学園祭始まりました
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「へいっらっしゃい!」
1-Sの男子の呼び込みの声が教室内のあちこちからあがる。
『江戸っ子茶屋』は大盛況だった。こっちも軍服に負けてたまるか!とクラスの男子に岡っ引き装束やめ組の火消しっぽいコスプレをさせたのが功を奏した。
「コスプレは二割男前に見せてくれる魔法の衣装だね!」
まさに萌ちゃんの仰る通り。
「なあに言ってんの、元々日本人のズドンとした体形に似合うのが和装なんだから、似合って当たり前!」
菜々…クラスの男子が睨んでますよ?
「確かに…こっちには目玉になる若殿とか、斎藤〇とか沖田〇司とかいないのが痛いよね~。」
柿沼さんが、日本茶を準備しながらボヤいている。た、確かに絵になる江戸っ子イケメンはいないけど…。
「うちのメインは花より団子でしょう?」
「上手い!花音ちゃん!」
その場にいた女子が拍手を花音ちゃんに送る。
そう、花より団子…和菓子が大好評過ぎて、売れに売れて追加の和菓子の材料を男子数名と担任の橋本先生が今、慌てて買い出しに出てくれている状態だ。
当然、調理班に休みなんて取れるはずもなく、海斗先輩からの、今どうしてる?休みはいつだ?等々のウザメッセージはすべて
「忙しくて無理です」
で済ませている。とか言っている間にも、またメッセージが入ってきた。
『祥吾と見回りも兼ねて茶屋に行く』
私は日本茶を準備していた周りの皆に聞こえるように、少し声を張り上げた。
「今から閣下が来るよ!」
柿沼さんがきゃあ!と悲鳴を上げた。
閣下とは…柿沼さん、カッキーの萌えが高じて呼び出した、軍服先輩のあだ名である。どう考えても一般人ではない威風堂々とした軍服姿の海斗先輩にいたく感動したカッキーが
「閣下!」
と呼び出したのがきっかけだ。そんな私はどさくさ紛れに殿下と呼んでいる。
そして廊下から悲鳴が聞こえてきた。
「来た来た…」
「まるで○ジラだね…。逃げ惑う悲鳴じゃなくてアレに近づこうとする悲鳴だけどね」
萌ちゃんがささっと教室の戸口に移動した。おおっ私も真似しちゃおう。
教室の入口で来訪を待つ。そして教室の入口に海斗先輩と……アレ?王子様が現れた。
「なっ…旭谷先輩?!」
何だその、昔のナキート殿下みたいな王子様の装いはっ?!
「どうだ〜?嫁ちゃんよ!うちのクラスは演劇をするんだよ、講堂に皆も見に来てね!」
フワッと紺色のマントをはためかせてクルリと一周回った旭谷先輩に女子達が悲鳴を上げた。
ふわ〜っこれはっ!閣下(元殿下)と王子様(王者)、この2人でこの格好で校内の巡回してたんでしょう?とんでもない破壊力と宣伝効果だね。
「麻里香、菓子と茶を頼む」
どかっと椅子に座った海斗先輩は被っていた軍帽を脱いだ。そう…今まで帽子を着用されていたのだ。
「きゃああ!」
また悲鳴があがる。動くたびに悲鳴…。
「やっぱり、軍服には軍帽と白手袋よね!萌え度が上がるわ!」
そうですか…そう言ってカッキーがウキウキしながら軍人様と王子様にお茶と三色おはぎを出している。
そうこうしている間に橋本先生と男子生徒が戻って来たので、私達は家庭科室に調理に向かった。あれ?海斗先輩ついて来るの?
