白い髪の学者
【精霊は還る場所を知っている】
2026.9.25 47話一挙配信。
毎日21:00頃 5話ずつ更新しています。
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翌日。
朝食を終えると、ジジはルナリスを抱いて家を出た。
向かうのは、エルフ居住区にあるシャイアの診療所だった。
「今日、アグラディアいる?」
「ああ」
「どんな?」
「知らねぇ。俺も初めて会う」
「そっか」
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エルフ居住区へ入り、石造りの街並みの中に緑が増えていく。
木々の間を抜け、診療所へ着く。
扉を開けると、受付の女性が二人を奥へ通した。
診察室を叩く。
「どうぞ」
シャイアの声が返った。
ジジが扉を開ける。
「おはよう、ジジ。ルナリス」
「おはよ」
「シャイア、おはよう」
シャイアのほかに、もう一人いた。
窓際の椅子に座り、本を読んでいる。
長い白い髪。
若く整った顔立ちに、長い耳。
人間なら二十五歳ほどに見える。
一目で普通のエルフとは少し違うことが分かった。
男は本を閉じると立ち上がった。
「初めまして。ジジ、ルナリス。」
軽く頭を下げる。
「今日は時間をもらってありがとう」
「ジジ、シャイアから話は聞いてるよ」
それから、ジジの腕の中へ顔を向けた。
「君がルナリスだね」
「うん」
「初めまして。僕はアグラディア」
「アグラディア」
「うん」
「本読んでた?」
「読んでた」
「あたまいいの?」
「どうかな?」
アグラディアは笑って答えた
「いつも何してるの?」
「近くに児童所があるんだ。普段はそこの所長をしてる」
「子供いる?」
「たくさんいるよ」
「何するの?」
「一緒に本を読んだり、勉強したり、遊んだり。喧嘩を止めたりもする」
「喧嘩する?」
「するね」
「アグラディア怒る?」
「怒る時もあるよ」
「怖い?」
「どうだろう。あんまり怖くないって言われる」
ルナリスが笑った。
「怖くない」
「まだ会ったばっかりだけどね」
アグラディアも笑った。
「今日はルナリスの身体のことを、少し僕にも教えてほしいんだ。いい?」
「うん」
「ありがとう」
シャイアが診察台を示した。
「じゃあ、まず三日前から変わったことがないか聞こうか」
ジジがルナリスを座らせ、身体を支える。
「食事はどう?」
「いっぱい食べてる」
「前より増えた?」
「増えた」
「食べたあと、お腹が痛くなったり気持ち悪くなったりは?」
「ない」
「よく眠れてる?」
「うん」
「痛いところは?」
「ない」
シャイアが記録する。
「ジジから見て、何か気になったことはある?」
「特にねぇな。よく食って、よく寝てる」
「疲れやすそうだったりは?」
「それもねぇ」
「分かった」
アグラディアがルナリスの前へ来た。
「じゃあ、僕も診せてもらっていい?」
「うん」
「まず脚から診るね。触っても大丈夫?」
「大丈夫」
布を外し、状態を確認する。
「ここ、痛くない?」
「うん」
「じゃあ、もう少し上も触るよ」
「そこ、ちょっと変」
「変?」
「なんか変な感じする」
「痛いのとは違う?」
「違う」
「そっか。ありがとう」
アグラディアがシャイアを見る。
「ここ?」
「うん。三日前はそこまで反応なかった」
シャイアも確認する。
「少し変わってるね」
ジジが聞く。
「何が?」
「組織の状態。ほんの少しだけど、変化が出てる」
「足、戻る?」
ルナリスが聞いた。
アグラディアが答える。
「僕も、シャイアと同じ考え。戻る可能性は高いと思う」
「ほんと?」
「うん。ただ、どれくらい時間がかかるかはまだ分からない」
「いっぱい食べたらいい?」
「それは大事」
シャイアが続ける。
「三日前にも話したけど、食べられるなら、
あと少し食べられると思うくらいまで食べて大丈夫」
「分かった」
「無理して苦しくなるまで食べなくていいからね」
「うん」
アグラディアが言う。
「それと、よく寝ること」
「寝てる」
「じゃあ、その調子だね」
診察は続いた。
体温、脈、呼吸、体重。
シャイアが前回の記録と照らし合わせる。
「体重も少し増えてる」
「ほんと?」
「うん。いい変化だよ」
一通り終えると、ジジはルナリスを抱き上げた。
アグラディアは机に戻り、ラガードから届いた手紙を開いた。
その隣には、シャイアが三日前に取った記録と数冊の古い本が置かれている。
「ジジ。少し長い話をしてもいい?」
「ああ」
「ルナリスも一緒に聞いてくれる?」
「聞く」
「ありがとう」
アグラディアが話し始める。
「ラガードの先生からの手紙は、先に読ませてもらった。
それから三日前の診察についても、シャイアから聞いてる」
シャイアが頷く。
「この三日、二人でいくつか可能性を考えてたんだ」
「何の?」
「ルナリスの身体に起きてること」
ジジは黙って続きを待った。
「今日、実際に診せてもらって、その中の一つはかなり可能性が高くなったと思う」
「何?」
「ルナリスの血のこと」
ルナリスが首を傾げる。
「血?」
「うん。ルナリスには人間とエルフ、両方の血が流れてる。
そこはラガードの先生の見立て通りだと思う」
「それは聞いた」
「ただね。エルフの方が、普通のエルフじゃないかもしれない」
ジジの眉が寄る。
「どういうことだ?」
「ハイエルフ」
「……ハイエルフ?」
「うん」
「はいえるふって何?」
ルナリスが聞く。
「エルフの中でも、精霊との親和性がとても強いエルフたちのことだよ」
「アグラディアは?」
「僕もそうだよ」
「じゃあルナと一緒?」
「そうかもしれない」
「かもしれない?」
「まだ全部分かったわけじゃないからね」
アグラディアの白い髪が肩に落ちる。
「でも、僕はかなり可能性が高いと思ってる」
ジジがその髪を見る。
「白い髪か」
「うん。これもハイエルフに多い特徴の一つ」
ルナリスが自分の髪へ触れる。
「ルナも白い」
「僕も白いんだ」
「おそろい?」
「おそろいだね」
ルナリスが嬉しそうに笑った。
「でも、白い髪だけでそう思ったわけじゃない」
ジジが見る。
「他にもあんの?」
「ある」
アグラディアはルナリスの脚へ視線を向けた。
「まず、千里眼」
そして、机に置かれたラガードからの手紙を指した。
「もう一つが、再生の力」
ジジの表情が変わった。
「……やっぱりそこに繋がるのか」
「うん」
アグラディアは頷いた。
「そこを、少し詳しく話そうと思う」
そうして、アグラディアは二人にハイエルフについて話しだした。
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お読みいただきありがとうございます。
くおんあづきです。
初執筆のため、慣れないところがあり読みづらい箇所等あるかと思います。
かなり長編になっていますので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。




