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分厚い本は……

 現在、私の両手は塞がっている。何故なら、片方はルイスが握り、もう片方の手はサキが握っている。彼の手を握った後から、手を離してくれないのだ。そろそろ手を離してもいい頃合いなのだが、彼は一向に手を離してくれない。こちらからやんわりと離そうとすると、逃がさないと言っているように少し強く握られる。私はその様子に彼は内心不安がっているんだと納得した。しかし、それを良しと思っていない人がいた。


「サキ、ニーナの手を離せよ」


 ルイスだ。私がサキの手を握った時は何も言わなかったが、いつまで経っても彼が手を離さない事を不審に思い始めていたのだ。


「ニーナちゃんは俺と手を繋ぐのはいや?」


 聞き方が悪い。そんな事を言われたら、嫌だと言いにくい。


「サキさんは手を繋いでいて、動きにくくはない?」


 私の言葉にサキはにっこりと笑って首を横に振った。


「そんな事はないよ。寧ろ、手を握ってくれていた方が安心するんだ」


 外せない。そんな事を言われたら、彼の手を離すことなどできない。


「ごめんね」


「だっ、大丈夫だよ! サキさんがいいなら、良いよ」


 だが、ルイスと繋いでいる手が強く握られた。彼がわざと強く握ったのだ。だけど、それだけで、彼は何も言葉に出すことはなかった。


「…………」


 私はそんな二人を交互に見て、苦笑するしかなかった。


 こんな時、すぐにシルルさんが気がついてくれるのだけど、彼女はこの国の地図に興味を示していた。


「……事細かく描かれているわね……まるで、この国の歴史を伝えているみたいに……」


 シルルの言葉にヴィルグとアイミーも頷いていた。


「そんなに事細かに書かれているなら、普通は古本屋には売らないだろうな」


 ルイスの言葉に私も頷いた。


「確かに……貴重な本だもんね。貴族の屋敷とかに普通はありそうだよね」


 何気ない一言だった。その言葉にヴィルグが反応したのだ。


「……ニーナ。今、何て言った?」


「えっ⁈」


「もう一度、言ってくれ」


 突然、彼が振り返って、私に詰め寄ったので驚きのあまり、後ろに一歩下がった。


「リーダー。ニーナちゃんが驚いてます。それと、シルル姉さんが怖い」


 サキの言葉にヴィルグは慌てたように後ろに下がった。


「すまない。怖がらせた」


「大丈夫だよ。驚いただけだから」


「だが……」


「そっ、それよりも、もう一度って?」


 そう、彼は私に「もう一度、言ってくれ」と言っていた。何が気になっているのか正直、わからない。


「さっき、ニーナが言った事だ」


 さっき? と言うことは……。


「その本が貴族の屋敷にありそう?」


「そうだ」


「それが、どうしたの?」


 貴族の屋敷にありそうという事が引っかかるのは何故なのか? それがわからないのだが、アイミーだけが「なるほどね」と言っていた。


 すると、アイミーは本を確認し始めた。そして、何かを見つけたのか、驚愕の表情を見せた。


「リッ、リーダー……。この本の本当の持ち主……やばいかもしれないわ……」


 そして、彼はヴィルグにそれを見せた。


「これって……」


「ええ。この印……シオンに教えてもらったの……」


 彼は震える声でさらに続けた。


「シュートバルグ国の印……つまり、この本があった場所は……」


 アイミーはそこで話すのをやめた。だが、私とルイス、シルル以外はその意味に気づき、息を呑んだ。


「……サキ。どう言う意味だ?」


「えっ?」


 サキは私とルイスを見て、目を見開いた。だが、すぐに元の表情に戻り微笑んだ。


「そうだよね。二人にはまだ、わからないよね」


「?」


 ルイスは本当に気がついていないが、私は少しだけわかってしまった。皆の反応にシュートバルグ国の印。つまり……この国の本だと言う意味だ。


「あの本はね……この国の印が入っているんだ。つまり……何が言いたいのかって言うと、あの本は……王家が所有している本なんだ。古本屋に置いてある事がおかしい本って事なんだよ」


 やっぱり。王家が所有しているということは、ここにあってはまずいのではないのだろうか? ここにある事がバレたら、私達が盗んだと言われるかもしれない。


「とりあえず……俺たちは何も見なかった。ただ、古本屋で地図を買っただけだ。皆、わかったな」


 ヴィルグの言葉に皆が頷いたのだった。


 確かにそうするべきである。だけど、王家に所有されていたと言うことは本当に本物の本だと言う事だ。その事がわかっているヴィルグはその本を再び、開いた。

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