「二年の教室に戻っても俺は給仕も出来ないし~携帯ばかりいじって役に立たんから、入口に立っていろ…とハルに言われたが…」
「…が?」
「退屈で抜けてきた」
「おいっ!」
仮にも元国王陛下にツッコんでしまった。
「もっと2-Sを学園祭でも優勝させようという気概は無いのですか?」
私と一緒に家庭科室の中に入り窓際の椅子に腰かけて軍帽をクルクル回している海斗先輩は
「無いな」
と、きっぱり言い切った。すごいな…言い切った。
「そもそも学園祭という行事がここまで対外的に行われるようになったのは、俺が生徒会から学園に働きかけしてきたからだ。学園生活を充実させて…いずれここに入学してくるであろう麻里香を喜ばせる為だけに俺は心血を注いできた。だから自分のクラスが勝とうが負けようが、まあいいかな?」
「その割には体育祭は張り切ってましたね~?」
と、もち米をおひつに移している菜々が聞くと海斗先輩はニヤッと笑った。
「体を動かせる勝負事は別問題だ。それに祥吾が俺のライバルとして良い働きをしてくれるからな。」
「勝手にライバル扱いしちゃってるよ」
「旭谷先輩いい迷惑だね…」
と萌ちゃんと花音ちゃんが囁き合っている。2人に激しく同意です。
と言いながらも海斗先輩はすぐに戻って行った。なんだかんだ言って、負けず嫌いだし友達想いなんだよね。きっとお昼からの旭谷先輩の演劇を見に行ったに違いない。
さて私達も昼からも頑張りますか。
その日の夜、私は久々に自身に回復魔法をかけていた。大福を包むのがこれほど重労働だとは思わなかった。腕と背中が痛い…。キッチンでぬか床をかえしている由佳ママに声をかけた。
「ママ~腕と背中が痛いっ」
「あらら、和菓子作るのも体力勝負ね…はいっ湿布」
由佳ママは引き出しを開けて湿布を渡してくれた。
「うお~!背中に貼りたいけど、手が届かんっ!」
由佳ママからもらった湿布を背中に貼ろうと四苦八苦していると、走り寄って来た夏鈴ちゃんと彩香が貼ってくれた。
「ひやあ~冷たい~効く!」
おまけに悠真が肩を揉んでくれる。
「マリカ明日もあるんだろ?大丈夫?」
優しいな、うちのチビ達は…。くぅ~!
「明日皆で来れるの?」
「真くんもわざわざ会社休んで行くんだって~。やけに楽しみにしてるよね」
そうだった、由佳ママの言葉に思い出した。真史お父さんは制服フェチ疑惑があるんだった。
それにしてもちょっとそれ別の意味で怖いけど?まさか女子高生に何か変態的なことを致したりしちゃったりの方のフェチじゃないよね、お父さん?
「そういえば栃澤君のご両親もいらっしゃるのかしら?結構…個性的な方よね?」
由佳ママは言葉を濁しておられますが、これもうっかりしていたよ。元祖一眼レフを持ったおじさんが堂々と来賓として侵入し、また盗撮をしてくるのでないか…ということを、すっかり忘れていたよ。
「シュアリリス学園のラオウが叩き出してくれないかな…」
ラオウとは…担任の橋本先生が旭谷先輩をそう呼んでいることで皆も呼んでいるあだ名だ。何でも橋本先生世代のお兄さん達の心を激しく揺さぶった少年漫画の主人公の兄で宿敵(と書いてライバルと読む)の強面のキャラクターの名前らしい。
検索してラオウの画像を見たけど…旭谷先輩、怒るんじゃないかな?あんな規格外の馬に乗っているおじさんと一緒にされちゃあさ~。
次の日
今日は学園祭の一般開放の日だ。朝も早くから真史お父さんはシュアリリス学園の催し物のタイムスケジュールの確認に余念がない。
「麻里香、劇は何時からだ?」
「二時からだよ」
「うん、よしっ」
お父さん…やっぱり妙に気合が入っている。
私は悠真にカーディガンを羽織らせている翔真の横に近づくと耳打ちした。
「お父さんが女子達の制服写真を不必要に連写していたら私に報告して…」
「どうしてだよ?」
「お父さん、制服フェチっぽいんだけど同級生のプライバシー保護の為に後で画像を消去するのよ!」
翔真は顔を引きつらせた。
「おっさんが制服写真を見てニヨニヨしてんの想像しちゃったじゃないか…おえっ」
私と翔真は固く頷き合った。変態の芽は早いうちに摘んでおかなければっ!
さてさて、シュアリリス学園に登校したらまずは家庭科室に直行だ。朝からもち米を研ぎ、炊飯ジャーにセットする。菜々、カッキー…と順番に家庭科室にやって来て準備を手伝ってくれる。
「麻里ちゃんのご家族は見に来られるの?」
とカッキーに聞かれた。
「うん一家総出で来るよ」
「彩香ちゃんと悠真君も?」
と萌ちゃんに聞かれて笑い返した。
「今は叔父さんの子供、従姉妹の夏鈴も預かっているから女の子が増えてるよ」
「うわ~え~と、ということは麻里香ちゃんと合わせて6人兄弟か!」
とか、準備をしながら楽しく会話をしつつ苺のヘタを取っていく。よし、筋肉痛も治っている。
今日も頑張るか!
