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薬草採取

「そ、そうですか。ありがとうございます」


 なんて言いながらその人はムーンライオのメモを取って行った。

 人の話を聞いていたのか、それとも聞いて尚大丈夫だと思ったのかはわからない。

 俺の話なんて参考程度って認識だったとか? 信じていないのかもしれない。


 おや? 裏に俺が教えた事をメモしているみたいだ……自前のメモ帳とかに挟むつもりで持って行ったのかもしれない。

 なんて思いつつ、俺は役場の看板前に立つ。

 この辺りの簡単な地図は元より、要注意の魔物や賞金首の張り紙をチェックする。


 マッハカンガルー 賞金額 銀貨120枚 貢献ポイント200 目撃情報 エルスフ平原奥地

 罪状 馬車襲撃 治安低下行動 被害者急増

 備考 動きが素早く、攻撃が重いので要注意。エルスフ平原奥地の巣穴で仲間を引き連れているとの情報あり。


 プラントゴースト 賞金額 銀貨95枚 貢献ポイント 120 目撃情報 エルラル森林 夜間

 罪状 契約強制破棄 依頼者出願 スケルトンによるエルラル森林の生態系変化

 備考 対ゴースト装備推奨。スケルトンを召喚し、使役しているとの情報あり。


 ヘルロードキャタピラー 賞金額 銀貨 50枚 貢献ポイント 100 目撃情報 コジュ鉱山近隣 魔物の巣

 罪状 荷車破壊 負傷者報告

 備考 ロードキャタピラー系亜種変化個体。契約による増長暴走個体かと思われる。賞金の取り下げを望む場合は金の支払いを役場に通達せよ。


 他にも色々と居るみたいだ。

 んー……一応、目的地周辺には賞金首の情報は無さそうだな。

 危険魔物一掃キャンペーンとかも無いみたいだし……大丈夫か?

