表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の冒険者が世界の調停者になる  作者: pacifian
第1章 『レベルドロップ編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/99

『大厄災の悪魔』

封印が砕け散った瞬間、空気は凍り、世界は息を止めた。


結界の中心から歩み出た少女――

ルシェラの周囲に渦巻く魔力は、もはや“魔”と“聖”の区別さえ曖昧にするほど純粋だった。


金と赤の双眸。

その瞳に映るのは、300年間封じられ続けた憎悪と孤独。


「……あなたが……私を目覚めさせたのね」


声は震え、だが胸の奥底には黒い炎が渦巻いていた。


迅が一歩踏み出す。


「俺は迅。セリウスから託された者だ」


黒剣が淡い光を放つ。


その名を聞いた瞬間――

ルシェラの感情が、爆発した。


「セリウス……?

 どうして……どうしてあなたが……!」


魔力が暴走し、最下層の空間が悲鳴を上げる。



——暴風。


地面が走り、柱が崩れ、岩壁が裂けていく。


迅は咄嗟に身構えたが、それでも衝撃が肌を裂くほど苛烈だった。


(……これが……ルシェラの魔力……!)


殺意ではない。

怒りと悲しみが重なり、歪な形で噴出しているだけ。


しかしその力は、世界を滅ぼすには十分すぎた。


「どうしてセリウスが、ここにいないの……!

 どうして……!」


叫ぶたび、魔力が刃のように空間を切り裂く。


「彼は……私に“生きろ”と言ったのに……

 あなたは誰なの!?

 どうして私を……解いたの!!」


迅はゆっくりと彼女に手を伸ばす。


「セリウスが、君を守った。

 そして託した。……俺に」


その言葉は――

ルシェラの胸の傷をえぐるように響いた。


「託した……?

 そんなわけ、ない……

 私を置いて……行くはずが……」


魔力がさらに膨れ上がる。



世界各地、同時刻 ── “異変会議”の幕開け


◆ 王国王城・作戦室

震動が止まらず、地図が落下する。


「魔力観測塔が悲鳴を上げています!

 これは……大規模魔王級を超える値だ!」


王は目を細めた。


「……封印区域だな。何かが起きた」


◆ エルフの大樹宮

長老が杖を地に突き、葉がざわめく。


「……300年の眠りが……目を覚ましたのか」


◆ 竜族の天空城

竜王が竜翼を広げ、天を睨む。


「また世界が……揺らぐのか」


◆ 天使族・神殿都市

大天使長は震える声で言った。


「……まさかな…………」


◆ 悪魔王国・深淵の玉座

魔王がゆっくりと立ち上がる。


「ネメシア、……

 お前の娘が、動いたか」


世界は同時に“目覚め”を察した。


封印の揺れだけで、これほどの衝撃。

完全に解放されたなら、世界の形すら変わるかもしれない。



【封印の間】


暴風が止まらない。


ルシェラは感情を抑えられず、涙のように魔力をまき散らす。


「セリウスは……

 私を守って……

 私に生きてほしいと言って……

 なのに……!」


魔力が結晶化し、空中を漂う。

泣きながら世界を壊す、そんな矛盾した力。


迅は魔力で裂かれた頬を押さえながらも、前に進む。


「やめろ……その力は君を苦しめるだけだ」


「黙って!!」


彼女の叫びが、大地を割った。


床が崩れ、魔力の奔流が噴き出す。

まるで世界の底から悲鳴があがっているようだった。



迅は深く息を吸った。


(……善悪判定……)


そのスキルが発動し、ルシェラの本質が視界の奥に鮮明に浮かび上がる。


【判定:彼女は悪ではない】

【本質:喪失/孤独/愛された記憶/そして……救いを求める声】


(……こんなにも……泣いているのか……)


迅は、彼女へと手を伸ばした。


「……泣いていい」


その一言に――

ルシェラの魔力が揺れた。


瞳が震える。


「……泣く……?

 私は……泣いて……いいの……?」


「誰よりも……泣いていい」


その瞬間。


ルシェラの魔力が、音もなく消えた。


力が抜け、膝から崩れ落ちる。


「セリウスが……いない……

 お母様も……お父様も……

 誰も……いない……」


涙が零れた。


300年ぶりの涙。


それは、封印の間に静かに落ち、

光となって消えた。


迅はそっと近づき、倒れそうな彼女を受け止めた。


ルシェラは震える声で――

その名を呼んだ。


「……セリウス……」


ルシェラの涙が止まる。


そして、小さく囁いた。


「……セリウスが、言ってた……

 “いつか君を理解してくれる者が現れる”って……

 あなたが……それなの?」


迅は答えず、ただ静かに彼女を支えた。


封印の間には、ようやく静寂が戻った。


だが――

外の世界では、“史上最大級の異変”がすでに始まっていた。


物語は、ここから世界規模へ動き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