さて本日も『江戸っ子茶屋』は大繁盛だった。前日に生徒達からの口コミを聞いたのか訪れるお客様が「昨日食べて美味しかったと言ってたから買いに来たのよ」というご父兄が多数ご来店された。
本当に有難いけど、休憩も取れないほど忙しいです…。
本日も朝から順調に海斗先輩からウザメッセージが届いています。
『本日も大変に忙しゅうございます』
とだけ返しておいた。
お昼前に篠崎家がやって来た。
「ねえね~!あっモッちゃん~カノちゃん、ナーちゃん!」
彩香が叫びながら駆けて来るのと一緒に夏鈴ちゃんも駆けている。
「アヤカ!カリン!走らない!」
悠真が後ろで怒鳴っているけど、2人は転がるように私と菜々の側に駆け込んだ。
「きゃあ、可愛い!妹さん?」
チビ達はあっという間にS組のクラスメイトに取り囲まれた。
翔真が和真と真史お父さんと現れた。あれ?由佳ママは?
「ママは校庭のマルシェで売っている野菜を買いに行ってるよ」
由佳ママ……。こんな所でも主婦魂素晴らしいです。
「今の所、不審な動きはないよ」
翔真が私にコソッと耳打ちをしてくれる。チラチラと真史お父さんを見ると若干ニヨニヨしながら教室の中を見回してはいるが…まだ許容範囲だ。
チビ達はお兄さんとお姉さんに囲まれて苺大福を食べている。皆楽しそうだ。
「真史さん、来ていらっしゃいましたか!」
あ…やっぱり、魔力の気配を読んで海斗先輩がやって来ましたね。流石ストーカー…。
「あ…栃…おおっ?!おおっ!それ…カッコいいね!」
真史お父さんは海斗先輩の軍人スタイルを見て、いきなりテンションを上げてきた。しかも海斗先輩の写真を撮っている。これはもしや制服全般のフェチなんだろうか?思わず翔真を見た。翔真も苦笑いを浮かべている。
「あ~カーちゃん!」
和真が海斗先輩に手を伸ばしたので、海斗先輩は笑顔で和真を抱き抱えた。
「和真も豆大福食べるか?」
「あーい!」
軍人さんと赤ちゃん…これがベストショットだと思ったのか、一斉に女子や真史お父さんまでもが写メを撮っている。
「うぜー」
翔真が呟いているが、昨日からの恒例行事なので見逃して欲しい。すると…。
「海斗!」
男の方の声がして皆が振り向いたそこには…海斗先輩のウザ兄、隼人さんが立っていた。ああ、やっぱり来ちゃったか…。
「今日は両親が仕事でね~俺が撮影係なんだ!ホラッ、麻里香ちゃんと海斗も寄り添って…」
「結構です。」
「つれないっ!海斗ぉ…お前の紫陽花と少女がつれないよぉぉ!」
「変な固有名詞で呼ばないで下さい。それと飲食をされない方は入口で騒がないで下さい。他のお客様のご迷惑になります」
S組の皆はいきなり現れた海斗先輩にそっくりのウザ兄の存在にざわついていた。そう言えばお兄様はシュアリリス学園の卒業生なのかな?
「あの隼人さんはうちの学園の卒業生なのですか?」
と私が隼人さんに声をかけてその言葉にニッコリと隼人さんが頷いたその時、いきなり誰かが私の前に走り込んで来た。おいっ!いきなり誰なの?失礼な人だなぁ~。生憎と私の身長ではその人の背中しか見えない…。
「やっぱりっ!隼人君~!」
んん?隼人さんの知り合いかな?しかし隼人さんの魔質がグラリと…揺らめいた。あれこの魔質?不審…とか嫌悪感?
