多分ハッピーエンド
事後処理はバードが素早く済ませ、恐ろしい事態を未然に防いだ英雄として、益々王太子人気の高まる中で、バードと私の結婚が宣言された。
婚約を飛ばして結婚。
国内からの反発は無いが、神託により定められた伴侶とは言え、やはりどの国の王族も本心では聖女と結婚して囲い込みたいのだ。
分かりやすく言えば、エイレイン王国ずるい。だ。
人間はあまり他人の幸運を喜べないようにできているらしい。
なので、婚約期間を置くと横槍を入れて来る国が必ずあるだろうと、いきなり結婚宣言になった。
二人とも、常日頃仕事で衆人環視の中、営業スマイルを貼り付けているのに辟易してるので、結婚式だの披露の晩餐会だの祝賀パレードだの夜会だのは、全て「神の思し召しにより」やらないことにした。
聖女と結婚するのを妬んで暗殺者も国内に入り込んでるし。
ほとぼりが冷めるまでは群集の前にあまり出ない方がいい。
王太子と聖女の結婚発表に関しては、国王に頑張ってもらった。
バードの要求通りの内容で各国に親書を送り、国民に通達した。
王太子の運命の伴侶は聖女だが、聖女ゆえに後継を産むことは叶わない。
よって、王太子の後継として、現在六歳の第三王子を指名する。
第三王子は今後、王太子教育を受けて運命の伴侶を待つことになる。
「僕、リュカがいる限り世界に手は出さないけど、本質は変わらないと思うんだよね。正直、賢王とかピンと来ないし。この先絶対人間辞めると思うよ? もう辞めてるかも」
あっさり宣言を終え、夫となったバードが言う。
「私も考えたけど。自分だけ不老不死で、バードが数十年後に死んだら天界で永遠にこき使われるとかゾッとする。世界滅亡さえ阻止出来ればいいんじゃないかな」
神々の庭を散歩しながら、話す内容は結構不穏だ。
「リュカが納得してくれるならよかった。自分が魔王の器だと知ってから、記憶や感覚がどんどん戻って来てね。破壊衝動みたいなのは無いんだけど、人間が更に嫌いになったんだ」
魔王の記憶が戻ればそうだろうな。
あれは愚かな人間が欲望まみれで魔物を蹂躙したから、眷属を痛めつけられた魔王が怒って仕返ししたら、子供の喧嘩に親が出て来るかの如く神が出て来て魔王は殺された、という非常に理不尽な話だ。
「私は、この国が好きだよ?」
「じゃあ、僕はリュカが好きなものを守る」
うん。魔王にどれだけ近づいても、やっぱりバードは私に優しい。
嘘をつき続けなければ地上に存在できない私が、隠し事をしないのも、甘えるのも、バードだけだ。
賢王の器に導くのは多分できないけど、女の敵だった理想の王子様はもういない。
世界を滅亡させない魔王は、私の隣で私だけを見ている。
私たちの背後の色情霊も、本体と同じように腕を絡めているのだが。
最近、色情霊同士の関係性も見えるようになってきた。
クソ親父に結婚の報告をするついでに話してみよう。
「リュカ」
「ん?」
「愛してるよ。奥さん」
「愛してるよ。旦那」
腕を解いて腰を抱き寄せ、バードは聖女の館に私を誘った。
王太子でも聖女でもない、バードとリュカの笑顔で新しい生活を始める。




