Give me your son
R15です。中盤若干お下品な会話が入りますのでご注意を。
長めです。
シグルスと馬車に揺られながら、エルネインの緊張は極限まで高まっていた。そんな彼女の様子に苦笑しながら、シグルスは窓の外を見る。
本来ならば馬車まで送った時点でお役ご免のシグルスなのだが、エルネインが乗り込んだのを確認して自身も乗り込んできたのだ。驚きを露わにするも既に馬車は走り出しており、事情を聞いたエルネインはエリオスとの対面で使い切った気力を取り戻さなければならなかった。
「緊張するなというのは酷でしょうが、必要以上に身構える事はありませんよ」
「無理です。だって、クロシュ様のご両親ですよ?認められなかったらと思うと」
「きっと両親は貴方を気に入ります。何と言ってもあの兄を射止めた女性なのだから」
わかりましたとは言ったが、爪一欠片分の気休めにもなっていないのだろう。気持ちは分からないわけでは無いので、そっとしておくしかない。王城からは目と鼻の先にあるクロシュの両親の家は、長い間放置されていたせいなのか、妙に古めかしい印象を与えていた。馬車に真っ先に気付いたのは待ち構えていたクロシュで、御者が扉を開ける前に自力で開けるとエルネインの身体を浚っていく。
「エル、エル。会いたかったです。王城では虐められなかった?エリオスは悪い子じゃ無いけれど、悪戯盛りの年頃だから心配していたんだ」
「陛下はとても可愛らしいお方でしたよ。不器用なところが少しだけクロシュ様に似ていらして。レライン様ともお会い出来ました」
「可愛らしい、だって?あれはそんな性格はしてない筈なんだが……?」
エルネインの手に掛かれば、エリオスもクロシュも可愛いになってしまうらしい。
「それよりもクロシュ様。私に何か言う事はありませんか?」
「?愛してるよ」
「私も愛しております。……でもそれとこれとは別の話です。どうして竜だと教えてくださらなかったのですか?」
「言ってなかった?」
「知りませんでした。クロシュ様の事なのに……」
知らなかった自分が悔しい、と唇を噛み締めるエルネインに愛しさが込み上げる。柔らかな唇が傷つかないように口の中に指を含ませて目尻にキスをした。
「私が悪かったよ。貴方が質問してくれたら私は何でも答えるよ。だから泣かないで、私の可愛いエル」
公衆の面前で惚気る二人を前にして、その場に居た誰もが度肝を抜かれていた。
「……あれ、誰だよ。息子の中身が入れ替わっちまったんじゃねぇか?」
「きっと夢ですわね、貴方。クロシュのやに下がった顔など、私知りませんもの」
実の両親にすらも現実を疑わせるほどクロシュの変わりようが凄まじい。強烈な破壊力から一早く立ち直ったのは少しだけ耐性のついていたシグルスで、周りそっちのけの兄をそっと現実世界に呼び戻した。
「兄上、エルネイン嬢もそれくらいにしてください。皆が固まっています」
「それが私とエルの時間を邪魔する理由だったら、いくらお前でも許さないよ」
これこそ、彼等が知るいつものクロシュである。
「貴方は私たちにそちらのお嬢さんの紹介もさせないつもり?」
「母上」
母上とクロシュが呼んだ先に佇むのは、服の上からでも色香を隠せない妖艶な美女で、エルネインはクロシュに降ろして貰うと慌てて頭を下げた。
「お初にお目に掛かります、エルネイン・ロスェーナと申します。あの、クロシュ様のお母様。息子さんを私にください」
何言ってるの、この子。と全員がぎょっとしてエルネインを見る。呆気にとられていた母、シエリナは我慢出来ずに笑ってしまった。それを皮切りにして大爆笑の渦に巻き込まれる。
「あの、私何か間違えましたか……?」
エルネインは泣きそうだった。クロシュだけがシエリナを睨んでいたが、母の笑いが止まる事は無い。
「間違えたっていうか、最高だ!歓迎するぜ、エル嬢ちゃん。俺はクロとシグの父親でガリスだ。んであそこで腹抱えてるのが嫁のシエリナ。是非、嬢ちゃんには義父様と呼んでくれ」
やや乱暴にエルネインの頭を撫でたのは、ごつい体型に似合わぬ繊細な容姿をしたクロシュの父、ガリスだった。試しに義父様?と呼んでみると、嬉しそうに何だ?と返ってくる。
「ごめんなさい。あまりにも面白か…フフ……失礼。私はそこの息子達の母親、シエリナよ。お姉様と呼んで頂戴。こんな可愛い子、クロシュには勿体ないわ!」
ぎゅっと抱きしめられる。エルネインの身長はシエリナと比べれば相当小さい。男なら涎を垂らしそうな豊満な胸に顔を押しつけられて、息が出来ない。
「母上!エルを殺す気ですか?」
いち早く気付いたクロシュが助けてくれたので事なきを得たが、剥がされたシエリナは奪われて不満そうだった。だが肩で息をするエルネインを見て、ごめんなさいね、と謝る。
「いえ、素敵なお胸を堪能出来て嬉しかったです」
「これが男だったら容赦なく張り倒すところなのだけれど、一応褒められているのよね」
「……母上」
エルネインは大真面目に答えているのだから、余計に反応に困ってしまう。そして、その程度で嫉妬する息子に若干の面倒くささを感じた。
「お世辞にも嬢ちゃんは小さそうだからな。羨ましいんだろ」