私の前にグイグイ割り込んできた女の人に弾き飛ばされる感じで教室の端に移動した私の側に、海斗先輩が素早くやって来た。
「あの女だ」
「あの女?」
海斗先輩は和真を翔真に手渡すと、携帯電話で何かメッセージを送信している。
「真史さんの会社の厚かましい女だ」
真史お父さん?ああ、あの赤リップのお嬢様か!と、思っていたら真史お父さんも気が付いたみたいだ。
「あれ?持田さん?」
赤リップのお嬢様は持田さんと言うのか…彼女はクルリと真史お父さんの方を見て
「篠崎ぶちょーお疲れ様ですぅ!」
とだけ言うとまた隼人さんに向き合った。部長である真史お父さんは、そんな持田さんの対応に返事をするタイミングを失くしてしまったようで固まっている。
「やだ~っ隼人君が来るのを知ってたら…もっとお洒落…」
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
うおっ?!まるでお面を張り付けたみたいな顔で隼人さんは早口にそう言った。今の言葉、唇…動いてた?
赤リップ持田さんは、一瞬怯んだようだが言葉を続けた。
「え~?何言って…私一緒のぉ…」
「俺と同じ大学のご出身でしょうか?」
「…い、いいえ」
「失礼ですが、俺とは年が離れているようですが…どこかでお会いしましたか?会社絡みの方ですか?俺の知り合いというだけでファーストネームを呼んでくる女性はいませんので…」
言葉の端々に毒と嫌味が仕込まれている!流石、海斗先輩のお兄様…ウザイだけではなかった。
「わ…私、持田 瑞希よ?隼人君より三才上で、いつもテニスの試合を見に行って…」
持田さんは更に言い募ったが…隼人さんは能面フェイスを崩さない。
「持田…?う~ん俺より三学年上では…申し訳ないですが面識は無いですね」
持田 瑞希は肩を震わせている。どんな表情をしているのだろう…と興味を惹かれてコソコソと場所を移動していると…うちのクラスの入口に…紺色のマントをはためかせたラオウがやって来た。
検索した画像のような大きな馬には乗っていないけど、威圧感はたっぷりだ。
ラオウこと旭谷先輩はドスドスと音を響かせながら、隼人さんの横に立った。周りに栃澤 海斗と愉快な仲間達のメンバー、大柄な藤河 怜二先輩と眼鏡の玉田 祐樹先輩を従えている。
「問題のある輩が侵入したと聞きましたが…」
旭谷先輩が隼人さんの視線の先に居る持田 瑞希に目を向けた。こわっ…魔力と共に威圧?気圧?みたいなのを向けている。
「騒ぎを起こされるなら、校外に出て頂きますが?」
持田 瑞希は一瞬、顔を歪ませたがニッコリと微笑んだ。
「隼人君は私の事忘れちゃったみたいだね~。周りに派手な取り巻きばっかりいたし私は大人しいから~当然かな!」
これ…隼人さんに対する嫌味だよね?本当にこの赤リップは性格悪いなっ!
だが栃澤兄は負けてはいなかった。
「俺の知り合いの女性陣は皆明るく聡明な方ばかりですよ。あなたこそ、その他大勢に埋もれてしまわないようにしっかりと自分を持ったほうがいい」
さ…さすが栃澤ファミリー!返す刀で切り返したっ!
持田 瑞希は笑顔のまま…体の中はどす黒くなっていたけど、ゆっくりと教室を出て行った。
「なんだあれは?」
ラオウがグルンと首を動かして海斗先輩を見た。海斗先輩は隼人さんを見ている。皆の視線が集中する中、隼人さんは能面フェイスを解いて、怖い顔で教室の戸口を見た。
「まあ、あの人の名前くらいは憶えてたけどな~確か俺が中学一年の時だったかな?あの人、高等部から俺のいる中等部にわざわざ来てさ…部活帰りの初対面の12才の俺を捕まえて…何て言ったと思う?」
何故か隼人さんは私を見る。お嬢の言いそうなこと…?
