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様子がおかしいエメル

 一向に準備が進んでいないなど知らないニーナとルイスは絵本を読み進めていた。


「随分、古い絵本だね……」


「そうだな」


 絵本の所々、破れている箇所がある。だが、文字の部分は比較的に読めた。


「この絵本の時計の国のお姫様って、獣人なんだね」


 この絵本の内容は人とは違う彼女の存在を怖がった民が時計の塔に閉じ込めた話だった。だが、ある日、そのお姫様を王子様が助け出して恋に落ちて結婚する話だった。そして、何故か時計を多く作り始めた話だった。何故かと言うのはその箇所が破れていて、読めなかったからだ。


「何の獣人なんだろう?」


「…………描かれていないな」


 何処を見ても彼女が何の獣人か描かれていない。ただ、一行『獣人の少女は……』と書かれていたのだ。


 だが、最後まで読み終える前に部屋の扉がノックされた。


「誰だろう?」


「ニーナはここで待ってろ」


 私は持っていた本を閉じて、ルイスの背中を見つめた。そして、彼は扉を開けた。すると、そこに立っていたのはエメルだった。


「エメル?」


 彼の登場にルイスは首を傾げた。何故なら、目の前の彼は作戦の準備に忙しいと思っていたからだ。現に、作戦に参加するシルルが不在だ。


「やあ」


 エメルは片手をあげて、微笑んだ。


「何かあったのか?」


 ルイスの問い掛けにエメルは首を横に振った。そんな彼の様子に私も本をベッドサイドに置き、ルイスの元へと向かった。


「エメルさん? 本当に大丈夫?」


 目の前のエメルが笑っているのに、瞳が悲しげに揺れていたからだ。


「…………俺は大丈夫。君たちは何をしていたんだい?」


「絵本を読んでたよ」


 エメルの問い掛けにベッドサイドの方を指差した。


「そっか……」


 本当に彼の様子が変だ。それは、隣に立っているルイスも感じていた。そのため、私達は顔を見合わせた。


「エメルさん。少しだけ、しゃがんでくれる?」


「えっ?」


 彼は戸惑いながらも、その場にしゃがみ込んだ。そして、そんな彼の頭に私は手を伸ばした。


「エメルさん。大丈夫……大丈夫だよ」


 私は彼の頭を撫でた。すると、目を見開いて驚いていたが、すぐにされるがままになっていた。


「ははっ……まさか……頭を撫でられると思ってなかったよ……」


「エメルさん、元気が無さそうに見えたから……私がしてもらって嬉しい事をしてあげようと考えたんだ」


 私は頭を撫でられる事が好きだ。


「…………ありがとう」


 彼はゆっくりと顔を上げて、私の顔を見た。その瞳は悲しげに揺れたままだった。だが、彼はすぐにその瞳を伏せた。


「それと……ごめんね」


「えっ?」


 彼は立ち上がると、その顔を歪めて微笑んだ。そして、次の瞬間には爆発音のような大きな音と共に船が大きく揺れた。


「ニーナ!!」


 ルイスが焦った様子で私を抱きしめた。だが、船の揺れが大きく、そのまま二人で床に倒れ込んだ。


「きゃっ⁈」

「っ!!」


 私は視線を扉の方に向けた。だが、そこにはエメルの姿はなかった。

 しかし、それを気にしている余裕はなかった。私達は揺れが収まるまで二人でくっついていた。

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