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桜姫の寵愛  作者: 知恵紅葉
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団子


「少年。団子は美味しいか」


助さんが初めて団子を食べた少年に感想を聞く。


少年は何度も何度も首を縦に振り美味しいと伝える。こんなに美味しいのは初めて食べたと目を輝かせて助さんを見る。


「そうか。そうか。まだ、沢山あるからいっぱい食べな」


少年の頭を撫で店の中に戻る。


美桜達は店の外にある席に横になって座り団子を食べていた。


「そういえば、君の名前をまだ聞いていなかったね。なんて言うの?」


未桜がそう尋ねると「(こう)」と硬い口調で小さく呟く。下民には名字がないので人前で名を名乗ることは紅にとっては嫌なことだった。できれば名乗りたくなかったという顔をする。


未桜を信じていないわけではないが、名を名乗ると酷い目に遭い侮辱される。過去の出来事のせいで名を名乗ると痛い目に遭うと体を強張らせてしまう。


「紅か。とてもいい名前ね」


未桜が紅の名前を褒めるとパッと顔上げる。


未桜はふわりと花が舞うよに優しい笑みで紅を見ていた。


紅は初めて名を褒められた。初めて酷い事をされなかった。


未桜が傍にいると初めての事ばかりだった。紅は未桜とずっと一緒にいたいと思うようになる。


初めて人生に希望を持てた。生きたいと心の底から願うようになった。


「年はいくつか聞いても」


続けて質問する未桜。


「十四」


少年の返答に未桜だけでなく青年も驚く。紅の背格好どう見ても九歳か十歳にしか見えない。


何て声をかけたらいいか迷っていたら「ほれ、いっぱい食べな」と出来立ての団子を大皿いっぱいにのせたのを置く。


少年はこんなに食べていいのと団子と助さんを交互にみる。


「子供が遠慮なんてしなくていい。いっぱい食べて元気に成長するのが子供の仕事だ。腹一杯食べな」


助さんがそう言うと紅は団子を食べ始める。目に涙いっぱい溜めて「美味しい美味しい」と頬張る。


助さんは紅が漸く遠慮なく食べはじめて安心した。最初に出した団子も遠慮して食べようとしなかった。


未桜と紅の会話が偶々団子を持っていく時に聞こえ腹一杯食べさせてあげたいと思った。


「(助おじさん。さすがに、その量は食べきれないと思うよ)」


あまりの量に絶対に無理だと思うも助さんの優しさだとわかっているので何も言わない。


「あの、本当にありがとうございます」


小さくお礼を言う紅の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。


助さんが紅の頭を撫で優しく見つめているので、もう大丈夫だろうと安心する未桜。


「あの、先程は本当にありがとうございました」


隣に座っていた青年にもう一度お礼を伝える。


未桜達の会話を邪魔しないよう静かに見守っていた青年。


「気にしないでください。私がしたくてしたことですから」


愛しいものを見るかのような瞳で優しく微笑む青年。


「あなたは優しい人ですね」


思ったことをそのまま青年に伝える。


青年は未桜にそう言われると俯き何かを呟く。


未桜がよく聞こえなかったからもう一度言って欲しいと頼もうとしたら「あっ、髪紐が…」と青年の長い髪を一つに纏めていた髪紐が突然破けてしまう。


「あー、もう古かったしな」


この国では髪紐が破けるのは不吉な事だと代々言われているが、青年は全く気にする素振りもなく破れた髪紐を手に持つ。


「よかったらこれを使って下さい」


桜の飾りがついた簪を懐から取り出す。


「それは大事な物なのでは」


その簪は新品みたいに綺麗で大事に使われているし、一目で高価な代物だとわかる。


さすがに受け取れないと思い断る。何よりその簪は自分より未桜の方が似合う。


「ええ、とても。でも、私がこれを持っていたら駄目なんです。私では守れないんです」


このまま自分が持っていたら寧々にどんな手を使って阻止しよとしても必ず奪われる。


寧々に奪われるくらいなら、この簪を大事に使ってくれる人に譲ろうと考えていた。


青年なら大事に使ってくれると。会ったばかりなのにそう感じた。


「本当に私が使っても」


何か事情があると察し、もし自分が断ったらこの簪はどうなるのだろうか。


未桜の表情を見るにあまりいいことにはならないだろうとわかる。その未来を少し想像しただけでも恐ろしい。


なら、自分の手元に置いて自分が大事に保管すればいい。


そう思った青年。


「ええ」


簪を青年に渡す。


青年は簪を受け取り髪を一つにまとめようとするもいつもと勝手が違うので上手くできない。


「私がやりましょう」


そう言うと青年の後ろに立つ。


青年は未桜の行動に驚き一瞬固まるもすぐにお願いしますと顔を赤らめてお願いする。


簪を受け取ると未桜は青年の髪を半分ほどとりその滑らかさに驚く。


青年の髪は美しいだけでなく手触りも最高だった。手で髪を整えようと手で整えようとすくった瞬間からスッと指の間からすり抜けていく。


さらさら髪に苦戦しながからも半分の髪をまとめることに成功した。


「できた。どうですか」


どこか痛い所や変な所がないか心配で尋ねる。


「すごくいいです。ありがとうございます」


桃の花のような可憐で愛らしい微笑みを未桜にむけてお礼を言う。

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