「私と付き合って!…とか?」
「惜しいっ麻里香ちゃん~。正解は『今日から私が彼女になってあげる』だ」
「えええっ?!」
衝撃だ。クラスメイト…おまけに真史お父さんまでびっくりして声をあげている。
「初対面の年上の人に何故そんなことを言われなくちゃならないのか…混乱したよ。でも俺、まだ子供だったし…顧問の先生にどうしたらいいんだと聞いちゃったんだ。そうしたら、顧問の先生が怒っちゃって高等部の教頭先生に言いつけて…PTAが出て来るわ…ちょっとした騒ぎになった」
隼人さんはまだ怒ったような顔をしている。
「あの人は何かが欠落しているんだよ。それからどれほど注意されても、俺を待ち伏せたり、部活の練習を見に来てたりしていたよ。でもしばらく経ったら、別に追いかける対象が出来たみたいでそっちに行ったみたいだけど。それでも俺が高等部に上がったら、もう先生に聞かなくても分かるよね?付き合おうよ、とか何度も言ってきていたな。本気で了承されると思っている感じなのが…恐怖しかないけどね。断っても何故断られるのか分かっていないようだった」
そうか…持田 瑞希の言葉の全部が自分に対する自己評価が高い発言ばかりだと気が付いた。
「ご自分が常に選ばれる…と思っているのでしょうか?」
花音ちゃんが私の気持ちを代弁するかのように隼人さんに聞いた。隼人さんは少し苦笑いを浮かべた。
「そうだね~。多分だけど否定されたことの無い人生なのかもな~。親や周りから良い子良い子、自分は間違っていない。と言われ続けていた…いや今もそう思っているのかもね。自分のことに興味が無い俺が彼女の中では『悪者』なのかもね」
自分に興味の無い者が悪者…亮暢と優樹菜を思い出した。構うな…と言いながら構って欲しくて暴れて気を引いてるようなあの人達…。
やがて旭谷先輩は演劇に出演する為に講堂へ向かった。
それに合わせて真史お父さんとマルシェから戻って来た由佳ママは、彩香と夏鈴ちゃんを連れて劇を見に行った。翔真はストライクアウトのゲームを開催しているクラスに悠真と向かい、和真は海斗先輩と隼人さんに子守してもらい…私は作業に戻った。
カシャ…カシャ…。
隼人さんが一眼レフを構えて私を盗撮している気もするが、構っている暇は無い。
その後、海斗先輩がご自身のクラスに戻るというので、隼人さんも和真を連れて遊びに行ってくれた。
夕方…
『江戸っ子茶屋』は店じまいし、会計をして二日間の売上の集計を生徒会室に届ける。文化祭は売上と来場者のアンケート結果での評価と合算して順位が決まるのだ。
売上に関しては手ごたえはあった。花音ちゃんと二人で生徒会室に集計表を持って行った。
「おおっ嫁。どうだった?」
生徒会室に入ると玉田先輩と海斗先輩が集計表の束をパソコンに入力しているようだ。生徒会役員って学園祭が終わった後もこんな風に作業していて大変だな…。海斗先輩に集計表と現金を渡した。
「おお…」
玉田先輩が集計表を見て声を上げた。
「売り上げでは1-Sがダントツだな。流石だ!鼻が高いぞ!」
「いや、あんたの手柄じゃないし」
思わず、元旦那にツッコみを入れてから花音ちゃんと廊下に出た。
カシャ…カシャ…。
「おいっ!」
今度は海斗先輩のウザ兄、隼人さんにツッコみを入れる。廊下で一眼レフを構える隼人さんは私達にレンズを向けていた。
「私はともかくとしても、花音ちゃんへの無許可の写真撮影は固くお断り致します!」
私は花音ちゃんの前に立つと、若干変態気味のウザ兄を睨んだ。
「いや~麻里香ちゃんも花音ちゃんも着物似合うね!」
確かに…こじんまりしている私は兎も角として、花音ちゃんは何を隠そうアメリカ人とのクォーターだ。お母様がハーフで元モデルさんなので、絶妙な西洋と東洋の融合でボンキュッボンの美しいお姿だ。
そう花音ちゃんはモデル体型なのだ。本人は目立つのは苦手らしいが…。
隼人さんは花音ちゃんにカメラを向けている。うん、向けたくなる気持ちは分かる。
「も~隼人さん止めて下さい~」
隼人さんは笑いながら花音ちゃんの写真を撮っている。実は隼人さんは花音ちゃん以外にもクラスメイトの皆の写真を撮っていたのを知っている。楽しそうだね~。
学園祭の集計結果が出た。
私達は第二位だった。橋本先生が『我が人生に一片の悔いなし!』とか叫んでいたけど何だろうか?
一位は2-B…旭谷先輩のクラスだった。後日海斗先輩が「よく頑張ったご褒美だ」と新米30キロともち米30キロをプレゼントしてくれたことに私と由佳ママは感謝で泣き濡れた。




