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異世界では王太子妃@今、庶民  作者: 浦 かすみ


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体育祭その1

暗い話が続きましたので学校行事でお口直しです。

シュアリリス学園は9月が体育祭と言う設定です。

誤字修正しております


季節は本格的な秋になってきた。そろそろシュアリリス学園も体育祭の準備が始まる。


本日はSクラスの全学年合同会議が開催されている。


うちのSクラスは進学組と特待生ばかりのクラスなので、本来は運動系のイベントには熱が入らないはずなのだが…毎年Sクラスの鬱陶しい輩が騒ぎ立てて、盛り上げてくるらしい。


「毎年コレなの?」


「うん…。基本的に初等部の三年生からクラス分けが特待Sクラスとその他に分かれるんだよね」


前田 萌ちゃんの説明に髙嶋 花音ちゃんが大きく頷いている。


「で…毎年Sクラスになっているアレは毎年コレな訳だ…」


アレとかコレとか言っているアレとは栃澤 海斗こと元軍人のナキート=モッテガタード王太子殿下だ。コレというのはこの時期の体育祭にやってくる元軍人のやる気スイッチのことだ。


「いいか!毎年Sクラスは2位止まりだ!それはお前達の気合が足りないからだ!そこっ須藤 菜々!欠伸をするな!」


「ぎょぇ…!」


菜々が元軍人にビシッと名指しで指摘されて、ギクッとなっている。私は手を挙げた。


「何だ、嫁?」


「嫁じゃありませんけどーそもそも特Sに編入もしくは進級してくる方って、勉学に勤しんでいる方々が大半であるわけでー基本運動は苦手な方が多いと思うんですよーそれでも毎年2位を取ってるって奇跡に近…」


「口答えをするな、嫁っ!」


「嫁じゃありませんっ!運動の苦手な方に運動を強要するなんて暴君そのものじゃないですか!」


私の周りで拍手がおこる。どうやら毎年この暑っ苦しい輩に押されて、各Sクラスに在籍の方は渋々参加することが多いらしい。誰も栃澤 海斗に異議を申し立て出来ないままに、下手をしたら10年以上抑圧されていたことになるのだ。


