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体育祭その2

更新が遅れましてすみません。

宜しくお願いします。

11/17誤字修正しています

そう…ここは舞踏会の会場だ。私の体にマリアティナの感覚が甦ってくる。自然と背筋が伸びる。


海斗先輩に導かれて、応援会場の立ち位置に立つ。ポーズを取り海斗先輩を見ると、魔質をギラギラさせてとんでもない色気を醸し出していた。


体育祭でその色気要る?


周りの生徒達からは、海斗様素敵ッ!とかの凄い悲鳴というか歓声が聞こえる。ヤバい、足が震えて来た。


「マリアティナの実力を見せつけてやれ」


私は目を閉じた。そうだ…ブルってはいられない。ここは城の舞踏会…音楽が鳴り出した。


一瞬で何かスイッチが入ったようだった。微笑みを湛えたまま、海斗先輩と共に舞う。


ああ…懐かしい。そう言えば前世で踊っている時にナキート殿下に言われた事があったっけ…。


「踊っているマリアティナは色っぽいよな~」


その当時は何だそれ?と思っていたけれど、今は分かる。私の目の前で極上の笑みを浮かべて私を見ている、海斗先輩はとんでもない色気を垂れ流している。


不思議とあんなに盆踊り状態だった私のリズム感が、今はマリアティナの如く軽やかに優雅にステップを踏めている。


音楽が佳境になり、海斗先輩は振付にアドリブを入れ出した。おぃおぃおぃ!と思ったけど、体…魂が覚えているのか、私の体はその振付に難無くついていく。


そして音楽が止まり、私と海斗先輩はピタリと寄り添い…綺麗に踊り切った。


ウワワアアッ…と歓声があがる。


思わずガッツポーズをしてから海斗先輩と拳をぶつけあった。熱い…熱い…熱血だ!


『ただいまの応援合戦の得点を発表致します―!第三位 C組21点、第二位 B組22点、第一位S組25点です』


応援合戦の得点が発表されてS組合同チームは歓声を上げた。


「25点満点だ!やった!これでトップだ!」


3年生の先輩達に次々ハグをされる。


「よくやったよ!篠崎さん!」


「流石、栃澤の嫁!」


皆に肩を叩かれたり頭を撫でられる。やばい…嬉しい。半泣きになって海斗先輩を見ると、めっちゃ王様のオーラ(魔質)を出しながら何故か踏み台の上に立って手を振っていた。踏み台の周りにはスマホを掲げて写真を撮っている女子生徒で溢れかえっている。


今は…まあいいか。


さてこの後の競技は応援のみだ。筋肉馬鹿(元旦那)と筋肉王者(旭谷先輩)の一騎打ちを鑑賞するのみだ。


後半の競技はなんとか一位と二位をキープ出来ていた。


そして最後のリレー…。


旭谷先輩は立っているだけで王者の風格である。そうか、新たな発見だ。運動神経の良い人って立っている時も姿勢がいいんだな…とか思っていたら、きゃああ…と歓声を浴びて海斗先輩がトラックに出て来た。


海斗先輩はこちらに向かって何かまたできもしないウィンクをしようとしている。


「栃澤先輩また変顔してるね~」


菜々がそう言ったので、種明かしをすることにした。


「あれは恐らくウインクをしようとしていると思う」


「ウィンク?!」


「出来てないよ~」


「栃澤先輩にも出来ないことあるんだ!」


私達の周りでドッと笑いが起こる。おいおい…そんな遠くの方から魔圧を放つなっ!殿下の悪口じゃないですよ~?皆、可愛い!と褒めてくれているのですよ~!


私は微笑みを浮かべて海斗先輩に手を振った。ちょっと魔圧を下げてきた。


私は応援だから…とさきほどまでは思っていたが、こうやって雌雄を決する戦いを目の前にすると力が入る。周りの声援と一緒に私も海斗先輩に声をかけた。先輩に届け~と思っていると無意識に魔法を使っていたらしい。


『先輩っ!頑張って!』


『勝てば褒美をくれるか?』


「んがっ?!」


海斗先輩の返事が耳元で聞こえて変な声が出てしまった。よかった…歓声に紛れて周りに聞こえなかったみたいだ。


『ほ、褒美って…』


『それは後で考える、くれるか?』


これ、私は完全に無意識だけど声を近くに届ける魔法を使ってるのかな?自分の魔法スペックの高さに驚いてしまう。


海斗先輩はこちらを見ている。私は腕で大きくマルを作ってみせた。海斗先輩は頷いている。


リレーの第一走者が並んだ…!


パーンとピストルの音が聞こえて、一斉に走り出した。うわ…トップだっ!さすが、邑岡先輩!


