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精霊は還る場所を知っている  作者: くおんあづき


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次の場所

【精霊は還る場所を知っている】

2026.9.25 47話一挙配信。

毎日21:00頃 2~3話ずつ更新しています。

═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═

ラガードの診療所。


何度も通った部屋でルナリスはいつものように診察を受けていた。


目。

脚。


エルフの医師は時間をかけて確認する。

ジジはすぐそばにいる。

エレーンとシエラは、少し離れたところで待っていた。


やがて診察を終え医師がルナリスの脚へ掛けていた布を戻した。


「大きな悪化はないわね」


ジジが頷く。


「よくなってる?」


「少しずつは」


「目は?」


「目は何も変わらないわね」


ジジの表情は変わらない。

ただ、エレーンには分かるようになっていた。


期待した時と、期待した答えではなかった時。

ほんの少しだけ違う。


医師は机へ戻る。


「以前から話ししていたシャイアだけど」


ジジが顔を上げた。


「ああ」


「引き続き、手紙でルナリスの状態を伝えているの」


机の上には、何通かの手紙が置かれている。


「向こうでも、受け入れの準備を進めているそうよ」


「じゃあ行ける?」


「ええ。ルナリスもだいぶ安定しているわ。

 そろそろ、バインスへ移ってもいいでしょう」


ほとんど間を置かず。


「行く」


ジジが言った。

ルナリスが顔を上げる。


「どこ行くの?」


「バインス」


「遠い?」


「ちょっと」


「ジジも?」


「行くよ」


「じゃあルナも行く」


それを聞いて。

医師が小さく笑った。


「それから、もう一つ」


手紙を一枚取る。


「シャイアは現在、アグラディアという学者にも相談しているそうよ」


「学者?」


「ええ。エルフについて非常に詳しい方だと」


「ルナのこと分かる?」


「それは、実際に診てもらわなければ何とも言えないわ」


ジジが黙る。

医師は続けた。


「向こうでなら、全く違う見方ができるかもしれない」


「治る?」


その問いに。

医師はすぐには答えなかった。


「約束はできない」


「ああ」


「目も脚も、元の状態まで戻るのか。

 どれくらい時間が必要なのか。それもまだ分からない」


「分かった」


ジジはルナリスを見る。


「それでも行く」


迷いはなかった。


——————————————————————


帰る前。

医師に呼び止められた。


「ジジ」


「何?」


「一つ、持っていってほしいものがあるの」


奥から運ばれてきたものを見て。

ジジが首を傾げた。

木で作られた椅子だった。


けれど普通の椅子とは違う。

両脇に大きな車輪。

後ろには、押すための持ち手。


「何これ」


「移動用の椅子よ」


医師が答える。


「ルナリスの脚が戻るまで、これを使ってみて」


ジジは車輪を触った。


「ルナが乗るの?」


「ええ」


「自分で動かせる?」


「いまはまだ難しいかもしれないわね。

 でも少しずつ慣れていって、家の中でなら動かしていいわ」


ジジは少し考える。


「目、見えないけど」


「だから、必ず誰かがそばにいてあげて」


ルナリスが椅子へ手を伸ばす。


「これ乗るの?」


「乗ってみる?」


ジジが聞く。


「ジジ押す?」


「押す」


「じゃあ乗る」


シエラが笑った。


「そこは迷わないのね」


「ジジいるから」


ジジがルナリスを抱き上げる。

そっと椅子へ座らせた。

医師が足の位置を整え。


薄い布を膝へ掛ける。

ジジは後ろへ回った。


「行くよ」


「うん」


ゆっくり。

椅子が動く。


「動いた」


「動いた」


「もう一回」


「帰るぞ」


「帰りながらやる」


「外は俺が押す」


「じゃあ押して」


エレーンはその様子を見ながら。

少しだけ笑った。


——————————————————————


ラガードから戻る馬車。

ルナリスは新しい椅子に座り嬉しそうだった。


目元は、包帯ではなく

医師が用意してくれた柔らかな布で覆われている。

膝から下にも布が掛かっていた。


知らない人が見れば。

長く療養している少女に見えるだろう。


向かいに座るシエラがルナリスに聞く。


「自分で動かせるようになりたい?」


「うん」


「じゃあ帰ったら練習しましょうか」


「シエラ教えられるの?」


「……たぶん」


「たぶん?」


「一緒に覚えればいいでしょう」


ルナリスが頷く。


「エレーンもやる?」


「私は姉さんが困ってたら助けるわ」


「最初から助けてよ」


シエラが言った。

エレーンは笑う。


ルナリスの隣に座るジジを見る。


バインス。

そこへ行けば今より何かが分かるかもしれない。


ルナリスの目も。脚も。


そして。


その時が来れば。

この生活も今のままではなくなる。


そんな当たり前のことを

その日初めて、はっきりと考えた。

═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═

お読みいただきありがとうございます。

くおんあづきです。

初執筆のため、慣れないところがあり読みづらい箇所等あるかと思います。

かなり長編になっていますので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

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