しかし今年は違う。栃澤 海斗が唯一頭の上がらない嫁(仮)が入学してきたという訳だ。


私はこういう方面の救世主として、普段は海斗様の嫁ですって?!厚かましい!と目の敵にしてくる三年生のお姉さま方からも今は熱い賛辞を受けていた。


「そんなに一位を取りたいのでしたら、海斗先輩が全競技に出場すれば宜しいでしょう?はい、問題解決ですね」


「俺が借り物競争に出場したら、次のクラス別リレーに出られん!」


「続けて走れば宜しいではないですか?それほど2位がー2位がーと言うのではあれば!文句ありますか?」


私は同じく2年S組の邑岡先輩から借り物競争とリレーのタイムスケジュールを見せてもらった。


「借り物競争で出た後はリレーはアンカーで走ればいいじゃないですか?その前の棒倒しも余裕ですよ」


全学年対抗の競技はその三種目だけだ。後は学年ごとの競技だ。後応援合戦とやらがあってこれも得点に加点される。


「え~と、本日の議題。応援合戦の衣装打ち合わせ?邑岡先輩、何ですかこれ?」


色素の薄い邑岡 陽輝(むらおかはるき)先輩の目を覗き込むと、邑岡先輩は茶色のクルンとした目を見開いた。


「あれ、聞いてない?今日は応援合戦の衣装とコンセプトを決めるんだよ」


「コンセプト…」


すると栃澤 海斗が教壇の後ろの黒板をバンッと叩いた。皆が一斉に海斗先輩に注目する。


「コンセプトはもう決まっているぅぅぅ!『王子と姫』だあぁ!」


生徒の皆からどよめきと歓声が上がる。私は静かに手を挙げた。


「反対します」


「却下だ」


くっ…コンマ0.2秒ほどの速さで却下しやがった。


「ちっ…」


「え~?どうしてよ麻里香ちゃん?プリンス&プリンセスよ?素敵じゃない!」


と、萌ちゃんが首を傾げている。すると歓声の上がる中、三年生のお姉様が手を挙げた。


茂垣(もがき)先輩どうぞ」


海斗先輩に名前を呼ばれた三年女子の茂垣先輩は、眼鏡をクイィと押し上げて


「私の見た所、その王子枠に該当する方が栃澤君と邑岡君しかおりませんが?後は侍従Aとか兵士Bとかの基準の者にしか見えませんが?」


ひええ!分析力が凄すぎて…侍従Aや兵士Bと言いながら、茂垣先輩がチラチラと見ている辺りにいる男子が立ち上がっている。自分がそれに該当する…と判断したのか?


「おい、茂垣それはあまりに失礼だろ!」


自分で言ってしまうのは自分が兵士Bくらいの資質だという、自虐なのだろうか。すると、兵士B…と言われた辺りに座っていた1-Sの笠松君が立ち上がって叫んだ。


「そんなこと言ったら女子だってメイドAとか貴族の娘Cばっかりじゃないか!」


教室内に居る女子生徒から張り詰めた魔力が放たれた。これは体育祭前に内部分裂の危機じゃないかな。


すると、また海斗先輩が黒板をバンッと叩いた。


「皆、落ち着け…気品とは顔の美醜で決まるものではない」


「!」


「物腰、立ち振る舞い、姿勢…すべては立ち姿で決まってくると言っても過言ではない!皆、正装を着用し、化粧を手抜かりなく行えば誰でも貴人に見える!」


めっちゃ説得力あるね…。自分の経験則から断じているから謎の自信に溢れているし、本物のセレブリティなお人からのセレブ圧で皆、良く分からないのに拍手なんかしちゃってるし。


「結局ゴリ押しか…」


菜々がボヤいているが私もボヤキたい。非常に嫌な予感がしている。何故なら元旦那の今彼氏から出来もしないのに、片目を瞑ったウインクもどきを何度も投げかけられているからだ。


「ねえ、栃澤先輩さっきから顔をしかめたり、変顔しているけど何してるんだろ?」


花音ちゃんがコソッと聞いてきたけど


「顔が痒いんじゃね?」


と、答えておいた。


一度、王子と姫の見本が見てみたいと邑岡先輩が言ったので、海斗先輩の号令の元、教室の机が後ろに固められて、教室の真ん中で何故か私は元王子様と睨みあっていた。


「さあ、嫁!皆の手本になるようにワルツを踊るぞ!」


「存じ上げません」


「さあ、貴婦人の立ち居振る舞いをみせようではないか!」


「存じ上げません」


阿保かっ!私は現世では一般市民だ、上級市民じゃねえ!それこそ若干16才の高校生が貴婦人が如く、しゃなりしゃなりとワルツを踊ったら可笑しいだろうが!