「先輩―!」


「素敵ーー!」


「彼女にしてーー!」


どさくさに紛れてすごい声援が飛ぶ。第二走者…第三走者…と来てS組合同チームは現在二位。そして第四走者の笠松君が物凄い…形相で走ったが三位に落ちてしまった。


周りから落胆の声が上がった。


「まだまだ!」


「そ、そうだよっまだ栃澤君がいるよ!」


私の声を拾って、津田川先輩がS組合同チームの皆に発破をかけた。


「海斗先輩ー!」


そして…海斗先輩にバトンが渡った。ここまで必死になっているナキート殿下を見たことがあるだろうか?いや、無いね。あんなに歯を食いしばっているのも、全速力で駆けているのも見たことが無い。


一気に三位から二位に躍り出た。私と同じ人間とは思えない…っ。そして先頭を走る旭谷先輩の全身バネみたいな体の動きっ!


私とはDNAから全てが違う素材?で出来ているのだろうか…。同じたんぱく質が生成されているのか?


海斗先輩は旭谷先輩に追いついた!


声の限りに叫んだ!周りの声援も大きくなる。自分が走っていないのに心臓がバクバクと跳ねる。


結果は…海斗先輩一位だ!一位のフラッグを持って手を高く挙げている。


「きゃあああ!」


周りの悲鳴と津田川先輩と菜々に抱きつかれて振り回される。


『只今の結果発表を致します…第三位D組、第二位B組、第一位S組』


「いやったぁぁぁあああ!」


皆が泣いている。私も泣いている。たかが高校生の体育祭、されど高校生の体育祭だ。


海斗先輩はS組の皆に囲まれて満面の笑顔だ。旭谷先輩とも熱い抱擁を交わしている。


眩しくてキラキラしていて近寄りがたい、と思っていると海斗先輩が私に向かって声をかけた。


「麻里香!」


無意識に駆け出していた。海斗先輩は周りにいる生徒を掻き分けながら私の方へ近づいて来た。


海斗先輩の腕の中に飛び込んだ。


「見たか?一位だぞ」


「はい、殿下」


「俺、格好いいか?」


「勿論です」


私達S組合同チームは総合優勝に輝いた。


『本当にこれまでの道のりはぁ…長く苦しいものでぇ…』


屈折十年…いかに苦労して皆の体力向上に努めたか…とか体育祭終わり、謝恩会と称して栃澤家が貸し切ったパーティ会場(某ホテル宴会場)でマイク片手に団結力とは~、団体競技とは~とか熱く語りこれから演歌でも歌いだしそうな海斗先輩を放置して、私達は皆で写真撮影をしたり、とにかく楽しかった。嬉しかった。


応援合戦の衣装が皆さまのお気に召したらしく、せっかくだから…と、踊った皆でドレスと正装に着替えて宴会場に戻ると、ものすごいコスプレ撮影会が行われることになった。


気のせいか違うクラスの人も交じっている気がする。


現に大声をあげて、唐揚げのおかわりを頼んでいる旭谷先輩がいるし…。


「篠崎~!俺とも撮ろうぜ!」


「うん、いいよっ」


笠松君とか邑岡先輩達…そして唐揚げを食べている旭谷先輩達とも写真を撮ってはしゃいだ。


「嫁~。俺とツーショットどうだ?」


「はい只今!」


海斗先輩に呼ばれたので、人の輪が出来ている所に向かうと、満面の笑みを浮かべた海斗先輩(正装)が私を待ち構えていた。海斗先輩は携帯電話を掲げて、私とのツーショットをカメラに収めた。


カシャ…カシャ…。


気のせいかな?見知らぬおじさんがテレビとかで撮影している本格的なカメラ構えて私達に向けているんだけど?おまけに野鳥でも撮っているのか?と思うような高感度カメラで私達の写真を撮っている怪しいおじさんもいるんだけど?


「楽しかったな」


「はい」


「後で最上階のスイートルームに来るように」


「……ん?」


と聞き返した時には、女の子の集団に押されてしまって人垣の向こうに追い出されてしまっていた。


サイジョウカイノスイートルームニクルヨウニ……。


気のせいか、そうだな。


私はまた友達の所へ戻って行った。


「麻里香~電車で一緒に帰る?」


と、打ち上げ会が終わり、ドレスから制服に着替えた後、ロビーで私を待っていてくれた菜々に聞かれて


「うん、そうする」


と、連れ立ってホテルの入口を出ようとした所へ携帯電話がメッセージを伝えて来た。


『どこに行く、最上階に来い』


あーーっ。忘れてた、てか本当に最上階に呼んでるの?


「ごめん菜々、海斗先輩に呼び出された~時間分からないから先に帰ってて~」


と、言うと今度奢れ~と言って菜々は萌ちゃんと花音ちゃんと帰って行った。


はぁ~何だろう。憂鬱…。


はっ!そもそもスイートルームってどうやって行くんだろう?