「そうなの?」
「……はい。やはりその、男の方は胸が大きい方がお好きなのでしょう?」
クロシュには言い辛い話題のせいか、自然と声が小さくなる。聴力に優れている男達の前には筒抜けであったが。
「まぁな。大は小を兼ねるっていうしな」
「貴方はお黙りになって」
裏拳がガリスの顔面に入り、呆気なく巨体は倒れ込む。
「一般論からいえばその通りよ。でも、これまでのクロシュの素行を考えれば、一概にはそうともいえないわね」
「本当ですか?!」
咄嗟に口を挟もうとしたクロシュだが、エルネインの必死ぶりに噤むしか無かった。いつの間にか復活したガウスがにやにやと笑いながらクロシュの肩を組む。
「嬢ちゃんもお前の為に必死だなぁ。羨ましいぜ、この!」
「……兄上照れてます?」
「う、煩い!私はエルだったら、別に大きかろうが小さかろうが構わない」
「それは本人に言ってくださいよ」
「そうそう。感度が一番重要なんだぜぇ~ってな」
「下品ですわよ、貴方。エルネインが怯えているでしょう」
シエリナがお仕置きと称してガリスに容赦なく暴力を奮う。流石に拙いのでは?と仲裁に入ろうとするエルネインをクロシュが止める。
「エル。私は貴方であれば、胸の大きさなど気にしないよ」
「クロシュ様、義父様が」
「丁度手の平に収まる大きさだから、揉むには丁度良いですし」
「大丈夫でしょうか?」
「つんと立ったピンク色の突起は、きっと極上の味がするのでしょうね」
「まあ。お姉様は力持ちですね」
「それでもエルが大きくしたいと言うなら、毎日私が揉んで差し上げましょう」
全く噛み合ってない会話、どころかクロシュに至っては途中から欲望が言葉の端々に漏れている。それを平然と聞きながら完全に流しているエルネインは、シグルスから見て確かに大物だった。
エルネインとクロシュはガウス宅で夕飯までご馳走になって、帰路につく事が出来たのは夜も更けてからだった。緊張状態から漸く解放されたせいか、エルネインはクロシュに凭れたまま愛らしい寝息を立てている。
「無理をさせてしまったな」
それでも幸せそうな寝顔を見ていると、また連れてきてもいいかもしれないとクロシュに思わせる。生まれて間もなく院に引き取られたエルネインには、身近な両親が居なかった。だから余計に甘えられるのが嬉しかったのだろう。普段の言動から幼いと思われがちだが、子供の頃から自我がはっきりしていたエルネインは院の中では手の掛からない子供だった。
必然頼るよりも頼られる比重の方が大きくなり、人の良さも手伝って自分を後回しにしがちで、上手く甘えられなかったのだろう。だから褒められる、子供扱いされるといったことが嬉しいのだ。そんなところも可愛くて、片時も目が離せない。
「あまり急いで大人にならないで」
エルネインはクロシュに釣り合おうと必死だが、そんなに焦らなくてもゆっくり進んでいけば良いのだ。嫌でも成長していくのだから今だけのエルネインをじっくりと堪能していたい。
馬車が玄関の前で止まる。備え付けの毛布でエルネインを包み、クロシュはステップを降りた。わざわざ毛布で隠して誰にもエルネインの寝顔を見せないという徹底ぶりで、足早に自室へと向かう。
戻るなりマァサに湯浴みの支度をさせ、エルネインのドレスを容易く脱がす。複雑なドレスの構造を何故クロシュが知っていたかといえば、彼がドレスを選んだからの一点に尽きる。因みに数多あるドレスの全てをクロシュは熟知していた。全く起きる気配の無いエルネインに時折悪戯をしながら、クロシュは丹念に身体を洗っていく。本人が知れば卒倒しそうであるが、誰もが暗黙の了解で見ぬ振りをしていた。
「本人が気にするほど小さくは無いと思うが」
足の間にエルネインを収め、クロシュは背中側から胸を触ってみる。極上の弾力を持った胸がクロシュの手の中で自在に形を変えていく。これまで様々な女を抱いたが、エルネインほど柔らかな胸は終ぞ無い。
「う、んっ……」
甘やかな声がクロシュの耳を侵す。クロシュに寝ている相手を襲う趣味は無いが、エルネインの甘美な誘いは否応にも分身を刺激する。
「ああ、エル。貴方は悪い子だ」
クロシュの艶を帯びた囁きは、それだけで女の心を支配する麻薬となるだろう。だが生憎と聞く相手は誰も居らず、クロシュも自分の声で興奮する性癖は無い。
エルネインに再会した時から最初に出すのはエルネインの中、と決めているクロシュはそそり立つ欲望をぐっと我慢して湯船から出た。風邪を引かないように丁寧に水気をぬぐい、マーサに指示して持ってこさせた下着と夜着を身につけてやる。お肌の手入れも忘れない。自身は手早く夜着を身に纏うと、抱き上げたエルネインをベッドに寝かせた。暗闇でも見通す目は、ぐっすりと寝入っているエルネインの指先に至るまで余す事なくじっくりと眺める。
実はこの時間はクロシュのお気に入りの時間でもあった。誰にも邪魔される事なくエルネインを見ていられる貴重な一時なのだから。見飽きる事のない姿を最後にもう一度だけ認め、エルネインを胸に抱いて目を閉じる。夢の中までもクロシュはエルネイン一色に染められていた。
寝ているのを良いことにやりたい放題のクロシュさん。の回でした。