「私が知っているのは、お父さんの好きな飲料の商品名だけです」


「それお酒だし!」


という、同じ1年S組の笠松諒一(かさまつりょういち)君の鋭いツッコミを聞きながら私は、今一度、栃澤 海斗を睨み上げた。


「このクラスには各界のセレブリティな紳士淑女が揃っております。勿論、そのお嬢様方なら海斗先輩のお相手として不足はありません…萌ちゃん?」


「断る!」


萌ちゃんから弾丸の如く素早いスピードでお断りがなされた。私は萌ちゃんの隣に視線を移した。


「花音ちゃ…」


「ごめんっ!」


最後まで言わせてはもらえなかった…。私は、更なる淑女を求めて教室内を見回した。しかし(ことごと)く視線を逸らされる。


誰も私を助けてくれなかった…。仕方ない、わざと踊れないようにして…。


なんてことを考えていたけど…要らぬ心配だった。


海斗先輩のカウントしてくれる声に合わせて足を出して…出して?出しているつもりなのに(もつ)れる。あ、海斗先輩の足を踏んづけた…。


忘れていた…現世の私、リズム感ゼロでございました。地域の盆踊り大会に参加しても1人リズムがズレている女でございました。


「すみません、リズム感無いので…」


「……」


わおっ…イライラしている魔力が海斗先輩から放たれる。


「よし…麻里香には所作の指導を頼む」


「いえ、ですから…」


それもお嬢様のどなたかにお任せして…言いかけたのに海斗先輩にギロリと睨まれてしまった。


「所作って言っても…ね。そもそもですが、応援合戦の衣装はどうするのですか?」


「ああそれは津田川さんが…」


と、邑岡先輩が振り向いた所に、部屋の隅で分厚い本を見ている女子生徒が名を呼ばれて手を挙げた。


「はい?あっ津田川 環よ。宜しくね!」


目鼻立ちのはっきりした美人の羨ましいくらい背の高い…二年生の先輩だ。


「私の実家アパレル経営してるのよ?知ってるかな?モスカルって言って…」


「ええっ?!わ…私の今年の水着はモスカルで買いましたぁ~弟妹の子供服でもいつもお世話になっています!」


な、なんとショッピングモールに必ずと言っていいほど出店している超有名ファストファッションブランドではないですか?!


「ふふ、ありがとう~実はファストファッションのブランド以外にもハイブランドも持っていてね、そこで今回の体育祭の衣装を提供することになったの。応援合戦の衣装提供はモスカルで~す!って競技中に宣伝を入れてもらえるから、うちもウィンウィンなの!そうそう、衣装ね~中世ヨーロッパをイメージしているって栃澤君から聞いてるのだけど、どう?」


どう?と言って津田川先輩が見せてくれたのは、手に持っていた分厚い本だった。本のタイトルは『中世ヨーロッパのファッション』と書いてあった。


本の中を見せてもらうと、懐かしいようなドレスのデザインとあのキツイコルセット装着を思い出して、目頭が熱くなる。


「先輩、コルセットは止めましょうね、多分気分悪くなる人続出だと思います…」


「だよね…。マキシ丈のドレスでドレープで膨らませて…」


津田川先輩はブツブツ呟き出して、多分ドレスのイメージを考えているのかな?という感じで虚空を見詰めている。


「ワンツーワンツー!」


私の後ろで元軍人さんが、熱血ダンス指導をしている。ダンスの練習より、バトンパスの練習したほうがいいと思うんだけどね。


そしてそんな熱血指導の甲斐なく、応援合戦のお披露目場所のスペースの都合で男女30組ほどしか踊れないことが分かり…急遽、S組の王子と姫の選抜が行われることになった。


「出ません」


「リズム感がないのは分かった。だが、忘れるなっダンスは格闘技と一緒だ!気迫と根性で乗り切れ!」


「それが出来るなら最初からしています」


私は姫選抜を辞退しようとしたが、この熱い男が出ろ、出ろとさっきから煩い。運動神経が鈍いと自覚のある方や、私と同じくリズム感にやや不安のある方は一早く辞退している。私も辞退組に入りたいのにぃぃ~。


「大丈夫だ!気合いだ!」


「どこのプロレスラーですかっ!気合いでリズム感が出るなら世の中のリズム音痴の人は皆、テンポにズレずに踊れています!盆踊りにならずに華麗に踊れます!」


周りの王子&姫辞退組から大喝采を浴びる。対する元軍人&元国王陛下で、今も運動神経もリズム感も良さげな熱い男(彼氏)は一応彼女のはずの私を射殺しそうな目で睨んできた。


「そんな殺し屋みたいな目で睨んできたって駄目なものは駄目です!」


そんな押し問答を、下校時刻ギリギリまでしていたが結局私が折れた。だってね


「嫁以外の女と体を密着させたくない」


なんて言われたらね~。はあ…。


「押しに弱いね、麻里香」


菜々に言われたけど、本当にその通りだけど…でもどうしよう。皆がワルツを踊る中、1人盆踊りになるのは確実だ。これは付け焼き刃だけど、特訓せねばいけないのか?


とかチラッと栃澤 海斗の前で言ったもんだから


「よしっ!特訓につきあってやる!」


と言われてしまった。私、体育祭までに生きていられるのかな?