情けないけど、携帯電話に連絡して海斗先輩に迎えに来てもらった…すみません。


海斗先輩はスイートルームに泊まるそうだ。これはいけない、初スイートルームの内部を見れるのだ。一生入ることはないかもだし、良い記念になるね。


「で、何か御用ですか?」


私がスイートルームに入るなり、そう聞きながら室内を観察していると海斗先輩は「まあ座れ。」と言って豪華なソファへ私を誘った。


「今日は綺麗に舞えていたじゃないか」


「あれはマリアティナに助けてもらったのです。彼女の感覚が呼び起こされて、自然と足が踏み出せました」


海斗先輩は満足そうに頷いている。


「体育祭はいいな…こう皆と共に勝利を高みを目指すまでの高揚感っ身が引き締まるなっ!」


「はあ…」


軍人はこれだから…ここには共感性を感じないわ。


海斗先輩は私の横に座って、私の手をサワサワ…と撫でている。


「正直な…この世界に生まれて、この世界の息苦しさに最初は悩んだのだ。方向性を見出せないというか、目標のようなものが分からなかったんだ。だが、すぐにマリアティナ…麻里香の魔力を見つけた。私は生きる意味を見つけた」


重っ…。何度聞いても重いわぁ。


「そう思うとだ、毎日が楽しくなってな。お前と会う時にこれをしよう、あれをしよう。ああ、麻里香に楽しんでもらう為にはこの学園も生活しやすいものに改善せねば…と特待生制度を推進したり、体育祭と学園祭にも力を入れた」


「そうだったんですか…」


全ては私を楽しませるためか…壮大な計画だな。


「昔のナキートの時は王太子そして国王としてこの体…時間、命までもがモッテガタード国民のものだった。マリアティナに愛を捧げて、あげられるものは己の魂だけだった。それがこの世界に来て、そこまでの縛りの無い人間になれた。だからここに誓う。この栃澤 海斗の体、時間、そして魂、この私を形成する全てのものが未来永劫、篠崎 麻里香の物だ。すべて受け止めて欲しい」


これは…要りません!とは言えない雰囲気だな。重いな~重度のストーカーだな。


「つまり要約するとどういう意味ですか?」


「ん?私と結婚してくれかな?」


「早っ!てか、まだ高校生ですっいくら何でも早すぎます!」


海斗先輩は大きく溜め息をついた。


「だよなぁ~父さんにも言われたよ。もう少し恋人同士の時間を楽しみなさいって結婚なんてもっと先でも出来るから…って」


そうだそうだっ!パパン良いこと言うよ!


「まだ早い~?じゃあ高校卒業したらいいのか?」


「そ、それも…私一応大学にも進学したいし…」


海斗先輩は仏頂面だ。


「それこそ栃澤のおじ様の仰る通り、恋人同士でまだまだ楽しめる事残ってますよ?学校行事もまだまだありますし…」


海斗先輩の手を取って言い含める様に何度も手の甲を軽く叩いた。


「ゆっくりでいいですよ、これからも一緒に色んなことを楽しめますよ」


海斗先輩は私を体ごとご自分の腕の中に引き寄せた。


「分かった…これからも一緒に楽しんでくれるか?」


「はい、勿論です」


「よし、まずは10月開催予定のシュアリリス学園の学園祭だなっ!コンセプトはな~『軍人カフェ』だ!」


「おいっ!」


思わずツッコんだ。体育祭でも暑苦しかったのに、学園祭まで軍規が~とか戦いとは~とかやらかすの?いい加減にS組の皆を解放してあげなよぉ。


「まあ学園祭はS組合同チームじゃないですものね、うちのクラスは適当にして…」


「あれ?麻里香知らないのか?体育祭もだが、学園祭も優勝組には賞品が出るぞ?因みに体育祭は各人に松坂牛と神戸牛詰め合わせセット3キロが進呈される」


「肉3キロ!」


「学園祭は魚沼産コシヒカリ米を毎月30キロ一年間お届けだ」


「ぎゃあ!米30キロ?!」


こ、これはあぁぁぁ~商店街の福引で当たっても困ってしまう美顔ローラーより役に立つ賞品じゃないかっ!何だそれは…高校生の賞品にしては主婦大喜びの一品だ…もしかして…?


「その賞品…選んだの海斗先輩ですか?」


「学園祭も体育祭も協賛はうちの会社だ」


絶句だ…高校生の体育祭で協賛って…金がかかりすぎている。あ…もしかしてこれも私を楽しませる為かな?


「やる気が出ただろ?学園祭も頑張れよ?肉は後日、S組に申込用紙を配布する。申込を忘れないようにしろよ~」


はあ…何だかね~ナキート殿下ってグダグダ言う割にはこの世界を満喫しているように思えるわ。


私の肩を抱き寄せて軍人カフェのコンセプトを熱く熱く語っている元旦那の顔を見上げながら、これも幸せっていうのかな~とぼんやりと考えていた。



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