えると、調理班の女子の皆が食いついた。


「軍人?!やっばっ!めっちゃ萌える!」


「当然、海軍の衣装だよね?!」


「え?さあ…?」


「栃澤先輩と邑岡先輩以外の男子が、またまた水兵Aと歩兵Bばっかになるじゃん!あははっ!」


と菜々が大笑いしていたけど、萌える~と言っていた柿沼さん(ミリタリーオタクか?)が「甘いよっ!」と菜々に詰め寄った。


「軍服を着用するだけで、二割は男前に見えるというコスプレ界の常識を知らないの?!」


知らないよ?


「そうだね~軍服は今度も津田川先輩が準備してくれるだろうし本格的な衣装になりそうだね」


「私、黒い軍服で金の刺繍がついている軍服カッコイイと思うな~」


「何それ!最高!」


とか萌ちゃんと花音ちゃん、柿沼さんがキャッキャッしている姿を横目で見つつ…。私は菜々と和菓子の材料費の計算をしていた。


菜々は何かニヤニヤしている。どうしたの?


「楽しいね、麻里香。私ね…こんなお金持ちの子がいっぱいいる学校に入学して失敗したかな…と最初は思ってたんだ」


「菜々…」


「でも麻里香と友達になれた。萌や花音とも友達になれた。楽しいよ、学校」


菜々はリスみたいなクルンとした大きな黒目を少し潤ませている。


「…うん、私も菜々と萌ちゃんと花音ちゃんと友達になれて…良かったよ」


ああ、青春だ。これぞ、青春だ!


その日から学園祭の準備に大忙しだった。流石に海斗先輩も忙しいらしく、メッセージは毎日送って来るけど、一日会えない時もあった。


学園祭の前日も夜まで、和菓子の餡子を作っていた。夜遅くなったので、萌ちゃんのお家のおべぇんつさぁんで送ってもらった。帰りの車中で萌ちゃんが、菜々と似たようなことを言いだした。


「私、シュアリリス学園に来てこの学年が一番楽しいかもしれない。体育祭も楽しかったけど、学園祭も準備だけでも楽しい」


思わず菜々と微笑み合った。


「明日の学園祭頑張ろうね!」


皆で拳をぶつけ合った…さて、学園祭当日。


朝から家庭科室で和菓子を黙々と作る私達だったけれど、柿沼さん(軍服フェチ確定)がおはぎを作りながらずっとソワソワしていた。


「カッキーどうしたのよ?」


菜々が聞くと柿沼さんが私の方を見て


「麻里ちゃんは栃澤先輩のコスプレは見てないの?」


と聞かれた。コスプレ…ああ、海斗先輩の2-Sがする軍人カフェのね。


「うん…一度どんなデザインですか?って聞いたけど、内緒って言われた」


カッキーこと柿沼さんは辺りをキョロキョロと見た後に私の方へ顔を近づけた。


「実は2-Sに私と同じくフェチ仲間の先輩がいるんだけど、萌え滾る!って意味深なメッセージが一昨日送られてきて…。恐らく栃澤先輩&邑岡先輩の御二方のコスプレのことだと思うんだけど…」


萌え滾る?へぇ…。と思っておはぎをこねていたら…家庭科室のある廊下の向こうから凄い悲鳴が連続で聞こえてきた。


「な…何?」


「何か出たのかな?」


で…出た?もしかして黒い…悪魔?!怖いし、今はやつの存在は不衛生すぎるよ?!


そして家庭科室の扉がガラリと開き…


「お~朝からご苦労だな。」


と、ナキート殿下が入って来た…?えぇ?!


「ギャアアアア!」


私が驚きの声を上げる前に、カッキーやら菜々やらその他、家庭科室で食材の調理をしていた女生徒の皆さんの悲鳴でものすごいことになっていた。


よ…よく見たら金髪とカラコンをつけている海斗先輩…だけど、来ている軍服は軍の式典の時や私…マリアティナとの婚姻の時に着用されていた黒地に金糸の刺繍があしらわれた…モッテガタード軍の正装に似ている…ほぼそっくりだ。


「先輩っ先輩…しゃ…写真…」


「おおっいいぞ、ドンドン撮れ」


興奮状態の柿沼さんと他の女子達が悲鳴を上げながら海斗先輩のナキート殿下コスプレの写真を撮っているが、私はそれどころではない。


ナキート殿下を思い出して…涙が溢れてくる。目の前に海斗先輩がいるのだけど…でもナキート殿下本人の姿ではないし…嬉しいやら懐かしいのと、やっぱり当時のナキート殿下に会いたい…とかで心の中がグチャグチャだった。


調理用にマスクをつけていて口元を隠すことが出来て良かった。さり気なく術を唱えて消音魔法を自分に使い、泣き顔を見られたくない…と直感型を発動して何かの魔法を顔の周りに使った。そして深呼吸を繰り返して涙を引っ込めようと頑張りながら、おはぎの制作に精を出した。


ひとしきり騒いだ柿沼さん達は写真を撮り終わると、私が作り終わったおはぎを教室に運んでくれた。自動的にコスプレ海斗先輩と私が家庭科室に残っていた。海斗先輩は改めて私の前でピッと姿勢を正して立ってくれた。


「どうだ?懐かしいだろ」


「はい、驚きました」


海斗先輩は私の周りに魔法が使われているのに気が付いたようだ。少し眉間に皺を寄せた後、私の頬の近くで術を使った。解術したんだ…。


「…っお前泣いて…」


泣き顔を海斗先輩に見られてしまった。慌ててハンカチで涙を拭う。


「すみません、懐かしくて…」


「そうか…喜ばせようとしていたが、泣かせるつもりはなかった」


綺麗なブルーのカラコンの海斗先輩の瞳を見た。不思議だ…顔はそれほど似ていないけど、根本的なものが本人だからか、こうやって似たデザインの軍服を着ていると似ている…本当に似ている。


「ナキート殿下がそこに居るみたいで、ナキート殿下に会いたくなって…変ですね、海斗先輩本人なのに…」


海斗先輩は困ったように微笑んでいる。


「何だか自分なのに、自分に負けたみたいで悔しいな~まあ仕方ないか、ナキートは男前だしな!」


海斗先輩はそう言いながら作り終えた苺大福を入れた木箱を持って1-Sの教室まで一緒に行ってくれた。


そして軍服先輩がS組の教室に入るなり、準備中の我がクラスの生徒から大絶叫と大絶賛が巻き起こった。何故だか、男子生徒も必死に先輩の写メを撮っていた。


「皆、騒ぐな。準備は出来たのか?後で祥吾と巡回で回って来る。もし、不逞の輩を見かけたら即刻通報するように、よいな?」


「ぎょ…御意!」


すっかり昔のように叫んでますな…。つられて笠松君が勢いよく返事をして直立不動になっている。


「栃澤先輩…なりきってるねぇ~」


いや、あれが地なんですよ、菜々さん。


「変態が鳴りを潜めてすっかり軍人さんだぁ」


元々軍人さんなので…変態はこっちの世界に来てから身に付いた?オプションです…萌ちゃん。


「変態をも隠し通せる軍服パワー恐るべしっ!」


何気に酷い言い方だね…花音ちゃん。


海斗先輩はそう言ってまた敬礼してから教室を出て行った。


やっぱりさ~何気にナキート殿下が一番、異世界生活を満喫しているっていう私の読みは、もはや間違いないわ。


めっちゃ生き生きしてるよね~。


さて、茶屋を開店しますか!私はユニフォームとして準備した着物に着替えるべく空き教室に移動した。


学園祭一日目スタートです。



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