それから体育祭までの間、私は放課後、海斗先輩に連れられて、栃澤家の大きなフロアを使ってダンスレッスンを受けている。


「さあ、ここでクイックターンだ!」


「はっ…ひぃ…」


カシャ…カシャ…。


ヘロヘロの私とは違い、汗を飛ばしながらキレキレのワルツを踊る海斗先輩。その横で写真を撮る海斗パパン…。私は一眼レフを構える海斗パパンをジロリと見た。


「落ち着かないので、勘弁して下さい!」


「そうだぞ、父さん。嫁の肖像権は俺のモノだ」


「誰のモノでもないっ私のモノだ!」


なんでまた海斗パパンがここにいるんだ?…あ、ここ栃澤家の家の広間(40畳以上)だった。


「麻里香様、少し休まれますか?レモネードでございます」


「甲本さんありがとうございます…」


ロマンスなグレーの栃澤家の執事かどうかは分からんが、海斗ぼっちゃまのジイの甲本さんから冷え冷えのグラスに入ったレモネードを差し出されて、喉を潤す。


そもそもがだ、体育祭は部外者は立ち入り禁止だ。つまりは、学生にしかこの応援合戦は見せないのだ。何をこんなに頑張るのかが分からない。まあこうやって指示を飛ばしたり、率先して何かをやるのが好きなんだろう…事実、最近の海斗先輩は魔質を常にキラキラさせているのだ。


根っからのリーダーシップ気質なんだよね~。


「そろそろ休憩はおしまいだ!しっかり舞えっ」


……これだよ。この熱血さえなければ良い上司でリーダーで王様なのにさ、暑苦しい…。


カシャ…カシャ…。一眼レフからシャッター音が聞こえる。


「…っ!おじ様もいい加減になさって下さい」


「疲れている麻里香ちゃんも可愛いな!海斗、体育祭ではプロカメラマンも入って生徒の撮影があるんだったな?そちらの買収は済んでいるのか?」


「はい、抜かりはありません」


ば、買収?!


海斗パパンと海斗先輩は親子似たような顔でニヤリと微笑みあっている。


「華麗に舞う麻里香ちゃんの動画をしっかり撮ってこい!」


「御意!」


「それは盗撮ですっ!」


何だっていうんだ!この変態親子めっ!生憎、今日は海斗ママンはお仕事で不在だ。まだママンの方が変態度が薄めなのだが…。


そんな感じで体育祭の前日まで、海斗先輩の熱血指導が行われたのだった。


体育祭の当日


朝から緊張で、もどしそうだ…。私は鈍足組なので…玉入れと借り物競争に参加だ。


因みに海斗先輩は借り物競争以外の、全競技に出場とのことだった。元気だな~。


朝から魔質をギラギラさせて海斗先輩がS組合同チームのメンバーの前に立った。


キィィ~ン…とハウリングがして拡声器のスイッチが入れられた。


「皆っ今日はいよいよ本番だ!持てる力を全て注ぎ、悔いの無い様に戦ってこい!そして怪我だけはするな!共に勝利を!One for all ,All for one!」


「はいっ!」


おいおいっ…どこから持って来たのか、拡声器で叫んじゃってますが…その台詞は本来は体育祭の開会式で生徒会長が、宣誓!とかで叫ぶ内容と被ってんじゃないかな?


さっきから3年の生徒会長がメモ紙握り締めて、海斗先輩を睨んでるよ?あんたが先に言っちゃってどうすんのよ?


さて


いよいよシュアリリス学園体育祭がスタートした。借り物競争は得点は一位だった。鈍足の私でも堂々の一位だった。借り物が『カッコイイ人』だったために、ニヤニヤしている海斗先輩を連れて…いや厳密に言えば全力疾走の海斗先輩に担がれてゴールした。


