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桜姫の寵愛  作者: 知恵紅葉
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優しさ


「ごめんなさい」


まだ涙はでているが落ち着きを取り戻した少年は謝罪を口にした。


その謝罪には二つの意味が込められていた。


一つは自分のせいで未桜に迷惑をかけたこと。自分が下民の子のためそれを庇った未桜は周りの人達からは変人として見られ男から殴られそうになったり罵声を浴びせられた。


もう一つは未桜の着物をだめにしてしまかこと。自分が未桜に抱きついて泣いたため着物に涙と鼻水がぐっしょりと染みていた。膝の所には砂がついていた。


自分を守ってくれた人にお礼をするどころか逆に汚してしまい申し訳なく感じた。


「謝らないで。貴方は何も悪くない。大丈夫。大丈夫よ」


少年の涙を拭う。未桜は他に何を言えば少年の心が軽くなるかわからなかった。ただ、抱きしめることしかできなかった。


「未桜ちゃん」


全力疾走で未桜のところまで走ってきた助さん。ぜぇぜぇと息を何とか整えようとする。


「未桜ちゃん。大丈夫かい」


漸く落ち着き未桜に怪我がないか確認する。


「うん、私は大丈夫だけど」


そう言った後少年を見る。


未桜の視線を追うと頬を赤く腫らした少年がいた。


「一体何があったんだい。本当に未桜ちゃんは大丈夫なのか。殴られたって聞いたけど」


「私は本当に大丈夫。どこも殴られてないよ。あちらの方に助けてもらったから」


後ろを向いて青年をみる。


「でも、この子は私がくる前にはもう」


自分の無力さに嫌気がさす未桜。自分は小さな子供すら守ることができない存在だと思い知らされる。


「団子は好きか?」


助おじさんが少年に声をかける。


「食べたことないです」


小さな声で言う。いつもなら知らない大人は怖くて仕方ないけど、未桜の知り合いだからと思うと怖くなかった。


「なら、今から食べよう。好きなだけ食べさせてやる。でもその前に手当てだな」


少年に手を伸ばす。


少年は未桜の顔を見てどうしたらいいか目で訴える。そんな少年の意図に気付いた未桜は「大丈夫。助おじさんの団子はとっても美味しいのよ」と優しく微笑んだ。


少年は恐る恐る助さんの手を掴む。助おじさんは少年が怖がらないように慎重に手を優しく握る。


「お兄さんも是非食べてください」


未桜を助けた青年にお礼がしたいと思いそう言う。


「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」


助さんに少し頭を下げる。


「あの、先程は本当にありがとうございました。おかげで助かりました」


未桜は少年を助さんに任せて青年にお礼を言う。


「頭を上げてください」


青年の声で顔を上げる未桜。


「どうぞ。これを」


手拭いを使うように言う。


何故手拭いをと不思議に思っているとそんな未桜の考えを見抜き「顔に煤が少しついています」と小声で教えてくれる。


「あ、ありがとうございます」


男と言い争いをしたときについたのかそれとも少年を抱き抱えたときについたのかわからないが少しだけ恥ずかしくなる。


青年の好意に甘えさせてもらおうと手拭いを受け取る。


「あっ、そっちじゃないです」


そう言われ逆の頬を拭う。


「そこじゃなくて、もう少し上です」


「今度は少し下です」


青年が場所を教えてくれるがうまく拭えない未桜。


「すみません。失礼します」


そう言うと未桜の手を取り「ここです」と言って顔についている煤を拭う。


「うん。とれた。もう、きれい…すみません」


気づかない内に未桜に近づきすぎて驚く。もう少しで鼻と鼻がくっついてしまう距離だった。


「本当にすみません。申し訳ない。いきなりこんな失礼を」


自分の失態に恥ずかしくなり顔が真っ赤に染まる青年。


青年の表情がコロコロと変わり、少し可愛いなと思い笑ってしまう未桜。


「気にしないでください。本当に何から何までありがとうございます。これは洗ってお返しします」


自分のせいで黒くなった手拭いを見てそう言う。


「お気遣いありがとうございます。でも、それは気にしないでください。私がしたくてしたことですから」


未桜の手から手拭いを取る。


「でも」


申し訳なさそうな表情で青年をみる。


「そんな顔をしないでください。あなたには笑顔が似合います」


青年はその時悲しそうな表情をしていたが、逆光になっていて未桜には見えていなかった。


「ありがとうございます」


青年にそう言われ嬉しくて笑みを浮かべた。


「おーい。二人共早くおいで」


先に団子屋に向かっていた助さんと少年が少し離れたところで叫ぶ。


「今行く」


助さんにそう叫ぶと「私達も行きましょうか」と声をかけ二人の後を追う。


「そうですね」

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