開かない扉
「んっ……」
ゆっくりと瞼を上げた。すると、目の前にはスヤスヤと気持ちよさそうに眠るルイスがいた。
「あれ……?」
瞼をさすりながら、ゆっくりと上体を起こした。
何で、私は寝ていたんだろう? 首を傾げながら、未だに夢の中を行ったり来たりしている。
「…………シルルさんと話していた筈なのに……」
そう呟くと、意識がはっきりとしていった。
「もしかして……シルルさんが……魔法でもかけた?」
そう思ったのは、眠たくなかったのに、彼女と話しているうちに気がついたら寝ていたからだ。
「ルイス、ルイスも起きてよ」
私はいまだに気持ちよく眠っている彼の身体を揺すった。すると、彼の瞼はゆっくりと開いた。
「…………っ?」
だが、まだ意識がはっきりしていないのか、枕に顔を埋めた。
「ルイスも起きてよ」
「…………起きてる」
その声は少し不機嫌で、彼はまだ寝ていたいようだった。
「ねえ、起きて」
「…………起きてる」
普段寝起きが良い彼が珍しく、枕から顔を上げない。それだけ、魔法の効き目が良かったのかもしれない。
「…………」
私はルイスを横目で見た後にそっと、ベッドから降りた。そして、すぐに扉まで近づいた。
「シルルさんがいないから……仕方がないよね」
部屋の中には私とルイスだけでシルルの姿はなかった。そのため、彼女を探す名目で部屋の外に出ようとした。
「……? あれ? あれれ?」
しかし、ドアノブを何度回しても扉が開かない。内側についている鍵を確認するが、鍵がかかっているわけではない。
「なっ、何で?」
もしかしたら、忘れてしまっただけで押しドアではないのかもしれないと思い、引いてみるがびくともしない。
「何で開かないの?」
私は急いでベッドに戻り、もう一度寝直しているルイスの身体を揺すった。
「ルイス! ルイス! 起きてよ!」
「……起きてる」
「起きてないよ! 目を開けて! 私を見て!」
彼の耳元で叫ぶとやっと、こちらを見てくれた。だが、その瞼は今にも閉じそうだ。
「どうしたん……だよ?」
「部屋の扉が開かないの。外に出られないんだよ……」
「…………」
ルイスはゆっくりと身体を起こした。そして、そのままベッドから降りると、扉の前に立った。
そして、ドアノブを手で回した。
「……開かないな」
ルイスが触っても開かないとなると、考えられるのは一つだけだ。
「魔法?」
ルイスは大きな欠伸をすると、その言葉に頷いた。
「ふああああ〜。十中八九そうだろうな」
「シルルさんが魔法を施したってことだよね? 何のために?」
私は首を傾げた。すると、それを横目で見ていた彼は私の頭を撫でた。
「…………俺たちが部屋から出ないようにするためだろ?」
「えっ? なっ、何で?」
「俺たちを危ないことに巻き込ませないため」
その言葉に私は納得した。確かに、寝る前のことを思い出すと、眠りから覚めた私は部屋を飛び出して、エメルさんを探しに行きそうだ。彼女もそう考えたのだろう。だから、扉に魔法をかけたのだ。
「……シルルさん」
もう一度、扉に触れた。だが、その手をルイスが掴んで、引っ張った。
「無理やり部屋から出るなよ」
「でっ、出ないよ! 魔法がかかってるんだよ」
「…………」
本当に無理やり出るつもりはない。だが、魔法が偶々解けていたら、出ようと考えていただけだ。
しかし、ルイスにはその気持ちが見透かされていたのだろう。額を指で軽く弾かれた。
「痛い!」
「…………ほら、扉から離れるぞ」
そして、彼に引っ張られる形でベッドの上へと二人で戻った。