乙女の恥も外聞もかなぐり捨てて…ゴールした。帰って来た私はS組合同チームから温かい拍手で迎えられた。皆から痛ましげな目を向けられていた。


「大丈夫大丈夫よっ」


何が大丈夫なのでしょうか…津田川先輩。乙女のライフは限りなくゼロです。


午前の競技を終えて、我がS組合同チームは僅差の二点差で二位、一位はB組合同チームだった。


そうか、B組は旭谷 祥吾先輩がいるんだったね。


最近知ったことなのだが、旭谷先輩は空手の小学生と中学生の部門、双方で全国大会で第一位に何度もなったことのある、運動神経細胞が私とでは天と地ほどの差がある、超人であることが判明した。


「魔法を使わない体術勝負では、祥吾には絶対敵わないからな~」


と、海斗先輩がボヤいていたが…そんな人がB組だなんて…。しかも旭谷先輩も海斗先輩のように各競技にフル出場しているようだ。


さて、お昼休憩といえば…ここから私の本番、お弁当の時間である。


「さあ、嫁ちゃん!弁当をよこせ」


「いや、あの…」


海斗先輩を囲んでS組合同チームでお弁当を食べようとしていた所へ、B組の旭谷先輩が乱入してきたのだ。


「祥吾!今日は敵同士だっ散れっ!」


「散れって言ってもさ、何よ~お弁当の量結構あるじゃないか、頂戴よ」


確かに旭谷先輩の仰る通り、海斗先輩に弁当を作って来てくれと頼まれた時、かなり多めに用意してきてはいる。


旭谷先輩は遠慮もせずに私の持参したビニールシートに座り込み、お弁当を勝手に開けて唐揚げを食べている。


「くっ…お前が食すなら唐揚げに下剤でも仕込んでおくのだったなっ…!」


「いやいや?俺の目の前でそんな不穏な発言するの、可笑しくね?」


海斗先輩は旭谷先輩を睨みながら、お弁当を食べている。変な光景だ…。


さて、お昼休憩を手早く済ませると女性陣はメイクと着替えに視聴覚室に移動した。


何と、特別に海斗ママンとTZoneの美容部門のビューティーアドバイザーのお姉様達が、メイクと着付けを手伝ってくれるそうだ。


「麻里香ちゃーーん‼体操服姿も可愛いわね~。さあ、メイクよ~!みんな宜しくね」


「はいっ社長!」


ヨシッ!私は気合を入れ直した。久々のドレスだ…。袖を通すと気持ちも高揚し、身が引き締まる。


「麻里香ちゃんは背筋が伸びていて、姿勢が良いからドレス似合うわね」


「ありがとうございます」


海斗ママンにお化粧を施して貰い…私は鏡を見た。うん、完璧だ。マリアティナの外見には遠く及ばないけれど、今の私の最大限の盛れている状態だ。


姫選抜の皆さんも、綺麗に化けている。


「参りましょうか」


つい気分が乗って王太子妃のオーラを出しながら、歩き出してしまった。


視聴覚室を出て、中庭に出た。中庭には海斗先輩と王子選抜で選ばれた男子生徒達が待っていた。


か…か、カッコイイ!いやぁぁ…ナニアレ?アレ誰?いつもの変態?いやいや~。


「麻里香…っ美しい…。流石俺の嫁だ」


流れるような動きで私の前に膝を突いたお美しい海斗先輩は、私に手を差し出したので、無意識に私も手を出した。


ゆっくりと海斗先輩は私の手の甲に口づけを落とした。まさに王子様ですね。


「きゃあああああ!」


周りから悲鳴と歓声のような声があがる。フラッシュがたかれている。


海斗先輩は立ち上がると、私の腰を抱いて耳元で囁いた。


「よいか、ここは体育祭の会場ではない。国王陛下主催の、ナフガラン帝国の皇太子殿下も来賓された舞踏会だと思え」


ナフガラン帝国…うわっ思い出してきた。あの国の皇太子殿下すごく怖い人なんだよね。決して嫌味な皇太子殿下ではない方だったけれど、彼の氷みたいな目を思い出すと背筋が伸びる。


一度目を瞑って、気持ちを集中する。


「さあマリアティナ共に参ろうか」


「はい、ナキート殿下」


私は海斗先輩にエスコートされて校庭に足を踏み入れた。


誤字報告ありがとうございます。

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