 なんて考えながら、俺は依頼者の元へと向かった。




「リアンは……」


 既視感仕事してくれよと思いつつ、道具屋にどんな薬草なのかを下見しに行った。

 常時買い取り募集しているのか、見本が置いてある。


 リアン。

 ヒルリ科 傷薬の材料。主に茎と葉が使われる。


 なんとなくアロエみたいな植物だ。

 時期によって咲く花はリアンの花として別口で買い取りをする。

 今は花の値段が高めだ。

 シーズンじゃないって事だろう。


 あー……なんとなくさっきの街道沿いにある草原で採れる覚えがある。

 とは言え三〇本は多いな。

 適切な処理をしないと買い叩かれる……気がする。

 少なくともただ持ってきただけじゃダメだったはず。

 このリアンの茎と葉は太陽光を受けてはいけない……気がする。


「あーリアンの採取依頼を受けたんですけど」


 薬草類の採取依頼を出しているのは、この村の道具屋だった。

 なので道具屋に納品をする様に役場で言われた。

 とはいえ、採取に必要な道具を持っていないので、必然的にこの村に一つしかない道具屋で揃える必要がある。

 ついでに依頼を受けた旨を伝えておいても損は無いだろう。


「ああ。で?」


 なんも持ってないじゃないかって顔で道具屋が俺を見る。

 現在持っている小銭で買えるギリギリの金額で籠を購入するのが目的だ。

 ただ、店で置いてある値札では買えそうもない。

 少なくとも太陽光が入らない様に遮光できる籠は必須だ。


「これから採取してくるんで籠を売ってくれ」

「じゃあそこにあるのを買えば良いだろ? ほら」


 道具屋は金を出せって感じで手を差し出す。


「そこを何とか。中古品で良いから安くしてくれない?」


 両手を合わせ、図々しいけど憎めないってキャラを演じながら頼み込む。


「はぁ? そういやさっきお前、肉屋に行ってたよな」

「ええ、ちょっとした理由でお金が無くて」


 すると道具屋は若干呆れと言うか溜息交じりに店の奥へ行って、かなりくたびれた籠を持ってきた。

 このレベルだと本来売り物には出来ないだろうな。

 だからこそ安く買う事が出来るかもしれない。


「古くていつ壊れるかわからないが、これで良いか?」

「OKOK! 無いよりマシなんで!」


 そう言いながら小銭を差し出す。


「正直に言えば少し足りないが……まあ、良いだろう。どうせあんなもん売れないだろうしな」

「ありがとうございましたー!」

「お、おう」


 そうして籠を受け取ってから持っていた上着を籠に被せる。


「ほう……」


 その動作で道具屋が俺を感心した様に見ている。

 ちゃんと薬草を知っているんだなって態度だ。


「何も知らねえ奴に任せるよりは良いか」

「期待しててくださいよ」

「ああ、正確に採ってきたら高めに買い取ってやるよ」


 なんて話をして俺は籠を背負って道具屋を後にした。




 準備は……後は村の端の方で落ちてた藁をもらって籠に出来る限り光りが当たらない様に敷きつめてから村を出た。

 街道へと戻り、草原へと足を向ける。


 リアンの形状は頭に入っている。

 採取する時に注意しないといけないのは魔物と、太陽光だ。

 リアン自体は日の光りを浴びてもなんともない。


 しかし、薬効となる部分は光に弱い。

 切断した時に出る汁の部分が太陽光に当たるだけで効果が目に見えて落ちるのと、紫色に変色する。

 その紫色の汁が採取したリアンの全身を毒の様に回って質が大きく劣化する。


 注意しないとな。

 なら夜に行けば良いんじゃないか? と思ったがダメらしい。

 夜間は茎の部分が硬質化してしまうので昼が推奨されている。


 他に注意しないといけないのはダブグレイロードキャタピラー等の魔物か。

 この辺りは街道が近いので攻撃的な魔物は少ないはず。

 攻撃的な魔物は街道の方で出没するとすぐに報告され、討伐されてしまうからだ。

 もう少し奥まったところまでいけば近隣の人が小金欲しさに採取して行っているだろう。


 とはいえ、ダブグレイロードキャタピラー程度なら中古の包丁でもどうにか出来ると思う。

 少なくともこの草原で出てくる魔物なら。


 なんて思いつつ俺は草原内でリアンを探して歩きまわる。

 まあ、村に行くまでの間に歩いていたのとあんまり変わらないんだけどさ。


「あったあった」


 俺はリアンを発見して籠から藁を取り出し、出来る限り日の光りを当てない様にリアンの茎の根元から切る。

 それから手早く籠の中にリアンを入れて上着で蓋をした。


「よし、これで一本!」


 幸先は良いかな。

 道中遭遇した攻撃的なダブグレイロードキャタピラーは前回と同様の手段で仕留めてから紐で縛って運ぶ。


「ちょっと……手荷物多くなってきたな」


 籠を背負って魔物の死体を運ぶのは結構しんどい。

 というか……キャタピラーの皮を上着の代わりに蓋にしておけば良いか。

 キャタピラーを解体した所で疲れてきた気がするけど、リアンを最低限採取しないと金にならない。

 がんばるしかない。


 結果、結構奥まで行った所で25本目を発見した。

 日がかなり傾いて来た。


「あと少し!」


 がんばれ俺!

 そう思いながら歩いていると、なんか心臓の鼓動みたいな音が聞こえた。

 音の方角を見るとダブグレイロードコクーンというキャタピラーが一定以上の強さを得た結果、至った蛹を発見。


 この魔物は特に動く事は無い。

 絶好のカモ……と思うかもしれないが、攻撃すると転がって反撃してくる。

 しかもキャタピラーよりも硬く、弱点となる部位が露出しない。

 倒すには純粋に攻撃力が必要となる。

 今の俺では立ち打ち出来る相手じゃない。

 下手に手を出すくらいなら通り過ぎるのが吉。


 そう思いながら奥へ行こうとして大きな蜘蛛の巣を発見した。

 かなり大きい……やばいな。

 大分奥地に来ているみたいだ。

 森が見えるし、森からはぐれた魔物が来たら俺が勝てるか怪しい。


 身の程は理解している。

 少なくとも掲示板の前で遭遇した冒険者並みの装備が無いと来れる場所じゃない。

 ガサっと草むらが揺れる。

 急いで別の草むらに姿勢を低くして確認する。

 すると俺の腰くらいある蜘蛛がのそのそと歩いているのを発見した。


 ダリアパープルスパイダーだ。

 ……無理だな。

 ダブグレイロードコクーンよりも強度は無いけど、勝てない。


「……」


 あ、視線があった。

 逃げるか?

 そう思っていると、蜘蛛は俺とダブグレイロードコクーンを無視して別の草むら……森の方へのそのそと移動していった。


 縄張りが広いのか? 単純に森から出てしまっただけなのか。

 それとも敵意が無いのか?

 大方冒険者等に遭遇して止むなく森から出てしまったとかだろうか?

 あるいは役場に報告されていない危険な魔物と遭遇して逃げて来たか。

 もしくは……魔力的地場と説明した所を探して、俺が説明した人が森へ行って、そこから逃げて俺と遭遇して仲間だと思われたか。


 そうして姿勢を低くしたまま、俺は蜘蛛が見えなくなるまで待った。


「ふう……」


 小さく息を吐いてから俺は立ち上がり、街道の方へ方角を変えて移動をしたのだった。

 もちろん、行きとは異なるルートを使ったのでリアンの採取は出来た。

 そんな訳でリアンの採取を終えて俺は村へと戻ったのだった。


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